組織デザインの見直し方-内部統制概念の活用例
記事最終更新日:2024年5月12日
記事公開日:2012年3月25日
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お読みになる前に
- ・「J-SOX制度」や「COSOフレームワーク」の解説記事ではありません。
- ・「内部統制」の概念や考え方について、著者(須藤恵亮)の知識と体験に基づく見解によって、かつ自由な表現で解説しています。
会社活動を行う中で、「信頼」は経営上の重要な課題の1つです。
「信頼のある会社」を別の言葉で説明しようとすると、いろいろと考えられますが、私は「内部統制が高い会社」が信頼ある会社だと考えています。
本記事では内部統制の考え方を「組織デザインの見直し」に適用する方法について具体例で解説します。
内部統制とは?
内部統制とは、企業のガバナンスや事業目的を達成するために組織で組み込まれる仕組みをいいます。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
目的 | 財務情報の信頼性の確保、業務の効率性・有効性、コンプライアンスなど | |
要素 | 統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、モニタリング |
具体的な目的(経営成果)の例
- ・売上、利益
- ・株価、時価総額(企業価値)
- ・世間の評判
- ・金融機関や取引先の関係
- ・従業員の残業時間
- ・社内の人間関係
- ・Etc
以上のような目的を達成するために、企業は組織デザインを見直すことがあります。
組織デザインで見直すべき仕組み
内部統制の観点から「全社的な内部統制(マクロ視点)」と「業務処理レベルの内部統制(ミクロ視点)」とで分類すると、組織デザインを見直すには次の仕組みを検討する必要があります。
マクロ視点の検討事項
- ・トップダウンか、ボトムアップか。
- ・ピラミッド型の階層的な組織か、役職は少なくしたフラットな組織とするのか。
- ・取締役会や監査役会を設置するのか。
- ・どのような部署を設置してどのような権限責任を付与するのか。
- ・年功序列か成果主義か
- ・アットホームな雰囲気なのか、ビジネスライクな社風にするのか
- ・Etc
ミクロ視点の検討事項
- ※販売プロセスの場合
- ・契約締結
- ・見積り
- ・受注
- ・販売
- ・回収
組織デザインの見直し例-マクロ視点
経営者タイプに組織デザインを合わせる、という前提で考えます。経営者と株主が同一のオーナー企業で採用しやすい方法です。
上場企業と比較すると組織体制が未整備な部分が多い未上場の中小企業の例を示します。
No | 仕組み | 内容 | 問題点 | 改善案 |
---|---|---|---|---|
1 | 経営者タイプ | 経営陣・従業員の意見を聞いて意思決定 部下の主体性を重視 | ー | ー |
2 | 組織構成 | 階層が少ないフラットな組織 | 作業者を増やすため階層的な構造にする | ピラミッド組織 |
3 | 取締役・監査役 | 能力や年齢のバランスが取れている | ー | ー |
4 | 作業者数/管理者数(比率) | 低い(作業者が少ない) | ※No7とあわせた問題 沢山の管理者から矛盾する指示を受けた作業者が戸惑う。 業務効率性・有効性ともに悪くなる | 割合を高める |
5 | 計画策定手続き | トップダウン | 部下が主体的に参加しない・できない | ボトムアップ |
6 | 会議体 | 形骸化 | 発言の意義を失う | 活性化 |
7 | 業務分掌・職務権限 | あいまいな部分が多い | No4に記載 | 明確化 |
8 | 稟議制度 | 無し | No5と同じ | 有り |
9 | 社風 | 業務を改善する発言がしにくい | 組織が停滞する | 風通しのよい組織 |
10 | 情報発信 | 各部署 | 他の仕組みがそのままの場合、混乱する | 各部署 |
このように組織デザインを内部統制の仕組み別に分析して課題を抽出すれば、具体的な改善案を挙げやすくなります。
組織デザインの見直し例-ミクロ視点
次に販売業務コストが増大した結果、利益が低下した会社を例とします。
業務 | 問題点 | 改善点 |
---|---|---|
契約締結 | 契約書フォーマットがなく、手続きがルール化されていない。 | 契約書フォーマットの策定。契約手続きの文書化と運用の徹底 |
見積り | 担当者が安値の見積書を見込み客に勝手に提出していた。 | 見積り提出時には上長承認を得るようにルール化する。 |
受注 | 注文があったが受注登録していない案件があった。 | 注文書と受注リストとの照合作業を行う。 |
販売 | 売上集計の計算結果に誤りがあった。 | 売上データの集計数値を複数人でチェックする。 |
回収 | 売上債権の滞留管理が行われておらず、結果として貸倒れが増加した。 | 滞留債権リストの作成と定期的な経営者への報告 |
販売や仕入、研究開発など、業務プロセスのレベルで会社の内部統制を分析してみると、具体的な内部統制上の問題点を浮き彫りにすることができ、。改善策も具体化できます。