会計入門 棚卸資産

更新日:2019年7月9日
作成日:2012年4月16日

前回、「会計入門その5~資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券」では、流動資産と固定資産の区分、および流動資産の科目について説明しました。

今回は、流動資産の表示科目のうち、棚卸資産全般についてです。

棚卸資産の種類と様々な表示科目が、会社の活動の中でどのように使用されるのかに着目して解説します。

棚卸資産の科目と関係

棚卸資産の表示科目は次の通りです。

  • ・商品及び製品
  • ・仕掛品
  • ・原材料及び貯蔵品

まとめて棚卸資産(たなおろししさん)といいます。

年に1回や半年に1回、月末等、区切りのいい時に在庫をカウントすることを棚卸といい、この棚卸を行う対象となる資産であることからこのように呼びます。

棚卸資産は、製造や仕入の段階に応じて科目を使い分けます。

次に、棚卸資産の表示科目を使い分ける方法について説明します。

上の図に基づいて説明します。

ケース1:自社で製造して販売するケース

衣服の製造・販売を行う会社で、ズボンを製造するケースを例にして説明します。

話を単純化するために布地と糸と針だけでズボンを製造するとし、また、労働者の作業やその他、製造するために間接的に発生するコスト(工場の地代家賃、水道光熱費、教育研修費等)は考慮しないこととします。

1.原材料、消耗品等の購入

ズボンを製造するために原材料となる布地を購入します。今回は布地を100で購入したとします。

また、布地を縫うために糸や針を合計で10購入します。

これらはズボンの主な構成要素ではなく補助的なものとなりますので、消耗品等ということとなり、貯蔵品として扱います。

但し、布地と比較して金額が小額であり、年度末のたな卸しが煩雑なため、資産には計上せずに購入時に費用にするという選択もできる余地があります(この辺はケースバイケースです)。

また、針ではなくミシンを使用する場合であれば固定資産として計上します(ただし、資産には計上せず、購入時に費用にするという選択もできる場合があります。実務上は金額も含めていくつかの判断基準に沿って検討し、固定資産に計上するのか、全て費用とするのかを決めます)。

話を元に戻します。以上から、原材料及び貯蔵品は100+10=110となりました。

この時点で貸借対照表を作成した場合には、左下の通りとなります。

2.製造に投入

この購入した原材料及び貯蔵品のうち、布地80、糸と針を5、製造に投入しました。

この時に原材料及び貯蔵品110のうち、80+5=85が仕掛品になります。

従って、原材料及び貯蔵品は110-85=25となります(右上図)。

3.製造中

ズボンを製造するため、これら布地を糸と針を使って縫っていきます(上の図で製造中のプロセスです)。

この段階では、貸借対照表は上の右図から変化はありません。

4.完成

製造の結果、85の仕掛品のうち、70(ズボン7本)が完成しました。

この時点で、85の仕掛品のうち、70が完成品(製品)となりますので、貸借対照表は左下の通りです。

5.出荷、販売

完成したズボン7本のうち、5本をデパートや衣服屋さんに出荷し、販売したとします。

いわゆる「卸売(おろしうり)」と呼ばれる販売形態です。

これに対して、このデパートや衣服屋さんが最終消費者である個人のお客さんへ販売するのは「小売(こうり)」といいます。

【補足】モノの出荷と納品・検品と書類について

出荷とは、ズボンを作った工場からトラックなどで販売先となるデパートや衣服屋さんまで運び届けることをいいます。運ぶ際にはズボンと一緒に「納品書(のうひんしょ)」を持っていきます。

ズボンがデパートや衣服屋さんに届くと、デパートや衣服屋さんはでズボンの本数を数えたり、品質をチェックする等、ズボンの検品(検収ともいいます)を行います。検品後、問題なければズボンという品物を納めたということで、ズボンを製造した会社は、「納品書」や、お金を後でもらうべく「請求書」をデパートや衣服屋さんに渡します(請求書は後日送付する場合もあります)。

この時点で販売が完了したことになります。デパートや衣服屋さん側からは、検品(検収)した証として「検収書(けんしゅうしょ)」をズボンを製造した会社に渡す場合もあります(会社によっては納品書の控えにハンコをもらうケースなど実務的には様々なケースが存在します)。

話を元に戻しますと、ズボン5本を小売業者に販売しました。

従って、金額で50(70÷7×5)を販売したことになります(ズボン1本=10)。

ちなみにこの10という金額は、ズボン1本を作るのにかかったお金です。完成品である製品を作るのにかかったお金のことを「原価(げんか)」といいます。「ズボン1本当たりの原価は10だ」といった使い方をします。

この会社ではズボン1本を15で販売するとします。また、販売時には売掛金とし、1ヶ月後に現金を回収するとします。

以上の結果、出荷、販売した時の貸借対照表は右上図のようになります。同時に損益計算書も掲載してみましたのでご参考ください。

売掛金は15×5=75です。売上高も同額になります。

また、商品及び製品が50減少して、同額を売上原価に計上します(損益計算書については後日、説明していく予定です)。

6.現金の回収

販売後、1ヶ月が経過しデパートや衣服屋さんから無事、お金を銀行の預金口座に振り込んでもらうことができました。

この時の貸借対照表は次の通りとなります(損益計算書は変化なし)。

ケース2:自社で製造して販売するケース

次に、商品を仕入れて販売するケースですが、自社で製造する場合のうち製造する部分が存在しないケースをお考え頂くだけです。

つまり、上記【ケース1:自社で製造して販売するケース】の説明のうち、<1.原材料、消耗品等の購入>から<4.完成>の部分を自社ではなく、外部の製造メーカーが行っており、自社は、その外部メーカーからズボンを仕入れいている、というケースを想定すればいい、ということです。

従って、一番最初の段階で<商品の仕入れ>という営業活動プロセスが存在し、その後、<出荷、販売待ち>を経て<5.出荷、販売>というプロセスに達し、<6.現金の回収>に進みます。

自社でズボンを製造しない分、原材料、消耗品等を購入しないため在庫になりませんし、製造のための工場や労働者も必要ありません。

一方で、そのような製造を行ったメーカーから商品としてズボンを仕入れるため、製造するよりもズボン1本当たりの(売上)原価が高くなります。

必然的に販売する際の価格(販売価格)を高く設定することになります。

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