会計入門その2~なぜ決算書を作成するのか?

更新日:2019年7月2日
作成日:2012年4月5日

なぜ決算書を作成するのか?

前回、会計入門その1~はじめにで説明しましたが、様々な場面で会計や決算書が役に立つことがお分かり頂けたと思います。

何かを学習する場合には、まず意義や目的を明確にします。

なぜかというと、意義や目的を知っておくと決算書の必要性というものがより分かるからです。

そこで今回は、「決算書を作成する意義や目的」、すなわち、「なぜ決算書を作成するのか」について制度的な視点から解説します。




3種類の決算書と意義・目的

「制度会計」という言葉があります。制度会計とは、法に基づいた会計ルール、と覚えておけば差し支えありません。

我が国では「金融商品取引法」「会社法」「税法」という3種類の法令に基づく制度会計が存在します(3種類の制度会計が存在することから、我が国の会計制度を「トライアングル体制」といいます)。それぞれの法令に応えるため、それぞれの制度に対応した決算書が存在します。下の表をご覧下さい。

決算書と制度の関係

このように

金融商品取引法:財務諸表
会社法    :計算書類
税法     :確定申告書

と3種類の決算書が存在することが分かります。

なぜ3種類の決算書が存在するかといえば、決算書を作る目的がそれぞれの法で異なり、目的に応じて決算書の内容も異なるものにする必要があるからです。

それぞれの決算書が制度化されている理由とは

例えば、財務諸表は投資家(株主)を保護するために作成されます。

投資家は投資したい会社がどれだけ儲かっているのか(経営成績)や、お金がどれだけあるのか、借り入れがどれだけあるのか(財政状態)といったことを知りたいと思います。なぜならば、そういった情報を基準として株式を購入するかどうか、売却するかどうか判断したいからです。

しかし、会社が「ウソの決算書」を作る可能性があります。

つまり本当は儲かっていないのに儲かっているような決算書を作成している可能性があるわけです。

これを「粉飾決算(ふんしょくけっさん)」といいます。逆に儲かっているのに儲かっていない決算書を作ることを「逆粉飾決算」といい、脱税などに利用されます。

ウソの決算書が作られてしまえば、投資家は正常な判断をできるわけがありません。

そこで監査役や会計監査の専門家である監査法人(公認会計士)のチェック(監査)を受けないといけないとしています。

以上のことをただ単に「守りましょう」といっても、言う通りにするとは限りません。そこで、金融庁が「金融商品取引法」として会計ルールを制度化しています。

そして金融商品取引法のルールに基づいて作成する決算書のことを「財務諸表(ざいむしょひょう)」といいます(財務諸表は、日商簿記検定では2級で学習します)。

計算書類と確定申告書も同様に「債権者保護」や「課税の公平性を担保する」という目的から作成される決算書です。

そして、債務者や国民を保護するために監査役や外部の専門家が決算書をチェックします。

※確定申告書を作成する目的である「課税の公平性」は、会社外部の「国民」を保護するということです。また、計算書類は最終的には株主総会で株主の承認(または報告)が必要となりますので株主もチェックします。




決算書の具体的な種類と内容、閲覧方法など

以上のように目的が異なるため、決算書の内容や情報量も異なってきます。

一番情報量が多いのが財務諸表です。上場会社が内閣総理大臣(金融庁)に提出した財務諸表は「EDINET(エディネット)」というインターネットサイトで過去5年分いつでも見ることができます。

投資家を保護するだけあって、その情報量はかなりのボリュームになります。

しかし、投資家のうち、実際にこの情報を活用できているのはわずかな人だけです。

従って、財務諸表を隅から隅まで理解して読めるようになれば会計分野では「会計に関する相当な知見(ちけん)がある」といえるでしょう。

皆さんの1つの目標としてもいいかもしれません。

計算書類も上場会社であれば同じく、「EDINET」で見ることができます。計算書類は株主になれば、株主総会の招集通知に含まれて送付されますが、直近の計算書類であれば、EDINETで見ることができます。

財務諸表や計算書類には監査法人(公認会計士)による監査報告書が添付されています。

以上がEDINETに関する説明です。

次に、計算書類の要約をまとめた「決算公告(けっさんこうこく)」があります。

決算公告は株式会社などの事業会社であれば、上場していない会社も一般公開する必要があります。

一般公開の方法は、官報や新聞広告、会社のホームページなどです(会社が決めます)。

財務諸表と似た情報も多いですが、ボリューム自体は財務諸表とは比べ物にならない程簡素なものであり、必要な情報を簡潔にまとめています。

最後の確定申告書ですが、これは自社のものでなければ通常は見ることができません。

国税庁のホームページやインターネット検索で確定申告書のフォーマットや解説しているサイトはたくさんあります。また、書籍もたくさんありますので興味のある方は探してみて下さい。




その他の決算書について

上記以外にも会計ルールは存在します。例えば中小企業を対象とした会計ルール「中小会計要領(ちゅうしょうかいけいようりょう)」があります。

「中小企業の会計に関する基本要領」は、非上場企業である中小企業を対象とした会計ルールです。

実務上の要請に応じて、上場企業の会計ルールである金融商品取引法と比較して、大幅に簡素化された会計ルールになっています。

中小企業向けのスタンダードな会計ルールとなるよう、金融庁及び中小企業庁が中心となり、中小企業金融機関、税理士、公認会計士などと連携して普及活動を進めています。

その他、自治体や学校法人などについても、それぞれ法に基づいた会計ルールが存在し、上記とは異なる決算書を作成するよう要求されています。

決算書作りは一大プロジェクト

実務的な話ですが、決算書を作成する時期は本当に忙しくて大変です。上場会社になると3種類全てを作る必要がある。日本の会社は3月決算が多いので、4月から6月にかけて、決算書に関係する部署や外部関係者は非常に忙しくなります。

通常、経理部が中心となって決算書を作成します。作成後、会社を代表して経営者の責任で、監査役や外部の監査法人、税理士等に提出し、チェックされます。間違いが見つかると修正しないといけません。また、修正するかどうかで経営者と監査法人(財務諸表、計算書類)、経営者と税理士(確定申告書)が揉めることももちろんあります。精神的にもタフな時期です。

しかし、このように一大プロジェクトであるからこそ、全て終わらせたときの達成感も非常に大きいものになります。

※現在は四半期決算のため、年中忙しいイメージが強いですが、一方でIT導入度合いや習熟度などによって効率よく作業している会社もあり、この点、昔と比べて忙しさにはバラつきがあるようです。

※今後、経理や財務といった事務作業を行う部署で活躍したいのであれば、簿記や会計、税務(外資系であれば、英語も)だけでなく、ITにも興味を持つことをお勧めします。

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