所得税の赤字繰越しと繰戻し還付とは|個人事業主、フリーランス向け解説
更新日:2020年4月14日
公開日:2018年8月19日
個人事業主やフリーランスの方は所得税を国に納める必要があります。
この所得税には様々な制度が存在し、これらの制度を適切に組み合わせることで納める税金を少なくすることができます。
今回はそのような節税につながる制度の中から、赤字の繰越しと繰戻し還付の制度について解説します。
1.赤字の繰越しと繰戻し還付と効果
始めに所得税上の赤字の繰越しと繰戻し還付について概要を説明し、次にこれらの効果について説明します。
(1)赤字の繰越しと繰戻し還付とは
赤字の繰越し(くりこし)とは、過年度に発生した純損失(赤字)を持ち越して、翌年以降の利益(黒字)と相殺できる所得税上の制度をいいます。
事業所得などを得るような個人事業主やフリーランスは、条件を満たせば、赤字を翌年以降3年間、持ち越すことができます。すなわち3年後の黒字と相殺して所得税を計算できるということです。
次に繰戻し還付(くりもどしかんぷ。単に繰戻しとも)とは、赤字になった年度の確定申告において、過年度が黒字であった場合にはその黒字と今年度の赤字とを実質相殺した結果、前年度に収めた所得税が還付される(お金が戻ってくる)ことをいいます。
条件を満たした個人事業主、フリーランスであれば、前年が黒字で今年が赤字である場合に、赤字の繰戻しを行うことができます。
(2)その効果
個人事業主やフリーランスが所得税の確定申告を行う際に、赤字の繰越しと繰戻しを活用することで課税所得の金額を減少させ、結果として納めるべき税金を少なくすることができます。
この効果は、個人事業主、フリーランスの事業が毎年安定していない状態で、赤字と黒字を繰り返しているような場合にはには特に大きなメリットがあるといえます。
2.赤字の繰越しと繰戻し還付を理解するために
赤字の繰越しと繰戻しについて簡単に説明しました。
次に、具体例などを用いてより分かりやすく解説します。
(1)流れ図で理解する
赤字の繰越しと繰戻しを流れ図にすると次の通りです。
赤字の繰越しと繰戻しの違い
- ①赤字の繰越し
最初に赤字→3年以内に黒字→赤字と黒字を相殺(赤字分だけ払う税金が少なくなる) - ②赤字の繰戻し
最初に黒字(税金を払う)→翌年が赤字→黒字と赤字を相殺(赤字分だけ税金が戻ってくる)
(2)具体例を使って理解する
例えば、X1年は課税所得が200の赤字、X2年の課税所得が50の黒字、X3年の課税所得は100の黒字だったとします。
この場合にはX1年の赤字を繰越して、X2年の課税所得50、X3年の課税所得100とそれぞれ相殺した結果、どの年も納める所得税はゼロになります。さらにX4年も黒字であった場合でも、X1年の未相殺額50(=200-50-100)だけ相殺して所得税を減らすことができます。
次に別の例で、X1年は課税所得が200の黒字、X2年の課税所得が50の赤字だったとします。
この場合にはX2年の赤字を繰り戻すことで、X1年に納付した所得税のうち、相殺可能なX2年の赤字額50の分だけ税金が戻ってきます(還付といいます)。
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赤字の繰越しと繰戻し還付を利用するには
このように赤字の繰越しと繰戻しは所得税上の節税に大きな効果があります。
しかし、所得税法上では、個人事業主やフリーランスが赤字の繰越しと繰戻しを活用するためには「青色申告制度」による方法で確定申告を行う必要があります。
青色申告を行うには複式簿記の適用など、事務処理上で負担がかかりますが、その代わりに今回説明した赤字の繰越しや繰戻し以外にも様々なメリットを得ることができます。
青色申告の詳細は下記の記事にて解説しています。