商業簿記入門その68~外貨建ての営業取引と仕訳処理(2級)

更新日:2019年4月29日
公開日:2018年3月20日

外貨建ての営業取引と仕訳処理(2級)

前回、「商業簿記入門その67~外貨建ての営業取引の用語と手続(2級)」では、外貨建て取引のうち、営業取引について用語や手続きについて解説しました。

今回は、外貨建て取引のうち、営業取引の仕訳処理について説明します。

※簿記2級の論点になります。


外貨建取引(営業取引)の仕訳処理

外貨建て取引(営業取引)の仕訳処理には、(1)売上、仕入れ時の仕訳、(2)決算時の仕訳、(3)為替予約時の仕訳、(4)決済時の仕訳があります。

それぞれについて解説します。

(1)売上、仕入れ時の仕訳処理

売上や仕入といった取引が発生した時には、通常は直物為替相場のレートで円に換算して仕訳処理します。

例えば、海外から商品を100ドルで仕入れ、1か月後に代金を支払い、同時に決済する場合、直物為替相場のレートが100円/ドルであれば、100ドル×100円/ドル=1万円で仕訳処理します。

なお、外貨建て取引の仕訳処理のポイントとして、仕入勘定や売上勘定はこの時に計上して以降、金額が変わることはありません。売掛金勘定や買掛金勘定は金額が変わります。

(2)決算時の仕訳処理

決算時に外貨建ての売掛金や買掛金が存在する場合には換算替え(かんざんがえ)を行います。

具体的には、外貨建ての売掛金や買掛金を決算時の為替レートで評価します。「評価」とは、ここでは「決算時の金額で計上すること」と考えて差し支えありません。

例えば、決算時に米ドル建ての売掛金が100ドルあり、1万円で計上されているとします。

決算時の為替レートが105円/ドルだとすると、この売掛金を100ドル×105円/ドル=1万500円で計上する、ということです。

仕訳処理としては、これまでの計上額1万円と1万500円との差額500円を「為替差損益(かわせさそんえき)勘定(収益と費用に属する勘定科目)」で記帳します。


(3)為替予約時の仕訳処理

為替予約(かわせよやく)とは、先物為替相場のレートで取引を決済するために、決済前に予め金融機関と先物為替相場のレートを取り決めして、決済に使用する為替レートについて契約することをいいます。

為替予約は、売上や仕入れの取引時に契約することもできますし、取引後に契約することもできます。

為替予約時の仕訳処理ですが、為替予約時の先物為替相場の為替レートで売掛金や買掛金を評価替えします。評価替えの方法や使用する勘定科目は決算時の仕訳処理と同じです。

ただし、売上や仕入れ時に同時に為替予約を行った場合には、上述の(1)で説明した直物為替相場ではなく、先物為替相場の為替レートで仕訳処理します。

そして、一度、為替予約を行い仕訳処理したならば、決算時には換算替えを行いません。

なぜこのような仕訳処理になるかといえば、為替予約を一度行えば、決済時にも為替予約の為替レートで仕訳処理されるからです。従って、決算時にも換算替えを行う必要はありません。

これに対して、為替予約を行わない場合には、次の(4)の通り、決済時の為替レートで代金回収または支払いを行うことになります。従って、決算時には決済に最も近い為替レートである決算時の為替レートで換算替えを行います。

(4)決済時の仕訳処理

決済とは、外国通貨を自国通貨と交換することをいいます。

営業取引(売上、仕入れ)では、売掛金の代金回収や、買掛金の支払い時に決済を行うのが通常です。

決済をする際に使用する為替レートは、決済時の為替レートです。

例えば、100ドルで仕入れた商品を決算時に換算替えして、1万500円で計上しました。

決済時(代金支払い時)の為替レートが110円の場合には、代金は100ドル×110円/ドル=1万1千円になります。代金を当座預金から支払うのであれば、「当座預金 11,000」と貸方に記帳します(買掛金の金額は変わらず、1万500円で借方に減少として記入します)。

そして、1万1千円と1万500円の差額500円は為替差損益勘定で記帳します。

以上が通常の決済時の仕訳処理になりますが、予め決済前に為替予約を行っていた場合には、代金は決済時のレートではなく為替予約のレートを使用して仕訳処理します。なぜならば、為替予約とは決済する時の為替レートを予め決めたものだからです。

