会計入門その6~棚卸資産

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月16日

棚卸資産

前回、「会計入門その5~資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券」では、流動資産と固定資産の区分、および流動資産の科目について説明しました。

今回は、流動資産の表示科目のうち、棚卸資産全般についてです。

棚卸資産の種類と様々な表示科目が、会社の活動の中でどのように使用されるのかに着目して解説します。

<学習ポイント>
1.棚卸資産とは?
2.種類と表示科目
3.段階に応じた使い分け
 ・原材料、消耗品等の購入
 ・製造への投入
 ・完成
 ・出荷、販売


貸借対照表
棚卸資産の科目と関係

【商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品】

これらの表示科目は製造や仕入に関する科目です。
まとめて棚卸資産(たなおろししさん)といいます。年に1回や半年に1回、月末等、区切りのいい時に在庫をカウントすることを棚卸といい、この棚卸を行う対象となる資産であることからこのように呼びます。

棚卸資産は、製造や仕入の段階に応じて科目を使い分けます。

それではどのように棚卸資産の表示科目を使い分けるのでしょうか。

製造、仕入のプロセスと棚卸資産科目との関係

上図に基づいて説明します。


【自社で製造して販売するケース】
今回は衣服を製造して販売する会社でズボンを製造するケースを想定します。話を単純化するために生地と糸と針だけでズボンを製造するとし、また、労働者の作業やその他、製造するために間接的に発生するコスト(工場の地代家賃、水道光熱費、教育研修費等)は考慮しないこととします。

1.原材料、消耗品等の購入
ズボンを製造するためには原材料となる生地を購入する必要があります。ここでは生地を100で購入したとします。

また、生地を縫うために糸や針を合計で10購入します。これらはズボンの主な構成要素ではなく、補助的なものとなりますので、消耗品等ということとなり、貯蔵品として扱うこととなります。

但し生地と比較して金額が小額であり、年度末のたな卸しが煩雑なため、資産には計上せずに購入時に費用にするという選択もできる余地があります(この辺はケースバイケースです)。また、針ではなく、ミシンを使用する場合であれば固定資産として計上します(ただし、資産には計上せず、購入時に費用にするという選択もできる場合があります。実務上は金額も含めていくつかの判断基準に沿って検討し、固定資産に計上するのか、全て費用とするのかを決めることになります。)。

話を元に戻します。以上から、原材料及び貯蔵品は100+10=110となりました。この時点で貸借対照表を作成した場合には、左下の通りとなります。

B/S

2.製造に投入
この購入した生地と糸と針を製造に投入します。ここでは生地80、糸と針を5、投入したとします。
この時点で原材料及び貯蔵品110のうち、80+5=85が仕掛品になります。従って、原材料及び貯蔵品は110-85=25となります(右上図)。

3.製造中
ズボンを製造するため、これら生地を糸と針を使って縫っていきます(上の図で製造中のプロセスです)。この段階では、貸借対照表は上の右図から変化はありません。

4.完成
さて、製造の結果、85の仕掛品のうち、70(ズボン7本)が完成しました。この時点で、85の仕掛品のうち、70が完成品(製品)となりますので、貸借対照表は左下の通りです。

B/S

5.出荷、販売
完成したズボン7本のうち、5本をデパートや衣服屋さんに出荷し、販売したとします(いわゆる「卸売(おろしうり)」。これに対してこのデパートや衣服屋さんが最終消費者である個人のお客さんへ販売するのは「小売(こうり)」といいます)。

【補足】モノの出荷と納品・検品と書類について
出荷とは、ズボンを作った工場からトラックなどで販売先となるデパートや衣服屋さんまで運び届けることをいいます。運ぶ際にはズボンに「納品書」等を一緒に持っていきます。

ズボンがデパートや衣服屋さんに届くと、デパートや衣服屋さんはでズボンの本数を数えたり、品質をチェックする等、ズボンの検品(検収ともいいます)を行います。検品後、問題なければズボンという品を納めた(おさめた)ということで、ズボンを製造した会社は、「納品書」や、お金を後でもらうべく「請求書」をデパートや衣服屋さんに渡します(請求書は後日送付する場合もあります)。

この時点で販売が完了したこととなります。デパートや衣服屋さん側からは、検品(検収)した証として「検収書」といったものをズボンを製造した会社に渡す場合もあります(会社によっては納品書の控えにハンコをもらうケースなど実務的には様々なケースが存在します)。

話を元に戻しますと、ズボン5本を小売業者に販売しました。従って、金額で50(70÷7×5)を販売したことになります(ズボン1本=10)。

ちなみにこの10という金額は、ズボン1本を作るのにかかったお金です。完成品である製品を作るのにかかったお金のことを「原価」といいます。「ズボン1本当たりの原価は10だ」といった使い方をします。

この会社ではズボン1本を15で販売するとします。また、販売時には売掛金とし、1ヶ月後に現金を回収するとします。

以上の結果、出荷、販売した時の貸借対照表は右上図のようになります。同時に損益計算書も掲載してみましたのでご参考ください。

売掛金は15×5=75です。売上高も同額になります。また、商品及び製品が50減少して、同額を売上原価に計上します(損益計算書については後日、説明していく予定です)。

6.現金の回収
販売後、1ヶ月が経過しデパートや衣服屋さんから無事、お金を銀行の預金口座に振り込んでもらうことができました。
この時の貸借対照表は次の通りとなります(損益計算書は変化なし)。

B/S

【自社で製造して販売するケース】
次に、商品を仕入れて販売するケースですが、自社で製造する場合のうち、製造する部分を除けばいいので説明は割愛させて頂きます。

※製造業の会計(工業簿記)については、「原価計算入門(実務に役立つ原価計算入門サイト)~簿記資格の学習を支援」で詳しく解説しています。衣服メーカーを例に、簿記資格の学習に役立つよう、仕訳により重点を置いた解説をしていますので、よろしければご訪問ください。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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