活発な市場・主要な市場・最も有利な市場とは|会計用語の解説
執筆日:2023年9月29日
※本記事は、2023年9月29日時点の会計基準等に基づいています。
資産の期末評価を行う際の判断要素の1つに「活発な市場の存在有無」があります。複数の会計基準で登場する重要な会計用語です。
その他、「時価の算定に関する会計基準(以下、時価算定会計基準)」「時価の算定に関する会計基準の適用指針(以下、時価算定適用指針)」には、「活発な市場」の他にも「主要な市場」「最も有利な市場」という似た用語も登場します。
本記事では、会計用語である「活発な市場」を中心に、「主要な市場」「最も有利な市場」の概要や、これらの用語との違いなども含めて解説します。
活発な市場・主要な市場・最も有利な市場とは|会計用語の解説
目次
「活発な市場」とは
「活発な市場」とは、継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量及び頻度で取引が行われている市場をいいます(時価算定会計基準 第4項)。
適用場面
「金融商品」「トレーディング目的で保有する棚卸資産」の期末評価のうち、「時価の算定」に使用する「インプット」の選択に使用します(時価算定会計基準 第3項)。
具体的には、「活発な市場」は、「レベル1のインプット」の相場価格(ただし調整されていないものに限る)として選択する市場になります(時価算定会計基準 第11項)。
「主要な市場」「最も有利な市場」との関係・違い
これらの用語は「時価算定会計基準」に登場します。
「主要な市場」「最も有利な市場」とは
「時価算定会計基準 第4項」で、次の通り、定義されています。
「主要な市場」とは、資産又は負債についての取引の数量及び頻度が最も大きい市場をいいます。
「最も有利な市場」とは、取得又は売却に要する付随費用を考慮したうえで、資産の売却による受取額を最大化又は負債の移転に対する支払額を最小化できる市場をいいます。
用語の関係・違い
例えば、金融商品などの時価の算定においては、「レベル1のインプット」の相場価格が観察される市場として、上記の通り「活発な市場」が選択されます。
この場合において、「活発な市場」が複数存在する場合、「活発な市場」の中で最も取引数量及び頻度が大きな市場である「主要な市場」で観察される相場価格が「レベル1のインプット」になります。
ただし、会社が該当する資産又は負債の「主要な市場」を入手していない場合、つまり会社が入手した「活発な市場」の中には「主要な市場」が存在しない場合もありえます。
この場合には、「主要な市場」ではなく「最も有利な市場」における相場価格を使用します(以上、時価算定会計適用指針 第11項)。
暗号資産の時価算定
「活発な市場」の用語は、「暗号資産」の会計処理・開示を定めた「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い (実務対応報告第38号)」のうち、期末評価に関する定めでも登場します。
会計基準等
※2023年9月29日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・時価の算定に関する会計基準(企業会計基準第30号)
・時価の算定に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第31号)
・資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い(実務対応報告第38号)
簿記3級レベルから簿記1級以上までの現金預金の論点を掲載。どの試験でも財務諸表の作成などの決算整理・未処理事項を中心に出題されます。