個人事業主が開業費の仕訳や支出を経費とする方法・範囲を解説(所得税)

更新日:2020年4月14日
公開日:2019年1月29日

開業前の準備に関する取引の仕訳

今回は、開業する前に準備行為として取引を行った場合の仕訳を中心に解説していきます。

取引例

  • 4月1日に開業した。なお、開業前の準備として次の取引を行った。
  • 1.名刺を作成し、作成代3万円を支払った。
  • 2.WEB制作を依頼し、制作業者に20万円を支払った。
  • 3.チラシやDM制作費用として5万円を支払った。
  • 4.販売用の商品15万円を仕入れた。
  • 5.営業用の自動車100万円を購入した。

仕訳

  • 4月1日
  • 1.開業費 30,000 / 元入金 30,000
  • 2.開業費 200,000 / 元入金 200,000
  • 3.開業費 50,000 / 元入金 50,000
  • 4.商品 150,000 / 元入金 150,000
  • 5.車両運搬具 1,000,000 / 元入金 1,000,000

1.開業費とは

開業前の準備として、事業のために特別に支出した費用のうち、支出の効果が1年以上に及ぶものを開業費といいます。

「繰延資産」の種類の1つに数えられます。

「開業費」という勘定科目ですが、資産に属する勘定科目です。

開業後には、「広告宣伝費」「消耗品費」「事務用品費」「支払手数料」といった勘定科目で仕訳する取引が多いです。

開業費は所得税法上、個人事業主・フリーランスの確定申告上、費用としての計上が認められています。

資産に計上後、一定の償却方法に従って毎年の必要経費として計上します。

2.繰延資産と開業費の定義

所得税法を平易な日本語に置き換えました(以下、同様)。

開業費とは、今後の事業活動のために開業前に予め準備しておくために支出した費用です。

今後の事業活動の準備のための支出であることから、当然、その効果は開業日以降に及びます。従って、開業費は繰延資産です。

3.開発費の範囲

上述の定義の通り開業費とは、今後の事業活動のために開業前に予め準備しておくために支出した費用のうち、その効果が支出日以後一年以上に及ぶものです。

基本的にはこの定義に該当する支出であれば、開業費になります。開業前の準備として行うような取引はほとんど開業費として計上できます。

例えば次の取引があります。

  • ・市場調査や事業計画策定
  • ・認可事業のための免許取得
  • ・10万円未満のPCや机など備品購入
  • ・事業所オフィスの賃借料

4.開業費に含めないもの

次のものは開業費に含めません。

  • ・10万円以上の固定資産
  • ・棚卸資産

減価償却の対象となる資産は、所得税法上、定めがあり、開業費とは異なる償却期間(耐用年数)が定められているため、固定資産として処理する必要があるからです。

棚卸資産は販売時に売上原価になるので、ある期間中効果が及ぶという性質は持っていません。従って、開業費ではありません。

以下、開業費の定義と費用として認められる範囲などについて、所得税法を引用しながらコメントします。

5.開業費の所得税法上の計上方法

次に開業費の所得税法上の必要経費としての計上方法についてです。

開業費は、事業開始の年に全額を費用として計上することはできず、支出額を60で除し、年の経過月数を乗じて計算した金額を計上します。

例えば、開業費として120を支出し、10月1日に事業開始した場合、第1期は、「120÷60カ月×3カ月(10月~12月)=6」を費用として、所得税確定申告書に計上できます。

なお、開業費の償却方法は「任意償却」が認められています。

具体的には、開業費の償却額として費用計上する金額は、未償却残高の範囲内でいつでも費用計上できるとされています。

最後に4.ですが、取得価額が10万円以上の減価償却資産(建物、備品、機械設備、車両運搬具など)で使用可能期間が1年以上のものは開業費には含めず、固定資産として所得税法上、取り扱います。

理由は、減価償却の対象となる資産は、所得税法上、定めがあり、開業費とは異なる償却期間(耐用年数)が定められているため、固定資産として処理する必要があるからです。

6.【補足】開発費の償却について

開業費は計上後、5年の均等償却、または任意償却が認められています。

即ち、5年の均等償却を適用した場合には、取引例の1.の名刺作成代2万円は5年(60ヶ月)で1ヶ月当たり500円で均等に必要経費として計上します。

任意償却を適用した場合には、開業後、どの年でも計上できますし、金額も償却の累計額が3万円の範囲内であれば、いくらでも構いません。

初年度に3万円全額を償却しても構いませんし、2年後に1万円、10年後に2万円を計上も認められます。

なお償却時の仕訳は「開業費償却 ××× / 開業費 ×××」となります。

借方は繰延資産償却でも問題ないでしょう。

7.開業費の仕訳処理

開業時には、借方に「開業費(資産の勘定科目)」、貸方に元入金として仕訳処理します。

償却時には、借方に。「開業費償却(費用の勘定科目)」、貸方に開業費を記入して仕訳します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
開業開業費×××元入金×××
開業費の償却開業費償却×××開業費×××

8.ホームページ作成費用について

チラシやDMと同様、広告宣伝のためと考えることができます。

従って、開業費として計上します。

ただし、ソフトウェア機能としての性格が強い場合には、ソフトウェアとして固定資産の分類になります。

「ソフトウェア機能」の例としては、ショッピングサイトや会員制サイト、掲示板といった、HTMLやCSSだけでなく、PHP、Javaを始めとしたサーバサイドのプログラミング言語を使用している場合です。

このような場合には、その機能部分の金額はソフトウェアとして、固定資産計上し、5年で償却します。

9.仕訳の解説

開業前の支出は全て個人の現金、預金口座やクレジットからになります。事業用の現金や口座はないため、「現金」「普通預金」といった勘定科目は使用しません。

個人から捻出した支払は「事業主借」勘定を使用しますが、開業日に事業に投下した元手という意味合いから、貸方は全て「元入金」とします。

事業主借でも特に問題ないのではと思います。

4.と5.は上記の通り、開業費に該当しないことから、それぞれ借方には棚卸資産(商品勘定)と固定資産(車両運搬具勘定)を記入します。

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