会計入門その7~未収入金と経過勘定(前払費用)

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月18日

未収入金と経過勘定(前払費用)

前回、「会計入門その6~ 棚卸資産」では、棚卸資産について説明しました。今回は、未収入金と経過勘定(前払費用)について解説します。

特に前払費用の定義は難しいので、例を使って一つ一つ説明していきます。

<学習ポイント>
1.未収入金
2.経過勘定
3.前払費用
 ・要件
 ・表示科目の使用例
 ・資産の理由
 ・流動と固定の判定


貸借対照表
未収入金と経過勘定(前払費用)

【未収入金】
未収入金(みしゅうにゅうきん)とは、その名の通り未だ現金を回収していない場合に使用する科目です。

これまでに習った科目で同じような科目がありましたが、何だったか覚えていますか?

答えは売掛金と受取手形です(「その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券」を参照)。これらの科目も将来、現金を回収する約束をした時に使用する科目です。

ただし売掛金や受取手形は、営業取引、すなわち会社が行っている事業でモノやサービスを販売した時に使用する科目です。

それに対して未収入金は、営業取引以外の取引でモノやサービスを売却した時に使用します

代表的な取引としては会社が保有している固定資産(建物、土地、自家用車など)や株式などを売却する場合に使用します。

これらの取引は会社が事業として行っている取引ではありません。もちろん建築会社や不動産会社さん、中古車販売事業などを営む会社などは、会社の事業で建物や土地、自動車を販売しているので、この場合は売掛金や受取手形を使用します。ただし、例えば建築会社であったとしても、その会社が保有する本社ビルを売却する、といった場合には未収入金を使用します。同様に中古車販売会社の経営者が、仕事で使用している自動車を売却する、という場合も未収入金を使用します。

【流動資産となる条件】
未収入金は、上記の通り、会社が事業として行う取引には使用しません。すなわち、正常営業循環基準では、流動資産には該当しません。

そこで一年基準で考え、貸借対照表日(3月決算であれば、3月31日)の翌日(4月1日)から数えて回収までに1年以内であれば、流動資産、1年超を要する場合には固定資産として表示することになります(例えば、長期未収入金として表示します)。


【経過勘定】
次に経過勘定について説明します。経過勘定と呼ばれる科目は4種類あります。それは、

前払費用(まえばらいひよう)
前受収益(まえうけしゅうえき)
未払費用(みばらいひよう)
未収収益(みしゅうしゅうえき)

です。前払費用と未収収益は流動資産、前受収益と未払費用は流動負債です。さらに固定資産、固定負債としての表示科目として、長期前払費用、長期前受収益、長期未収収益、長期未払費用という科目も存在します。

これらの経過勘定のうち、実務上よく登場する科目として、前払費用を解説します。

【前払費用】
前払費用には、企業会計原則という会計基準の中に定義があります。

前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。

代表的な取引として例えば、賃貸借契約があります。イメージしやすいのは、マンションやアパートなんかを借りる契約だと思います(もちろん一軒家でもいいのですが)。

賃貸借契約は、家賃1ヶ月分を前払いする契約が多いと思います。

この賃貸借契約について、本社ビルの賃貸借契約を例として、上述の定義に照らし合わせてみると、次の通り当てはめることができます。

一定の契約に従い」⇒会社の本社ビルを借りる賃貸借契約を家主さん(不動産会社)と締結する。
サービスの提供を継続的に受け」⇒本社ビルを移転しない限りは継続的に借りる。建物を使用する、というサービスを継続して受ける。
いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価」⇒家賃は1ヶ月分を前払いする。

以上から定義に当てはまるため、前払費用に該当することになります。

例えば、家賃が月10万円で4月分の家賃を3月に支払った場合、3月31日時点の貸借対照表では、前払費用10万円となります。


【前払費用が資産である理由】
前回、「会計入門その4~ 資産と負債、純資産の関係」で、資産を次のように説明しました。

資産:お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノ・サービスがどれだけあるのか。

前払費用は、将来、現金は入ってきません。それなのに、なぜ資産の科目になるのでしょうか?

それは、現金は入ってきませんが、現金を前払いしているため、将来、現金を支払わずにサービスを受けることができるからです。会計用語で経済的価値があるから、といいます。上述の資産の説明でいえば、「将来・・・提供を受ける・・・モノ・サービス」という部分に該当します。

先ほどの例で説明すると、「3月31日時点では、4月分の家賃はもう払わなくていい⇒お金を払わないで10万円分のサービスを受けることができる。」ということです。

以上から、前払費用は資産の科目として取り扱います。

【流動資産となる条件】
一年基準で考えます(「会計入門その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券」参照)。すなわち、

貸借対照表日の翌日から数えて、
1年以内に受けるサービス⇒流動資産
1年を超えて受けるサービス⇒固定資産

となります。先ほどの例でいえば、4月分=3月31日時点では翌月分であるため、流動資産の区分として前払費用で10万円を計上します。

しかし例えば、16ヶ月分を前払いする場合には、12ヶ月分の120万円を流動資産の区分として前払費用で計上し、残りの4ヶ月分である40万円を固定資産の区分として長期前払費用で計上することになります。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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