日商簿記2級 開始仕訳とは|支配獲得後の利益配分とのれん償却

更新日:2020年12月24日
公開日:2018年4月29日

前回は、支配獲得時の資本連結の仕訳について解説しました。

今回は連結修正仕訳のうち、開始仕訳と支配獲得後の資本連結の仕訳(利益配分とのれん償却)について説明します。

開始仕訳とは

開始仕訳(かいししわけ)」とは、過去の年度に行った連結修正仕訳のことをいいます。

支配獲得時の資本連結を例として、開始仕訳について説明します。

例えば、×1年3月31日にA社はB社の株式80%を取得しました。この時点で50%を超える株式を取得しましたので、支配獲得に該当するため、B社はA社の子会社になりました。

この時には前回解説した通り、支配獲得時の連結修正仕訳を記帳します。仮に正ののれんが発生した場合には通り。

日付出来事のれん借方科目借方金額貸方科目貸方金額
×1年3月31日子会社株式
の支配獲得
資本金×××子会社株式×××
資本剰余金×××非支配株主持分×××
利益剰余金×××
のれん×××

※連結会計の概要や用語、連結修正仕訳や資本連結の詳細は下記の記事を参照。

それでは、次期の×2年3月31日にはどのような仕訳を行うでしょうか?

この点が個別(通常)の財務諸表の決算仕訳(決算整理仕訳)とは異なる点です。結論を書くと、×1年3月31日の連結修正仕訳を×2年3月31日でも同じく仕訳しなければなりません。

なぜならば、連結修正仕訳は、個別の仕訳の外で行われるため、×1年3月31日に連結修正仕訳を記帳したとしても×2年3月31日の個別の親会社や子会社の財務諸表(決算書)には×1年3月31日に記帳した連結修正仕訳は反映されていないからです。

従って、支配獲得した年度以降の連結修正仕訳には、過去の年度できった連結修正仕訳を含めて仕訳処理しなければならない、ということになります。

これが「開始仕訳(かいししわけ)」です。

×2年3月31日の開始仕訳は次の通り(×1年3月31日の連結修正仕訳と同じ)。

日付出来事のれん借方科目借方金額貸方科目貸方金額
×2年3月31日開始仕訳資本金×××子会社株式×××
資本剰余金×××非支配株主持分×××
利益剰余金×××
のれん×××

支配獲得後の連結修正仕訳

上の例で続けて解説します。

×2年3月31日は、子会社の支配を獲得した後、1年間活動を行った初めての決算になります。

この場合、資本連結の連結修正仕訳は開始仕訳の他、次の2種類です。

(1)非支配株主持分への利益の配分

子会社の支配を獲得した後、1年間子会社も活動して、その結果、利益を獲得しました。

もし仮に開始仕訳のみを連結修正仕訳とした場合、連結財務諸表は次の通り。

このままですと、親会社は子会社の株式を20%保有する非支配株主から次のような意見を言われるはずです。

子会社の利益のうち、20%は私たち非支配株主のものだ。

確かに子会社の20%は親会社のものではなく非支配株主のものです。

従って、この点を適切に連結会計に反映するためには、子会社の当期利益のうち20%を、非支配株主に振り替える連結修正仕訳が必要です。

借方に「非支配株主に帰属する当期純利益勘定(その他に属する勘定科目)」を記入し、貸方に「非支配株主持分勘定(純資産に属する勘定科目)」を記入して仕訳します。

もし子会社が利益ではなく損失を当期に計上した場合には、借方に非支配株主持分勘定を記入し、貸方に「非支配株主に帰属する当期純損失勘定(その他に属する勘定科目)」を記入して仕訳します。

出来事子会社P/L借方科目借方金額貸方科目貸方金額
子会社利益の配分純利益非支配株主に帰属する当期純利益×××非支配株主持分×××
純損失非支配株主持分×××非支配株主に帰属する当期純損失×××

この連結修正仕訳を反映させた結果、連結貸借対照表は次の通り。

【補足】非支配株主に帰属する当期純利益(損失)勘定について

次のように思った方もいるかもしれません。

「資本獲得時の仕訳では、親会社B/S上の利益剰余金を非支配株主持分に振り替えるので、子会社で当期純利益が発生した場合、借方は「非支配株主に帰属する当期純利益勘定」ではなく、「利益剰余金勘定」を使用するのではないでしょうか?」

