有価証券とは|基本仕訳を分かりやすく解説(簿記2級)

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記事最終更新日:2023年11月19日
記事公開日:2017年8月19日

「有価証券」とは、会社が所有する株券や公社債をいいます。簿記2級で学習しますが、仕訳問題だけでなく帳簿記入の問題として出題される場合もあり、重要論点の1つになっています。

本記事では、簿記2級で出題される「有価証券」の概要と保有目的区分や基本的な仕訳について、分かりやすく解説します。

有価証券とは

有価証券」とは、所有する株券や公社債(国債・社債など)などのことをいいます。

株券(株式)を例にすると、株券は発行した会社側からは「資本金・資本準備金」になりますが、株券を発行した会社に出資して株主になった者や、株式市場で株式を購入した者が所有する株券を「有価証券」といいます。

有価証券を所有すると株券であれば、株主総会の重要な決議に参加でき、又、配当金を得ることもできます。

また、公社債であれば、保有期間中、満期になるまで定期的に利息を得ることができます。

保有目的区分

有価証券は、「4種類の保有目的」によって区分し、それぞれの保有目的区分に応じて会計処理します。

そして、その保有目的区分に対応した「5種類の勘定科目」で仕訳します。

※「有価証券」という勘定科目は保有目的区分に応じた勘定科目ではないため、使用しません。

保有目的区分の種類と対応する勘定科目は次の通り。

<保有目的区分と勘定科目の対応表>

保有目的勘定科目
売買目的売買目的有価証券
満期保有目的満期保有目的債券
子会社・関連会社として取得子会社株式
関連会社株式
その他の目的その他有価証券

売買目的有価証券

売買目的有価証券とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。

満期保有目的債券

満期保有目的債券とは、満期まで保有する意図を持って取得した債券(国債、社債、地方債など)をいいます。

子会社株式・関連会社株式

子会社株式とは、発行済株式数の50%超を保有した会社の株式をいいます。

関連会社株式とは、発行済株式数の20%以上50%以下を保有した会社の株式をいいます。

※厳密な定義ではなく簿記2級の出題に合わせた説明。

その他有価証券

その他有価証券とは、上記のいずれにも分類できない有価証券をいいます。

基本的な仕訳

上記の通り、有価証券の勘定科目と取引内容は保有目的によって異なるため、仕訳も保有目的によって異なります。

従って、本記事では「有価証券(資産に属する勘定科目)」という「仮の勘定科目」を用いて、「有価証券の保有目的に関係なく共通する取引の仕訳方法」を解説します。

※以下の解説で登場する「有価証券」以外の勘定科目については、仮ではなく簿記2級で学習する「正当な勘定科目」です。

会社の活動別に示すと次の通り。

(1)有価証券の取得と仕訳

株券や公社債を購入した場合には有価証券が増加するため、借方に「有価証券」を記入し、貸方には現金預金など支払手段の勘定科目を記入します。

購入の際に発生した支払手数料などの「付随費用」も有価証券の取得額に含めます。

<仕訳例>
・社債券を100で購入し、支払手数料5とともに普通預金から振り込んだ。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得有価証券105普通預金105

(2)取得時に端数利息を支払う場合

公社債の購入時に「端数利息」が発生する場合があります。

「端数利息」は、利息支払日以外の日に公社債を売買した場合に発生し、公社債を購入した会社は売却側の会社に対して「計算式に基づいて算定した端数利息」を支払います。

そこで、購入側の会社では、購入時に上記(1)の仕訳と同時に、支払利息の支払額について「有価証券利息(収益に属する勘定科目)」を借方に記入します(収益の減少のため借方に記入)。

<仕訳例>
・社債券を105(付随費用含む)で購入し、端数利息3とともに普通預金から振り込んだ。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得(端数利息の支払)有価証券105普通預金108
有価証券利息3

(3)有価証券の売却と仕訳

有価証券が減少するため、貸方に「有価証券」を記入します。また、端数利息が発生する場合には、(2)とは反対に受け取り側になるため、収益の発生として「有価証券利息」を貸方に記入します。

貸借の差額は「有価証券売却益(収益に属する勘定科目)」を貸方に記入、又は「有価証券売却損(費用に属する勘定科目)」を借方に記入します。

<仕訳例>
・社債券(取得価額105 付随費用含む)を110で売却し、端数利息3とともに代金は来月受け取る。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売却 未収入金113有価証券105
有価証券利息3
有価証券売却益5

(4)配当の受け取りと仕訳

株券(株式)を取得した場合には、株券の発行企業から「配当」を受け取れる場合があります。

配当を受け取った際には「受取配当金(収益に属する勘定科目)」を貸方に記入して仕訳します。

※現金を受け取らなくとも、「配当金領収証」が郵送され入手した時点で現金として扱います(下記の関連記事を参照)。

<仕訳例>
・配当金領収証5が郵送で届いた。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
配当金の受け取り現金5受取配当金5

(5)公社債利息の受け取りと仕訳

公社債を所有する場合には、満期になるまで「利息」を受け取れます。

有価証券に関する利息のため、「有価証券利息(収益に属する勘定科目)」を貸方に記入します。

※現金を受け取らなくとも、「公社債にくっついている利札(クーポン)」に記載の支払日が到来した時点で現金として扱います(上記の関連記事「現金の範囲と仕訳」を参照)。

<仕訳例>
・保有する社債の利息5について支払期限が到来した。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
利息の受け取り現金5有価証券利息5

(6)未経過利息の計上と仕訳

公社債利息の支払日(利払日)が到来する前に決算日を迎えた場合、直前の利払日の翌日から決算日までの期間に対応する公社債利息を計上していないため、未経過利息として「未収収益(資産に属する勘定科目)」を借方に記入し、貸方には「有価証券利息」を記入します(決算整理仕訳)。

<仕訳例>
・決算日。保有する社債について未経過利息1を計上する。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未経過利息の計上未収収益1有価証券利息1

B/S表示科目

「有価証券」について、決算書の貸借対照表(B/S)上では、「有価証券」「投資有価証券」「関係会社株式」といった、「上記で解説した勘定科目」とは別の「表示科目」を使用して表示します。

※例えば、売買目的の有価証券について、帳簿上では「売買目的有価証券」という勘定科目を用いて仕訳しますが、B/S上では「有価証券」という表示科目で掲載します。

<保有目的区分とB/S表示>

保有目的表示科目
売買目的有価証券
満期保有目的有価証券(一年以内に満期が到来する債券)
投資有価証券(上記以外の債券)
子会社・関連会社として取得関係会社株式
その他の目的投資有価証券

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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