個人事業主の確定申告入門~労働の消費に関する仕訳

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労働の消費に関する仕訳

今回は、労働の消費に関する仕訳について解説します。

取引例

  • 製造業を営むAは、複数の作業員を雇用している。賃金は毎月20日締め翌月10日払いである。
  • 1.7/31 来月10日に支払う賃金は合計105万円(うち6/21-30賃金35万円)である。なお、7/21-31の賃金を計算したところ、30万円であった。
  • 1-1.賃金計上の仕訳。なお、源泉所得税や社会保険料の合計は15万円である。
  • 1-2.製造投入(労務費消費)の仕訳。なお、間接的な作業に要した時間や手待ち時間は全体の20%であった。
  • 2.8/10 1.の賃金を事業用の普通預金から振り込んだ。

仕訳

  • 1.7/31
  • 1-1.賃金計上の仕訳
  • 賃金 1,000,000 / 未払費用 700,000
  •            / 未払費用 300,000
  • 1-2.製造投入の仕訳
  • 仕掛品 800,000 / 賃金 1,000,000
  • 製造間接費 200,000 /
  • 2.8/10 支払の仕訳
  • 未払費用 700,000 / 普通預金 900,000
  • 未払費用 350,000 / 預り金 150,000

解説

以下、解説です。

1.労働の消費

製造工程に作業員を投入することを、会計上では「労働の消費」ということがあります。

労働は材料と異なり、在庫とすることはできません。

従って、作業員を雇用した場合には、その時点から労働の消費が継続的に発生する、ということになります。

2.作業員の分類

原価計算基準によると、作業員は「直接工」と「間接工」に分類できます。

直接工とは、どの製品にどの程度、発生したのか把握できるような作業に従事している労働者をいいます。

間接工とは、どの製品にどの程度、発生したのか把握が難しい作業に従事している労働者をいいます。

例えば、ズボンを製造する工場にて、布を切る、糸で縫う、ズボンのデザインをする、といった作業は直接工です。

清掃する、モノを運ぶといった作業は間接工に分類できます。

以上はあくまでも一つの例であり、実務では、各個人事業主の事業に応じて、重要性の高さなどを考慮して作業が管理されているはずです。

従って、例えばモノを運ぶ作業も製品ごとに作業員を区分していたり、時間を管理している場合には、間接工ではなく直接工になります。

3.作業の分類

原価計算基準によると、作業には「直接作業」と「間接作業」があります。

直接作業とは、どの製品にどの程度、発生したのか把握できるような作業をいいます。

間接作業とは、どの製品にどの程度、発生したのか把握が難しい作業をいいます。

上述で記載した直接工、間接工の作業例は、そのまま直接作業、間接作業の例としても当てはまります。

しかし、直接工の作業が全て直接作業に該当するわけではありません。

例えば、直接工でも作業報告書を書いたり、会議に出席する、といった作業は発生します。このような作業は間接作業に該当します。

4,手待ち時間

作業が発生せず、待機している時間を手待ち時間(てまちじかん)といいます。

例えば、布が届くのを待っている、といったことです。

また、ソフトウェア制作業を行う事業では、繁忙期と閑散期があり、閑散期は待機時間が多くなる傾向があります。この待機時間はどのプロジェクトにも関わっていない時間であることから、手待ち時間に該当するといえます。

5.労働の消費の集計

通常は月単位で、次のような内容で労働の消費を集計します。

(1)その月に発生した賃金について、直接工と間接工ごとに計算して集計する。月末締めでない場合には、前月と当月の未払部分を計算に含めて、当月に発生した賃金を計算する。

(2)特に直接工は、作業報告書や日報などで、日々の作業を記録し、月単位で作業ごとの作業時間を集計する。

(3)作業報告書や日報で記録する作業の区分のうち、直接作業については、製品別にかかった作業時間を集計できるようにしておく。

ただし、個人事業主の場合には、より簡便的な方法で集計しても構わないでしょう。例えば、ある月の作業を観察した結果、直接作業と間接作業にかかった費用(1時間あたり賃金×作業時間)の割合は、8:2であったなど。

しかし、恣意性の介入はできるだけ排除することも考慮し、さらに税務調査などで合理的に説明できるようにしておくべきでしょう。

6.労働の消費の仕訳

労働の消費は、通常は月単位で仕訳します。

労働の消費のうち、直接工が行った直接作業は、製品毎に作業が把握できることから、「仕掛品勘定」を使用して仕訳します。

直接工が行った間接作業と間接工が行った作業、それと手待ち時間は、製品毎に作業が把握できないため、「製造間接費勘定」で記入し、別途、Excelなどの表計算ソフトなどで、製品別の配賦計算(はいふけいさん)を行います。

ここで配賦計算とは、製品毎に作業が把握できない費用に対して、なんらかの合理的な基準で、各製品に費用を割り振る計算のことをいいます。

仕掛品に集計した費用は、どの製品にかかった費用なのか把握できるため、配賦計算は行いません。

7.仕訳の解説

1.発生した賃金を計算する問題です。支払いベースでそのまま金額を記入ではなく、「当月に発生した」という発生ベースの賃金を計算しないといけません。ここでは「発生」という言葉を「労働・作業」に置き換えると分かりやすいでしょう。

来月8月10日に支払う賃金は、7月20日締め、つまり6月21日から7月20日までに発生(作業)した賃金です。従って、7月1日から7月31日の発生とは少し違うので、調整が必要です。

具体的には、6月21日から6月30日までの賃金を差し引き、かわりに7月21日から7月31日までの賃金を足すことで、7月発生の賃金を計算できます。

1-1.賃金計上の仕訳。未払費用勘定は、8月10日支払い分と9月10日支払い分に分けるため、2行にして記入しました。1行で100万円を記入してももちろん構いませんが、8月10日に支払いの仕訳を作る際に、100万円のうち、いくらが8月10日支払い分なのかが分からなくなります。そこで2行にするのが、より実務的な仕訳と考えました。

1-2.製造投入(消費)の仕訳。間接作業や手待ちの時間は全体の20%のため、100万円の20%である20万円を製造間接費勘定で記入し、のこり80%を仕掛品勘定で記入して、上述1-1.仕訳のうち、借方の賃金勘定を振り替えています。

問題文では簡単に「20%」と記載されますが、実務では、この「8:2」を導き出すためには上述の考え方で、慎重に、合理的に、時間をかけて検討します。

2.賃金支払いの仕訳。未払費用のうち、1行目の70万円は7月発生の賃金(7月1日~7月20日発生)、2行目の35万円は6月発生の賃金(6月21日~6月30日発生)です。ここでも、後に仕訳を確認しやすいように、2行で記入しています。

8.関連リンク

賃金(労務費)に関する他コンテンツを含むページになります。





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