会計入門その5~資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月14日
資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
前回、「会計入門その4~資産と負債、純資産の関係」では、資産、負債、純資産とは何か、およびこれらの関係について説明しました。
今回から貸借対照表の区分(資産、負債、純資産)と勘定科目について解説していきます。今回は資産の区分(流動資産と固定資産)について解説します。また、資産科目のうち、受取手形、売掛金、有価証券について解説します。
<学習ポイント>
1.流動資産と固定資産
・正常循環基準
・一年基準
・判定の方法
2.受取手形
3.売掛金
4.有価証券

「流動資産」と「固定資産」
前回、「会計入門その4~資産と負債、純資産の関係」で、資産について次のように説明しました。
「お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービスがどれだけあるのか。」
上記の貸借対照表では資産の区分に表示される勘定科目が現金及び預金から貸倒引当金まで22種類掲載(会計上の用語で「表示」といいます。)されています。上記の貸借対照表では22種類ですが、あるサイトによると資産の科目だけで、60種類近くもありました。
会社によっては、代表的な科目では適切に取引を表現できないケースもあるでしょうから、その場合には適切な科目名称を考えて設定することもできます。そういったケースも含めると、勘定科目というものは「非常に多い」と感じます。
従って、この科目をもう少し別の視点から整理したいという要求が生じます。ではどういった視点から区分するのかというと、「流動資産」と「固定資産」に分けます。
具体的には次の2つの視点、「正常営業循環基準」と「一年基準」で区分します。
1.正常営業循環基準:会社の主目的たる営業取引によって発生する科目かどうか。
2.一年基準:貸借対照表作成日の翌日から数えて1年以内に現金として入金(回収)されるかどうか。
上記の2つの視点から考えて、どちらかに該当する場合には「流動資産」、両方とも該当しない場合には「固定資産」として区分されることとなります。
会社というものはビジネスを通じて利益を得ることが目的となります。従って、会社の事業目的である営業取引(モノ・サービスの製造・販売など)によって生じた取引(勘定科目)なのかどうか、という視点は言うまでもなく重要です。
また、会社に出資する投資家(株主)やお金を貸している金融機関、債権者にとっては、資産に計上されている科目が将来、現金として入金されるといってもどの位の予定なのか、1年後なのか10年後なのか、50年先なのか、といった情報は重要です。なぜならば、そのような情報があれば、会社に出資してもいいかどうか、貸したお金を返してもらえそうなのかどうか、といったことを判断することができるからです。
そして貸借対照表は年度単位で作成することが制度上求められるため、1年以内かどうかで区分する、ということになります。
「流動」と「固定」という言葉についてイメージできましたでしょうか。
流動資産か固定資産かどちらに区分するのかは、まず「1.正常営業循環基準」で判定します。1.でYesであれば、流動資産になります。
次に1.でNoであった科目について「2.一年基準」で判定し、Yesであれば流動資産、Noであれば固定資産に区分することとなります。
その他、資産の区分として固定資産をさらに区分したもの(有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産)があります。「会計入門その8~ 固定資産の区分」で解説していますのでよろしければご訪問ください。
※繰延資産は会計の入門として位置づけている当サイトでは説明しません。ご興味ある方は調べてみて下さい。
受取手形、売掛金、有価証券
それでは資産の勘定科目について解説していきます。上記の貸借対照表に表示されている勘定科目について説明していきます。
【受取手形と売掛金】
受取手形も売掛金(うりかけきんと読む)も、通常の営業取引で会社が扱っている製品やサービスをお客さんに販売したときに、現金ではなく、例えば1ヶ月後や2ヶ月後など、会社とお客さんとの契約によって決めた、将来のある時期に、お金を回収するといった場合に使用する勘定科目です。会社の主目的たる営業取引で使用する勘定科目であることから、正常営業循環基準で判定した結果、流動資産となります。
これら科目の金額は、製品やサービスを販売した場合に増加します。また、お金を回収して現金化された場合に減少します。ただし、お客さんが倒産等の理由でお金をもらえない可能性ももちろんあります(これを「貸し倒れ」といいます)。
手形は、銀行と会社との間で当座勘定取引契約を締結していないと発行(振出)することができず、また、売却(譲渡)しやすいといった性質から売掛金よりも安全性が高いといえます。
例えば、5ヶ月後に現金化される手形を受け取った場合、もう少し早く現金化したい時には銀行に持っていけば買い取ってもらうことができます。ただし5ヶ月後の回収日(満期)までの期間に応じて利息を取られますので、その分、回収できるお金は少なくなります(これを「割引」といいます)。
それに対して売掛金は、会社とお客さんとの間で取り交わした約束のみです。契約書や注文書で文書化している場合もあれば、中には口約束だけといったケースもあります。従って会社がお客さんに製品やサービスを販売するため契約する場合には、お客さんが払うだけのお金を持っているのかどうか、どの位払うことができるのかといった「信用調査」を行います。その結果に応じて、販売する金額の上限を設定することとなります(与信(よしん)設定といいます)。
※売掛金の経理財務手続や仕訳処理については「商業簿記入門その21~売掛金、買掛金の手続と仕訳処理」以降で解説しています。簿記を学習している方は是非ご訪問ください。
【有価証券】
有価証券とは、株式や国債、社債等のことです。そのうち、売買することを目的として保有しているものや、売買することを目的としてはいないが、1年以内に満期の到来する債券を「有価証券」として計上し、流動資産として区分します。それ以外の有価証券は別の科目で区分することとなります。
【補足】有価証券でありながら「有価証券」という科目に計上しないことがあるのでややこしいと思います。株式や国債、社債であれば全て有価証券として流動資産に区分して計上するわけではありません。間違えやすいのでご注意下さい。
会社は有価証券を様々な理由で保有します。例えば、資産運用上、頻繁に売買するために保有する場合もあれば、債券の満期まで保有するケース、取引先との関係を円滑にする等、事業遂行上の目的のため保有するケース、子会社化するため保有するケース、等、様々な保有目的が存在します。
このように有価証券を保有する目的は様々であるため、この保有目的に応じて勘定科目もいくつか用意しておき、保有目的に従って流動資産と固定資産に区分する、という考えになります。
どのような勘定科目があるのか、といいますと「有価証券、投資有価証券、関係会社株式、関係会社社債、出資金」といった勘定科目が存在します。
これらの勘定科目が流動資産と固定資産のどちらに分類されるのか、ですが、有価証券以外は固定資産に区分します(固定資産に表示する勘定科目については「会計入門その8~ 固定資産の区分」で解説しています)。
なぜこのような区分になるのか、ですが、一年基準で考えれば、日常的に売買を繰り返す目的(トレーディング目的)で保有している有価証券、および1年以内に満期が到来する債券が流動資産として区分することが相応しいからです。
これに対して、有価証券以外の勘定科目を考えてみた場合、例えば満期まで保有する目的で取得した債券は、1年以内に満期が到来する場合には一年基準で有価証券として流動資産となりますが、満期まで1年超である場合には同様に一年基準で考えて、固定資産の区分に表示します(勘定科目は投資有価証券)。また、事業遂行目的で保有する株式や子会社化を目的として保有する株式であれば、長期保有が想定されるため、1年基準により固定資産として表示されます。
※有価証券の経理財務手続や仕訳処理については「商業簿記入門その16~有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」以降で解説しています。簿記を学習している方は是非ご訪問ください。