割賦基準(回収基準・回収期限到来基準)と廃止の理由を解説
執筆日:2023年9月16日
「割賦基準」は、「企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)」では認められていた収益認識基準ですが、「収益認識に関する会計基準」では認められなくなり、現在では廃止されました。
本記事では、「割賦基準(回収基準・回収期限到来基準)」の概要と、現在の会計基準では廃止された理由を解説します。
割賦基準(回収基準・回収期限到来基準)と廃止の理由を解説
目次
「割賦基準」とは
「割賦基準」とは、割賦販売における収益認識基準であり、現金等価物(売掛債権)の代金回収時に売上計上します。
割賦基準は、代金回収時に収益認識する「回収基準」と、代金回収期限が到来した時点で収益認識する「回収期限到来基準」とに分類できます。
「企業会計原則」で割賦基準が容認される理由
以上の通り、割賦基準は、収益認識基準の種類のうち「現金主義」に分類されることから、「実現主義」を収益認識の原則とする企業会計原則では、本来は認められません。
しかし、割賦販売は代金回収までに長期間を要する取引形態であることから、売上債権の貸倒れリスクが高く、貸倒引当金を見積もり計上する必要がありますが、一般の商品販売とは異なるため、引当金の見積もりには複雑さと煩雑さを伴います。
そこで、慎重な売上計上を達成すべく、「販売基準(商品引渡し時に収益認識する方法)」以外の収益認識方法として、「割賦基準」を認めています。
(引用)企業会計原則〔注6〕実現主義の適用について(損益計算書原則三のB)
(本文)
「(4) 割賦販売
(省略)しかし、割賦販売は通常の販売と異なり、その代金回収の期間が長期にわたり、かつ、分割払であることから代金回収上の危険率が高いので、貸倒引当金及び代金回収費、アフター・サービス費等の引当金の計上について特別の配慮を要するが、その算定に当っては、不確実性と煩雑さとを伴う場合が多い。従って、収益の認識を慎重に行うため、販売基準に代えて、割賦金の回収期限の到来の日又は入金の日をもって売上収益実現の日とすることも認められる。」
「収益認識に関する会計基準」の制定とその趣旨(基本方針)
これまで、日本では収益認識に関する包括的な会計基準が存在しませんでした。一方で国際会計基準は2014年に「顧客との契約から生じる収益(IFRS第15号)」を公表しました。
以上の経緯から、「内外企業の財務諸表の比較可能性の向上」を目的の1つとして、企業会計基準委員会は、「収益認識に関する会計基準(以下、同会計基準)」「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、同適用指針)」を公表しました(早期適用を経て、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業会計年度の期首から適用開始)。
「同会計基準」は、「企業会計原則」に優先して適用されます。
割賦基準が廃止された理由
「同会計基準」は、「出荷基準」に代表される日本の実務慣行についても配慮し、企業間の比較可能性を損なわない範囲で、代替的な取り扱いを定めています(同適用指針 第98項、第164項など)。
ただし、「割賦基準」については、「ポイント引当金」や「返品調整引当金」などとともに、国際会計基準の定めと日本の実務とが大きく異なる可能性があり、審議を行った結果、国際的な比較可能性の確保の観点から認めない、としています(同会計基準 第104項、同適用指針 第182項、『「収益認識に関する会計基準(案)(企業会計基準公開草案第61号)-コメントの募集及び公開草案の概要」の「別紙2 本会計基準等と従来の日本基準又は日本基準における実務 との簡略的な比較」』を参照)。
会計基準等
※2023年9月16日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)
・収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)
・収益認識に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第30号)
・収益認識に関する会計基準(案)(企業会計基準公開草案第61号)-コメントの募集及び公開草案の概要