暗号資産|期末評価と表示・注記(実務対応報告第38号の解説)

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執筆日:2023年9月23日

※本記事は、2023年9月23日時点の会計基準等や法令に基づいています。

「暗号資産」は新しいビジネスであり、会計処理が確立されているとはいえない分野です。

本記事では、実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 」を中心に、暗号資産の期末評価の方法や財務諸表上の表示・注記事項を解説します。

暗号資産とは

暗号資産」とは、電子的に取引可能であり、かつ、交換手段、計量単位、又は価値の蓄積として機能する電子的な価値の表章であるが、いかなる法域においても法定通貨(すなわち、債権者に供された場合に、法的に有効な支払の提供となるもの)としての地位を有さないものをいいます(実務対応報告第38号 第23項)。

以上の定義から、暗号資産は、「法定通貨(日本円、米ドルなど)」や、法定通貨の価値を電子的に移転した「電子マネー」とは異なります。

また、資金決済法では、「プリペイドカード(Suicaなどの前払式支払手段)」や「ポイント・サービス(TポイントやPAYPAYポイントなど)」は、暗号資産に該当しないとされています(第25項)。

実務対応報告第38号の公表

平成28年(2016年)に「資金決済に関する法律」が改正され、「暗号資産」が定義され、「暗号資産交換業者」に対して登録制が導入されました。さらに暗号資産交換業者には、公認会計士又は監査法人による財務諸表監査が義務付けられることになりました。

このような背景から、新しいビジネスである暗号資産の会計処理や開示の早急な整備が社会から求められる一方で、暗号資産のビジネスは初期段階であることから、今後の進展や、暗号資産の法的な位置付けなど、予測が難しいため、当面必要と考えられる「最小限度の会計処理や開示の取り扱い」を定めることを目的として、平成30年(2018年)3月14日に、企業会計基準委員会は実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 」を公表しました。

※従って、以下の解説の通り、限定的な定めになっています。

本実務対応報告は、平成30年(2018年)4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています。

適用範囲

資金決済法に規定する暗号資産を対象としています。

ただし、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した資金決済法に規定する暗号資産は除きます(本実務対応報告の適用範囲対象外。以上、第3項)。

暗号資産の会計処理

「暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産」と「暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産」に区分して定めています。

暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産

次の通り。

期末評価

当該暗号資産に「活発な市場」が存在する場合には、時価のうち、「市場価格に基づく価額」を貸借対照表価額とし、当該差額を当期損益とします(第5項)。

「活発な市場」が存在しない場合には、取得原価により評価します。ただし、活発な市場が存在しない場合において、取得原価が処分見込価額を下回る場合には、処分見込価額を貸借対照表価額とし、取得原価との差額は当期の損失とします(第6項)。当該損失は次期以降に戻し入れは行いません(第7項)。

売却損益の認識

暗号資産の売買の合意成立時に当該暗号資産の売却損益を認識します(第13項)。

暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産

次の通り。

暗号資産と負債の認識

「暗号資産交換業者」は、預託者との預託の合意に基づいて、暗号資産を預かった時に当該暗号資産を資産として認識し、その際の帳簿価額は時価とします。

同時に、当該暗号資産の返還義務として、当該暗号資産と同額の負債を計上します(第14項)。

期末評価

「暗号資産交換業者」が保有する同一種類の暗号資産とは分離した上で、「活発な市場の存在の有無」で場合分けし、上記「暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産」と同様の方法で評価します。

表示

暗号資産の売却取引に係る損益について、売却収入から売却原価を控除した純額を損益計算書に表示します(第16項)。

注記事項

次の事項を注記します(第17項)。

会計基準等・法令

※2023年9月23日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

※実務対応報告第38号が参照する資金決済法の条文は公表当時の条文であるため、現在の資金決済法の条文とは異なります。

資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い(実務対応報告第38号)
資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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