商業簿記2級 有価証券の保有目的と区分

更新日:2019年9月20日
公開日:2017年8月19日

前回、「有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」では有価証券に関する基本的な手続(取得、売却、利息、配当金)について解説しました。

今回は有価証券の保有目的と区分について説明します。

※簿記2級の有価証券のまとめページになっています。それぞれの有価証券については、「売買目的有価証券の手続と仕訳処理」以降で解説していますので、併せてご参照ください。

有価証券の取引と貸借対照表の表示科目、簿記の勘定科目

前回、「有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」では有価証券の増減に関する取引は有価証券勘定を使用して仕訳しました。

しかし、これは基本となる仕訳の処理であり、実務で使用する有価証券の勘定科目は1つではありません。

また、取引を集約した決算書上の表示科目についても、例えば貸借対照表では、有価証券だけでなく、投資有価証券関係会社株式などの表示科目を使用して有価証券を表示します。

【補足】勘定科目と表示科目の違い

「勘定科目」と「表示科目」は言葉は似ていますが、似て非なるものと覚えておきましょう。

取引の記録のために仕訳する場合に使用する科目を勘定科目といいます。

それに対して、その取引記録を集約させた決算書(貸借対照表、損益計算書など)上に掲載するための科目は表示科目といいます。

両者は同名の科目も存在しますが、異なる場合もあります。

また、表示科目は金融商品取引法(上場企業などが決算書を作成して公表する場合のルール)や会社法などの法令で表示のルールが定められていますが、勘定科目は法令の定めはありません。

なぜならば、例えば上場企業の決算書は会社外部に一般的に公表されるからです。

それに対して一つ一つの取引記録は通常は会社外部に公開することはありません。

しかし、だからといってどんな勘定科目でも認められる訳ではありません。

実務でも「この取引ならば、この勘定科目を使用することは妥当または許容できるであろう」という慣習(かんしゅう)が存在します。

日商簿記検定でも、標準的な勘定科目と許容される勘定科目といったものを定めています。

有価証券の保有目的と区分

有価証券は、有価証券の保有目的によって、勘定科目や表示科目を区分します。

具体的には次の4つの保有目的に区分します。

保有目的勘定科目表示科目
売買目的売買目的有価証券有価証券
満期保有目的満期保有目的債券有価証券(一年以内に満期が到来する債券)
投資有価証券(上記以外の債券)
子会社・関連会社として取得子会社株式関係会社株式
関連会社株式
その他の目的その他有価証券投資有価証券

それぞれの保有目的、および代表的な取引にて使用する勘定科目についてまとめています。

仕訳処理については次回以降に解説します。

売買目的有価証券

売買目的有価証券とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得一般的な仕訳売買目的有価証券×××現金預金など×××
端数利息を支払った場合売買目的有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××
売却 ※1利益が発生現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券売却益×××
有価証券利息×××
損失が発生現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券売却損×××
有価証券利息×××
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××
決算日の評価利益が発生売買目的有価証券×××有価証券評価益×××
損失が発生有価証券評価損×××売買目的有価証券×××

※1:端数利息が発生した場合の仕訳

満期保有目的債券

満期保有目的債券とは、満期まで保有する意図を持って取得した債券(国債、社債、地方債など)をいいます。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得一般的な仕訳満期保有目的債券×××現金預金など×××
端数利息を支払った場合満期保有目的債券×××現金預金など×××
有価証券利息×××
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××
決算日の評価原則仕訳なし
取得価額と額面金額の差額が
金利の調整と認められる場合
満期保有目的債券×××有価証券利息×××

子会社株式および関連会社株式

子会社株式とは、発行済株式数の50%超を保有した会社の株式をいいます。

関連会社株式とは、発行済株式数の20%以上50%以下を保有した会社の株式をいいます。

※どちらも厳密な定義ではありません。簿記2級の出題範囲に合わせた説明です。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得子会社株式の取得子会社株式×××現金預金など×××
関連会社株式の取得関連会社株式×××現金預金など×××
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
決算日の評価仕訳なし

その他有価証券

その他有価証券とは、上記のいずれにも分類されない有価証券をいいます。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得一般的な仕訳その他有価証券×××現金預金など×××
端数利息を支払った場合その他有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××
売却 ※1利益が発生現金預金など×××その他有価証券×××
投資有価証券売却益×××
有価証券利息×××
損失が発生現金預金など×××その他有価証券×××
投資有価証券売却損×××
有価証券利息×××
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××
決算日の評価時価 > 取得原価その他有価証券×××その他有価証券評価差額金×××
繰延税金負債 ※2×××
時価 < 取得原価その他有価証券評価差額金×××その他有価証券×××
繰延税金資産 ※2×××

※1:端数利息が発生した場合の仕訳

※2:繰延税金資産と繰延税金負債は、平成30年度改定によって税効果会計が日商簿記2級の試験範囲に含まれることになったことにより、決算日評価の仕訳が変更された結果、追加された勘定科目です。

税効果会計については、「税効果会計とは(仕組みと手続きの解説)」「税効果会計の仕訳処理」にて詳細を解説しています。

実務での有価証券の保有目的と区分についての留意点

コメントしたいことは次の2点です。

(1)同じ種類の有価証券でも保有目的によって仕訳処理が異なる。

例えば、A社は、時価の変動による利益を得ることを目的としてB社の有価証券を購入しました。

従って、この場合には売買目的有価証券として仕訳処理することになります。

一方で、C社は、事業提携の目的としてB社の有価証券を購入したとします。

すると、この場合のB社株式は売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社株式および関連会社株式のいずれにも該当しないため、その他有価証券として仕訳処理することになります。

つまり、同じ種類の有価証券であっても、会社の保有目的によって仕訳処理が異なるということです。

(1)一度決めた保有目的は継続して摘要される。

企業会計原則の一つに「継続性の原則」という会計原則があります。

継続性の原則:企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

従って、保有目的もこの継続性の原則に則り、一度決めた保有目的は正当な理由がない限り変更せず、同じ種類の有価証券については継続して同じ保有目的を摘要することになります。

関連リンク

まとめ

今回は有価証券の保有目的と区分について解説しました。様々な勘定科目、表示科目が登場したため、一度に覚えきれないと思います。理解+暗記による反復学習で覚えてきましょう。

それぞれの有価証券については、次回以降で個別に解説していますので、ご参照ください。

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