認識・測定とは|登場場面別の使い方を分かりやすく解説
執筆日:2024年2月16日
※本記事には、入門者を対象とした内容と上級者・実務家を対象とした内容が含まれています。
会計学では、「認識」「測定」という用語が様々な所で登場しますが、伝統的な会計学の解説と異なる定義が会計基準等に掲載されていることがあるため、混乱する人もいるかもしれません。
本記事では会計用語の「認識」「測定」について、登場場面別の使い方や特徴を解説し、最後に、それぞれの場面で使い方に違いがあるのかどうかについて結論を述べます。
認識・測定とは|登場場面別の使い方を分かりやすく解説
目次
(入門)伝統的な会計学で登場する「認識」「測定」とは
まずはじめに、伝統的な会計学や「企業会計原則」の解説書のうち、収益・費用の論点で登場する「認識」と「測定」は、次のように説明されます。
<「認識」と「測定」>
- 「認識」:「いつ計上するか」を表す会計用語
- 「測定」:「いくらで計上するか」を表す会計用語
つまり、「認識」は収益・費用を計上する「タイミング」に着目するのに対して、「測定」は収益・費用を計上する「貨幣額(金額)」に着目した言葉である、ということです。
例えば、商品を販売した場合には売上を計上しますが、この場合には、「認識=商品を販売した時点」「測定=販売した商品の価格×数量」になります。
「いつ収益・費用を計上するか」という「認識」の考え方については、「現金主義」「発生主義」「実現主義」の3種類に分類して会計学で議論がなされます。これに対して、「いくらで計上するか」という「測定」に関しては「収入額・支出額に基づいて計上する」という「収支額基準」が適用されます。
※↓以下、「上級者・実務家」対象
「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」の場合
2つ目は、2004年7月に企業会計基準委員会から公表(2006年12月改訂)された「討議資料 財務会計の概念フレームワーク(以下、「概念フレームワーク」)」です。ここでも「認識」と「測定」が登場し、次の通り、定義されています。
<「概念フレームワーク」の場合>
- 「認識」:財務諸表における認識とは、構成要素を財務諸表の本体に計上することをいう。
- 「測定」:財務諸表における測定とは、財務諸表に計上される諸項目に貨幣額を割り当てることをいう。
- 引用元:討議資料 財務会計の概念フレームワーク
「概念フレームワーク」は「演繹的・理論的」に導かれた条文であり、文が硬い印象がありますが、文はともかく「意味合い」について、1つ目の「会計学」の場合と比較すると、「測定」に大きな違いはありませんが、「認識」については「いつ」という「計上のタイミング」に着目する言葉が見当らず、単に「計上すること」になっています。この点、収益・費用を議論する場合にはそぐわない印象を受ける言葉になったと私は感じています。
その一方で、「概念フレームワーク」の場合には、収益・費用だけでなく、資産や負債にも「認識」「測定」を使うことから、より広い範囲で議論できる言葉になったといえます。
例えば、「商品を販売し代金は掛けとしたので、売掛金を認識する」「株式を注文し約定したので、有価証券を認識する」「建物を取得原価で測定する」といったように使います。
「認識」と「蓋然性」
もう一点、重要なのは、「概念フレームワーク」の「認識」には、「蓋然性(一定程度の発生可能性)」に関する条文が記載してあることです。つまり、勿論、これまでも「認識」に「蓋然性」はつきものではありましたが、「貸倒引当金」に代表される「見積り」に対しても「認識」の言葉を使用できることが明らかにされた点について「概念フレームワーク」は貢献しており、例えば、「収益認識会計基準」などの会計基準等を実務で適用する際にもプラスの影響を与えていると考えています。
「会計基準」の場合
1999年1月に企業会計審議会が公表した「金融商品に係る会計基準」(現「金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)」。以下、「金融商品会計基準」)では、「概念フレームワーク」が公表される前に、既に「金融資産・金融負債の認識」として言葉が使われています。
<「金融商品会計基準」の場合>
- 金融資産の契約上の権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産又は金融負債の発生を認識しなければならない。
- 引用元:金融商品に係る会計基準
もう1つ、すぐに頭に思い浮かぶのが「固定資産の減損に係る会計基準(企業会計審議会)」です。減損会計の計上までの手続きのステップの中で、「減損損失の認識」「減損損失の測定」といったように使用されています。
結論・まとめ
以上、「認識」「測定」の使い方を登場場面別に解説しました。
様々なところで登場する「認識」「測定」という会計用語ですが、着目点や解説の違いはあれど、どの箇所でも同じ意味合いで用いられている、というのが本記事での結論になります。
会計基準等・参考文献
※2024年2月17日現在。リンク先の会計基準等・参考文献は最新版でない場合があります。
会計基準等
・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)
・固定資産の減損に係る会計基準(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書)(企業会計審議会)
・金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)
参考文献
・飯野利夫 財務会計論[3訂版] 同文館 1993年
・スタンダードテキスト財務会計論I(基本論点編)(第9版) 中央経済社 2015年
・桜井久勝 財務会計講義(第12版) 中央経済社 2011年
日本の会計基準として古くから存在し現在も実務においてお世話になる会計基準。「真実性の原則」「実現主義」「取得原価主義」など、会計学を学ぶならば欠かせません。試験勉強でも各会計基準を学ぶ前の「土台」としての役割を担う論点のため、専門スクールのテキストでも最初に解説されています。