広告宣伝費とは|仕訳を様々な取引例で具体的に解説(簿記3級)
記事更新日:2026年5月6日
記事公開日:2018年4月13日
広告宣伝費は様々な種類の広告が存在するため、取引も多種多様です。この点、日商簿記3級では小規模企業の取引を出題すること、および受験者が理解が難しいと感じている「未払金と未払費用の違い」や「経過勘定項目」に焦点を当てて解説するには都合が良いと思いました。
そこで本記事では、広告宣伝費について、概要や勘定科目を説明した後に、この3点にも言及しながら日商簿記3級で出題される可能性のある取引と仕訳例を示して解説します。
※最後には仕訳問題(解答と解説付き)を掲載しています。
<本記事について>
・取引例(問題文)は、簿記3級の出題を考慮しつつも、実務に役立つ用語・内容や、時事ワードを含めてオリジナル要素を強めています。
・本試験レベルの仕訳例・問題を解説しています。
・基本レベルの問題から学習したい方は、次のリンクから基本テキスト(電子書籍WEB版)を利用できます。
目次
広告宣伝費とは
広告宣伝費とは、自社の製品・サービス又は企業自体の魅力・特長を、TV・インターネット・雑誌といった媒体によって、多くの人に伝え関心を持ってもらうための活動に要した支出に関する費用をいいます。
取引の内容
例えばTV・新聞やWEB上の広告があります。その他、商品を販売するための見本やサンプルを作るのに要した支出や、キャンペーンに要した支出なども広告宣伝費になります(ただし、会社によって広告宣伝費の範囲は異なるため、取引によっては、広告宣伝費以外の勘定科目で仕訳する場合もあります)。
P/L上の表示
広告宣伝費は、企業の事業活動に必要な経費のうち、仕入(売上原価)には含まれない間接的なコスト(販売費)に分類されます。
従って、広告宣伝費は損益計算書上、販売費及び一般管理費の区分に表示します。
広告宣伝費の仕訳
広告宣伝費(費用に属する勘定科目)で仕訳します。
広告を掲載・配布した時には、借方に広告宣伝費を記入するとともに、貸方には現金・普通預金・未払金などの勘定科目で仕訳します。
いつ費用計上するか?
広告宣伝費は、原則として、代金を支払った時ではなく、広告を掲載した時や配布した時に計上します。
一方で、簿記3級では小規模企業の取引を想定していることから、広告料金を支払った時に広告宣伝費を計上するような簡便的な仕訳が出題されることがあります。
仕訳例
広告の種類や取引形態を考慮した取引と仕訳例を示します。
※SNS広告など、オリジナルの取引例を含みます。
1.TV広告と未払金
<仕訳例1>
当社商品のCMをTVで配信した代金として、¥1,000,000の請求書(翌月支払予定)が届いたため、適切に処理する。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 1,000,000 | 未払金 | 1,000,000 |
<取引の8要素>
<解説>
TV広告を配信したため、請求書の金額¥1,000,000で借方に広告宣伝費を記入します。代金は翌月支払予定のため、貸方には未払金で仕訳します。
未払費用ではなく、未払金で仕訳する理由
- ・広告宣伝は固定資産の取得のように、その都度、契約を締結する一時的な取引に分類されるため、一般的には未払金で仕訳します。
- ・ただし、長期間の契約で決算をまたぐような契約の場合には、未払費用を用います。
- ・その他、問題の指示や選択肢から判断して解答します。
2.SNS広告(小規模企業を想定)
<仕訳例2>
SNS広告配信料として¥10,000が普通預金口座から引き落とされた。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
<解説>
小規模の会社では小額で始められるSNS広告を利用することが少なくありません。本問では、借方に広告宣伝費を記入し、貸方に普通預金を記入して仕訳する簡便的な仕訳を解答としました(広告代金を支払った時に広告宣伝費を計上する場合)。
※実際の本試験では、問題の指示に従って解答しましょう。
その他、次の解答も考えられます。ただし、この場合には、「すでに広告宣伝費は未払計上済みである」など、上記の問題文に追加して指示があるはずです。
<別解>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
<(参考)未払計上時>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
3.チラシ広告(新聞折り込み)と広告代理店
<仕訳例3>
広告代理店を通じて今月配布した新聞の折り込み広告のチラシ作成代金、配達料その他手数料などの総額¥500,000について、普通預金口座から広告代理店が指定する口座に振り込んだ。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 500,000 | 普通預金 | 500,000 |
<解説>