その理解は間違っていません。しかし、連結財務諸表の損益計算書は個別の損益計算書とは異なる部分があります。そのため、上の連結修正仕訳になります。

連結財務諸表のP/Lは次の通り。

このように、子会社全体の利益を当期純利益として表示し、その下に「非支配株主に帰属する当期純利益 20」を表示して、当期純利益100から差し引いたものを「親会社株主に帰属する当期純利益 80」として表示します。

連結貸借対照表では、このうち非支配株主に帰属する当期純利益が「非支配株主持分」に加減され、親会社株主に帰属する当期純利益が「利益剰余金(純資産、株主資本)」に加減されます。

以上から、連結貸借対照表の利益剰余金から直接加減するのではなく、「連結損益計算書にも非支配株主に帰属する影響額を表示させたいため」上の通り、連結修正仕訳を記帳します。

(2)のれんの償却

×2年3月31日に行う連結修正仕訳がもう1つあります。それが、「のれんの償却」です。

支配獲得時に正ののれんが発生した場合、のれんはのれん勘定として資産計上します。この「のれん」は翌年度以降、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。

例えば、×1年3月31日に、のれん100を計上し5年で償却する場合、×2年3月31日には、100 ÷ 5 = 20 を償却します。

借方に「のれん償却勘定(費用に属する勘定科目)」を記入し、貸方に「のれん勘定(資産に属する勘定科目)」を記入して仕訳します。

支配獲得時に負ののれんが発生した場合には、「負ののれん発生益勘定」にて全額収益として計上します。従って、のれんの償却に関する連結修正仕訳は行いません。

出来事のれん借方科目借方金額貸方科目貸方金額
のれんの償却のれん償却×××のれん×××

連結修正仕訳(まとめ)

支配獲得後の連結修正仕訳をまとめると次の通り。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
開始仕訳正ののれん資本金×××子会社株式×××
資本剰余金×××非支配株主持分×××
利益剰余金×××
のれん×××
負ののれん資本金×××子会社株式×××
資本剰余金×××非支配株主持分×××
利益剰余金×××負ののれん発生益×××
子会社利益の配分純利益非支配株主に帰属する当期純利益×××非支配株主持分×××
純損失非支配株主持分×××非支配株主に帰属する当期純損失×××
のれんの償却正ののれんのれん償却×××のれん×××
負ののれん仕訳なし

仕訳例

  • 次のA社(決算日は3月31日)の×2年3月31日の連結修正仕訳を示しなさい。
  • (1)A社は×1年3月31日にB社(決算日は3月31日)の株式の80%を1,400万円で取得し、子会社とした。この時のB社の資本金は800万円、資本剰余金は300万円、利益剰余金は500万円であった。
  • (2)×1年4月1日から×2年3月31日までのB社の当期純利益は200万円であった。
  • (3)のれんは発生した次の年度から、償却期間5年の定額法によって償却する。

【解答】

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
(1)資本金8,000,000子会社株式14,000,000
資本剰余金3,000,000非支配株主持分3,200,000
利益剰余金5,000,000
のれん1,200,000
(2)非支配株主に帰属する当期純利益400,000非支配株主持分400,000
(3)のれん償却240,000のれん240,000

【解説】×2年3月31日の連結修正仕訳

(1)開始仕訳
①非支配株主持分の計算: 子会社B社の株主持分(資本金800万円 + 資本剰余金300万円 + 利益剰余金500万円 ) × 非支配株主持分 20% ( 100% - 親会社持分 80% ) = 3,200,000円

②のれん:貸借差額より計算

(2)非支配株主に帰属する当期純利益: B社の当期(×1年4月1日~×2年3月31日)の純利益 200万円 × 非支配株主持分 20% = 400,000円

(3)のれん償却額: のれん 120万円 ÷ 償却期間 5年 = 240,000円

まとめ

今回は開始仕訳と支配獲得後の資本連結の仕訳(利益配分とのれん償却)について解説しました。資本連結は、前回の解説から2ページの解説になっています。内容自体も覚えることが沢山ありますので、じっくりと時間をかけて、テキスト理解と問題演習を行ったり来たりして少しずつ定着させていきましょう。

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