会計入門その2~なぜ決算書を作成するのか?

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月5日

なぜ決算書を作成するのか?

前回、会計入門その1~はじめにで説明しましたが、様々な場面で会計や決算書が役に立つことがお分かり頂けたと思います。

何かを学習する場合には、まず意義や目的を明確にします。

なぜかというと、意義や目的を知っておくと決算書の必要性というものがより分かるからです。

そこで今回は、「決算書を作成する意義や目的」、すなわち、「なぜ決算書を作成するのか」について制度的な視点から解説します。

<学習ポイント>
1.3種類の決算書と意義・目的を理解する
2.それぞれの決算書の理由
3.決算書の内容


3種類の決算書と意義・目的

「制度会計」という言葉があります。制度会計とは、法に基づいた会計ルール、と覚えておけば差し支えありません。

我が国では「金融商品取引法」「会社法」「税法」という3種類の法令に基づく制度会計が存在します(3種類の制度会計が存在することから、我が国の会計制度を「トライアングル体制」といいます)。それぞれの法令に応えるため、それぞれの制度に対応した決算書が存在します。下の表をご覧下さい。

決算書と制度の関係

このように

金融商品取引法:財務諸表
会社法    :計算書類
税法     :確定申告書

と3種類の決算書が存在することが分かります。

なぜ3種類の決算書が存在するかといえば、決算書を作る目的がそれぞれの法で異なり、目的に応じて決算書の内容も異なるものにする必要があるからです。

それぞれの決算書が制度化されている理由とは

例えば、財務諸表は投資家(株主)を保護するために作成されます。投資家は投資したい会社がどれだけ儲かっているのか(経営成績)やお金がどれだけあるのか、借り入れがどれだけあるのか(財政状態)を知りたいと思います。なぜならば、そういった情報を基準として株式を購入するかどうか、売却するかどうか判断したいからです。

しかし、会社がウソの決算書を作る可能性があります。つまり本当は儲かっていないのに儲かっているような決算書を作成している可能性があるわけです(これを粉飾決算といいます。逆に儲かっているのに儲かっていない決算書を作ることを「逆粉飾決算」といい、脱税などに利用されます)。

ウソの決算書を作られてしまえば、投資家は正常な判断をできるわけがありません。そこで監査役や会計監査の専門家である監査法人(公認会計士)のチェック(監査)を受けないといけないとしています。

以上のことをただ単に「守りましょう」といっても、言う通りにするとは限りません。そこで、金融庁が「金融商品取引法」として会計ルールを制度化しています。

計算書類と確定申告書も理由を説明する流れは同じです。外部の第三者を保護するために監査役や外部の専門家が決算書をチェックします(確定申告書を作成する目的である「課税の公平性」は、会社外部の「国民」を保護するということです。また、計算書類は最終的には株主総会で株主の承認(または報告)が必要となりますので株主のチェックも入ります)。


決算書の内容

以上のように目的が異なるため、決算書の内容や情報量も異なってきます。

一番情報量が多いのが財務諸表です。各社が内閣総理大臣(金融庁)に提出した財務諸表は「EDINET」というインターネットサイトで過去5年分いつでも見ることができます。その情報の多さはさすがに投資家を保護するだけのものがあります。

しかし、投資家のうち、実際にこの情報を活用できているのはわずかな人だけです。従って、財務諸表を隅から隅まで理解して読めるようになれば会計分野では「相当な知見がある」、ということになります。皆さんの最終的な目標としてもいいのではないでしょうか。

計算書類も上場会社であれば同じく、「EDINET」で見ることができます。その他、計算書類の要約をまとめた「決算公告」というものがあります。決算公告は事業会社であれば上場していない会社も開示して、一般に見ることができるようにする必要があります。「決算公告」は官報や新聞広告、会社のホームページなどに掲載されます(左記のうちどれに掲載するか会社が決めることができます)。財務諸表と似た情報も多いですがボリューム自体は財務諸表とは比べ物にならない程簡素なものであり、必要な情報を簡潔にまとめています。

最後の確定申告書ですが、これは自社のものでなければ通常は見ることができません。国税庁のホームページやインターネット検索で確定申告書のフォーマットや解説しているサイトはたくさんあります。また、書籍もたくさんありますので興味のある方は探してみて下さい。

【補足】
上記以外にも会計ルールは存在します。例えば中小企業を対象とした会計ルール「中小企業の会計に関する基本要領」があります。

「中小企業の会計に関する基本要領」は、非上場企業である中小企業を対象とした会計ルールです。実務上の要請に応じて上場企業の会計ルールと比較してより簡便的な会計ルールとなっています。中小企業向けのスタンダードな会計ルールとなるよう、金融庁及び中小企業庁が中心となり、中小企業金融機関、税理士、公認会計士などと連携して普及活動を進めています。

「中小企業の会計に関する基本要領」は、中小企業庁、金融庁、日本商工会議所、及び企業会計基準委員会の各ホームページで資料を入手することができます。興味のある方は入手してみて下さい。


決算書作りは一大プロジェクト

実務的な話ですが、決算書を作成する時期は本当に忙しくて大変です。上場会社になると3種類全てを作る必要がある。日本の会社は3月決算が多いので、4月から6月にかけて、決算書に関係する部署や外部関係者は非常に忙しくなります。

通常、経理部が中心となって決算書を作成します。作成後、会社を代表して経営者の責任で、監査役や外部の監査法人、税理士等に提出し、チェックされます。間違いが見つかると修正しないといけない。また、修正するかどうかで経営者と監査法人(財務諸表、計算書類)、経営者と税理士(確定申告書)が揉めることももちろんあります。精神的にもタフな時期です。

しかし、このように一大プロジェクトであるからこそ、全て終わらせたときの達成感も非常に大きいものになります。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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