広告代理店を介して広告を掲載する場合には、広告代理店に支払う手数料は支払手数料などの勘定科目で別に記帳せずに広告宣伝の支出として一括して広告宣伝費で仕訳します。
※仕訳例2.と同じく、小規模企業による簡便的な仕訳
4.WEB広告(インターネット)と未払費用
<仕訳例4>
決算整理事項 期中にインターネット上のWEB広告を利用して、総額¥1,500,000の当社商品の長期キャンペーンを行った(代金は後払い)。キャンペーン期間:3ヶ月間 うち2ヶ月分は当期のため、未払広告宣伝費(未払費用)で費用計上する。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 1,000,000 | 未払広告宣伝費 ※ | 1,000,000 |
※未払費用でも可
<解説>
決算をまたいだ取引の場合には、広告料金の総額のうち、当期分を費用計上します。本問では後払いの契約になっているため、問題の指示の通り、未払広告宣伝費(未払費用)を用いて、¥1,000,000(¥1,500,000÷3ヶ月×2ヶ月)を計上するよう仕訳します。
<(参考)翌期首の仕訳(再振替仕訳)>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未払広告宣伝費 ※ | 1,000,000 | 広告宣伝費 | 1,000,000 |
※未払費用でも可
<(参考)代金支払い時の仕訳>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 1,500,000 | 普通預金 | 1,500,000 |
仕訳問題
<問題>
次の広告宣伝に関する取引について、適切な仕訳を示しなさい。なお、当社の決算日は3月31日である。
- 4/8 当社商品のPR広告を、地元で人気のフリーペーパーに掲載した。なお、掲載期間は本日から1ヶ月間である。電子メールで掲載広告の画像とともに当該広告代金¥100,000の請求書が届いたため、広告宣伝費を計上する。
- 7/12 G社のインターネット検索エンジンに広告掲載した代金¥27,000が本日、普通預金口座より引き落とされた。なお、当該広告について費用は未計上である。
- 10/1 遠隔地からの集客を目的として、郊外に看板広告を掲載することにした。期間は本日から2年間。契約に基づき、代金総額¥2,400,000を普通預金口座から広告代理店の指定口座に前払いした。なお、当該振込みに際して、振込み手数料¥1,000が同普通預金口座から引き落とされた。
- 3/31(決算整理事項) 看板広告について費用を繰り延べる。
<解答>
| 日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 4/8 | 広告宣伝費 | 100,000 | 未払金 | 100,000 |
| 7/12 | 広告宣伝費 | 27,000 | 普通預金 | 27,000 |
| 10/1 | 広告宣伝費 | 2,400,000 | 普通預金 | 2,401,000 |
| 支払手数料 | 1,000 | |||
| 3/31 | 前払広告宣伝費 ※ | 1,800,000 | 広告宣伝費 | 1,800,000 |
※前払費用でも可
<取引の8要素>
<解説>
4/8 フリーペーパー(無料の情報誌)のページ内広告への掲載に関する問題。請求書が届いたと問題文にあり、一方で支払いに関する情報は載っていないため、貸方は未払金を記入して仕訳します。
7/12 インターネット検索エンジンに表示される広告について、「当該広告について費用は未計上である」と記載があるため、支出した日(7/12)に広告宣伝費を計上します。従って、借方に広告宣伝費¥27,000を記入するとともに、貸方には同額で普通預金を記入して仕訳します。
10/1 看板広告に関する問題。契約期間が10/1から2年間であるため、10/1から広告宣伝費が発生していると考えられます。従って、借方は広告宣伝費で仕訳します。金額は前払いした¥2,400,000で記帳します。¥2,400,000は向こう2年間分の代金のため、決算の際に翌期以降の部分を繰り延べる仕訳を記帳します(次の問題)。また、銀行預金の振込手数料は支払手数料で仕訳します。
3/31(決算整理事項) 前問の看板広告料金のうち、翌期分の費用を繰り延べます。「繰り延べ(くりのべ)」とは、当期に計上した収益・費用の一部を翌期以降の費用にすることをいいます(これに対して、未計上の収益・費用を当期に計上する場合には「見越し(みこし)」です)。
費用の繰り延べには前払費用(資産)を用いて仕訳します。具体的には、借方に前払費用(又は、本問では前払費用から派生した勘定科目である「前払広告宣伝費」)を計上するとともに、貸方には当期に計上した費用のうち、減少させたい勘定科目(本問では広告宣伝費)を計上します。翌期分の広告宣伝費は、2年間(24ヶ月)の契約から当期分の6ヶ月(10/1~3/31)を差し引いた18ヶ月分に該当することから、金額は¥1,800,000(=¥2,400,000÷24ヶ月×18ヶ月)になります。