仕訳処理のまとめ

(1)から(4)をまとめた仕訳処理を表にしましたのでご参考ください(売上取引を例にしました)。

出来事為替レート借方科目借方金額貸方科目貸方金額
販売取引の発生直物為替相場売掛金×××売上×××
先物為替相場売掛金×××売上×××
販売取引後に
為替予約を契約
先物為替相場
( > 直物為替相場)
売掛金×××為替差損益×××
先物為替相場
( < 直物為替相場)
為替差損益×××売掛金×××
決算直物為替相場
( < 決算日レート )
売掛金×××為替差損益×××
直物為替相場
( > 決算日レート )
為替差損益×××売掛金×××
先物為替相場仕訳なし
代金回収
(決済)
決済時の為替レート
( 売掛金 < 代金回収額 )
現金預金など×××売掛金×××
為替差損益×××
決済時の為替レート
( 売掛金 > 代金回収額 )
現金預金など×××売掛金×××
為替差損益×××
先物為替相場現金預金など×××売掛金×××

仕訳例

  • 【問題】
  • 1.A社は海外のB社へ100ドルの商品を販売した。代金は掛けとして6か月後に回収する。なお、この日の為替相場は100円/ドルであった。
  • 2.A社は海外のC社より50ドルの商品を仕入れた。代金は掛けとして3か月後に支払う。なお、為替リスクを回避するため、為替予約を銀行と契約した。3か月後の先物為替レートは95円/ドルである。
  • 3.A社は上述1.の売上取引のうち、50ドルについて、為替予約を銀行と契約した。決済時の先物為替レートは105円/ドルである。
  • 4.A社は決算日を迎えた。この日の為替レートは98円である。
  • 5.A社は上述2.の支払日になったため、C社への支払代金を当座預金より支払った。なお、この日の為替レートは100円/ドルである。
  • 6.A社は上述1.の回収日になり、B社から売上代金が当座預金に振り込まれた。なお、この日の為替レートは110円/ドルである。

【解答】

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1売掛金10,000売上10,000
2仕入4,750買掛金4,750
3売掛金250為替差損益250
4為替差損益100売掛金100
5買掛金4,750当座預金4,750
6当座預金10,750売掛金10,150
為替差損益600

【解説】
売掛金の取引は応用問題にしてみました。

  • 1.売上金額:100ドル×100円/ドル(直物為替相場) = 1万円
  • 2.仕入金額:50ドル×95円/ドル(先物為替相場) = 4,750円

  • 3.為替差損益:( 先物為替相場105円/ドル - 直物為替相場100円/ドル ) × 50ドル = 250円
  • 4.決算日の為替レートで換算替えをするのは、売掛金のうち、為替予約を行っていない50ドルだけです。
  • 為替差損益:( 直物為替相場100円/ドル - 決算日の為替レート98円/ドル ) × 50ドル = 100円(借方計上)
  • 5.仕入時に為替予約を行っているため、支払代金も為替予約の為替レート95円/ドルで計算します。
  • 買掛金:上述2より4,750円
  • 支払代金:買掛金と同じ。4,750円
  • 6.上述3.で半分の50ドルだけ為替予約を行っています。この部分は回収代金も為替予約の為替レート105円/ドルで計算します。
  • 残りの50ドルの回収代金は、決済時の為替レート110円/ドルで計算します。
  • 売掛金:上述1より10,000円 + 上述3より250円 - 上述4より100円 = 10,150円
  • 回収代金:50ドル(為替予約分)× 105円/ドル + 50ドル(直物為替相場分)× 決済日為替レート110円/ドル = 10,750円
  • 為替差損益:貸借差額

関連リンク

まとめ

今回は外国建ての営業取引について、仕訳処理を解説しました。様々な仕訳パターンがあるので、暗記に頼らずに理解+反復演習で覚えていきましょう。


戻る | 次へ

一覧


【運営者情報・免責事項】





関連リンク

会計入門
~実務に役立つ会計の入門

決算書が読めるようになるサイト。「実務に役立つシリーズ」第1弾!!

原価計算入門
~簿記資格の学習を支援

衣服メーカーを例に分かりやすく解説。「実務に役立つシリーズ」第2弾!!

会計ヘッジ
将来リスクを回避するためのサイト

会計、簿記、経理、税務、起業など、トピックやトレンドも含め、様々な情報を配信

個人事業主の確定申告入門
~青色申告で節税する会計帳簿の作り方

個人事業主の青色申告について、仕訳や帳簿作成を中心に解説