商業簿記入門その85~収益・費用の繰延べ・見越し(経過勘定項目)と仕訳処理(3級)

公開日:2018年4月21日

収益・費用の繰延べ・見越し(経過勘定項目)と仕訳処理(3級)

前回、「商業簿記入門その84~試算表の作成(3級)」では、合計残高試算表の作成について解説しました。

今回は、収益・費用の繰延べ・見越しと、その仕訳処理について説明します。


繰延べとは

繰延べ(くりのべ)とは、計上した収益や費用を、期間に応じて当期と次期以降に配分する仕訳処理により、次期以降の収益や費用にすることをいいます。

具体的には、例えば、当期に受け取った家賃収入であるが、次期以降の家賃である場合や、借入金の利息を支払ったが、次期以降の利息を前払いしている場合などが、繰延べに該当します。

繰延べの「延」は「延長する」の「延」です。ここから、「収益や費用を次期以降に延期する」といったイメージで覚えると覚えやすいでしょう。

見越しとは

見越し(みこし)とは、当期の収益や費用であるが、次期以降にお金などを受け取る、または支払うため、収益や費用として計上されていない場合に、当期の収益や費用にすることをいいます。

具体的には、例えば、次期に受け取る家賃収入であるが、当期分の家賃である場合や、当期分の借入金の利息の支払いが次期以降である場合などが、繰延べに該当します。

見越しとは「将来を見通すこと」や「予測」という意味があります。ここから、「予測 = 事前に前もって計上する」といったイメージで覚えると覚えやすいでしょう。

繰延べや見越しの対象になる取引

繰延べや見越しの対象になる取引は、「企業会計原則」という会計ルールに記載があり、「一定の契約に従って、継続した役務(えきむ)の提供や役務の享受(きょうじゅ)」が対象になります。

役務とはサービスを意味し、享受とは受け取りを意味します。

「一定の契約に従って」とは、「契約の締結時にサービスの提供期間を決めている」と考えておけば差し支えありません。


繰延べと見越しの仕訳処理

繰延べや見越しの仕訳処理は決算時の決算整理仕訳として行います。

※実務では毎月仕訳を切る場合もあります。

繰延べの仕訳処理

繰延べを行う場合には、「前受〇〇勘定(負債に属する勘定科目)」「前払〇〇勘定(資産に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

〇〇の部分はサービスの内容によって異なります。例えば、家賃の前受けであれば、「前受家賃」、保険料の前払いであれば、「前払保険料」といった勘定科目を使用します。

具体的な仕訳処理を収益の繰延べで説明します。例えば、6か月分の家賃を受け取り、うち2ヵ月分は、次期の収益である場合を考えます。

6ヵ月分の家賃を受け取った場合には、6ヵ月分の金額で、借方に現金預金、未収入金などの勘定科目、貸方には受取家賃勘定を記入しています。

そこで、2ヵ月分を次期に繰延べるために、借方に受取家賃勘定を記入し、貸方に前受家賃勘定を記入します。

この仕訳処理の結果、当期には4ヵ月分の受取家賃が計上された状態になります。

費用の繰延べの場合も、同様に考えますが、貸借の記入が収益とは反対になります。「費用を次期以降に繰延べる = 当期の費用を減少させる」ので、借方に前払〇〇(前払保険料勘定など)を記入し、貸方に費用の勘定科目(保険料勘定など)を記入して仕訳処理します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
収益の繰延べ収益の勘定科目×××前受〇〇×××
費用の繰延べ前払〇〇×××費用の勘定科目×××

見越しの仕訳処理

見越しを行う場合には、「未収〇〇勘定(資産に属する勘定科目)」「未払〇〇勘定(負債に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

〇〇の部分はサービスの内容によって異なります。例えば、手数料の未収であれば、「未収手数料」、利息の未払いであれば、「未払利息」といった勘定科目を使用します。

具体的な仕訳処理を費用の見越しで説明します。例えば、6か月分の利息を次期に支払いますが、うち2ヵ月分は、当期の費用である場合を考えます。

6ヵ月分の利息は次期に支払うため、当期にはこの取引については仕訳をきっていません。

そこで、2ヵ月分の利息を当期に見越すために、借方に支払利息勘定を記入し、貸方に未払利息勘定を記入します。

この仕訳処理の結果、当期には2ヵ月分の支払利息が計上された状態になります。

収益の見越しの場合も、同様に考えますが、貸借の記入が費用とは反対になります。「収益を当期に見越す = 当期の収益として計上する」ので、借方に収益の勘定科目(受取手数料勘定など)を記入し、貸方に未収〇〇(未収手数料勘定など)を記入して仕訳処理します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
収益の見越し未収〇〇×××収益の勘定科目×××
費用の見越し費用の勘定科目×××未払〇〇×××

経過勘定項目

上述の「前受〇〇」「前払〇〇」「未収〇〇」「未払〇〇」の4種類の勘定科目のことを「経過勘定項目(けいかかんじょうこうもく)」といいます。

経過勘定項目(勘定科目)のまとめ

下記に主な経過勘定項目をまとめました。

取引繰延べor
見越し
収益or
費用
費用or収益科目繰延べor見越し科目
家賃繰延べ収益受取家賃前受家賃
費用支払家賃前払家賃
見越し収益受取家賃未収家賃
費用支払家賃未払家賃
地代繰延べ収益受取地代前受地代
費用支払地代前払地代
見越し収益受取地代未収地代
費用支払地代未払地代
保険料繰延べ費用保険料前払保険料
見越し未払保険料
利息繰延べ収益受取利息前受利息
費用支払利息前払利息
見越し収益受取利息未収利息
費用支払利息未払利息
手数料繰延べ収益受取手数料前受手数料
費用支払手数料前払手数料
見越し収益受取手数料未収手数料
費用支払手数料未払手数料

※1.保険料の収益科目は3級の出題範囲外のため、記載しておりません。
※2.事業として行っている場合には、役務収益や役務原価を使用する方が適切とも考えられます。問題の指示に従ってください。


仕訳例

次の取引は、A社の×1年4月1日から×2年3月31日を当期とする取引である。決算日に決算整理仕訳として行う、繰延べと見越しに関する仕訳をきりなさい。

1.B社から建物を継続して借りる契約を締結している。×2年1月1日、向こう半年分の家賃300万円を支払った。
2.C社へ100万円を貸しており、年率6%の利息で、5年後に返済される契約を締結している。利息は毎年5月31日に前年6月1日~当年5月31日までの期間の利息が当座預金に振り込まれる。
3.D社へ土地を継続して貸す契約を締結している。×2年2月1日に半年分の地代600万円を先払いで受け取ることになっている。
4.E社と火災保険契約を締結しており、毎年4月30日に前年5月1日から当年4月30日までの保険料36万円を支払う契約になっている。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1前払家賃1,500,000支払家賃1,500,000
2未収利息50,000受取利息50,000
3受取地代4,000,000前受地代4,000,000
4保険料330,000未払保険料330,000

まとめ

今回は収益・費用の繰延べ・見越しとその仕訳処理について解説しました。仕訳例の取引はあえて難しくしています。暗記に頼らずに繰延べと見越しを理解するようにしましょう。


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