会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却
更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月22日
固定資産の資産計上と減価償却
前回、「会計入門その8~固定資産の区分」では、固定資産の区分について解説しました。
今回は、固定資産が資産として計上される理由やその評価額、および減価償却について解説します。
※固定資産の仕訳処理については「商業簿記入門~2級、3級の資格学習を支援」の下記ページにて解説していますのでこちらをご参照ください。
・商業簿記入門その54~有形固定資産の取得と仕訳処理
・商業簿記入門その55~有形固定資産の売却と仕訳処理
・商業簿記入門その56~有形固定資産の減価償却と仕訳処理
<学習ポイント>
1.資産である理由
・2つの考え方
2.評価と減価償却
・取得(計上)
・減価償却の方法
3.取得原価主義
4.減価償却資産

固定資産が資産である理由
「会計入門その4~資産と負債、純資産の関係」では、資産について次の通り説明しました。
お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービスがどれだけあるのか。
この説明に当てはめて固定資産を考えてみます。
1つの考え方として、固定資産自体を売却することができるので、将来現金として入金されそうだ、という考え方ができます。
①換金価値があるからといった言い方をします。
もう1つの考え方として、会社は固定資産を利用することで、モノやサービスを製造・販売している。その結果、売上・利益を出してお金を儲けている。従って将来、入金されるであろう現金の獲得に貢献しているから資産である、という考え方があります。
こちらは②売上利益の稼得に貢献するからから、という考え方です。
固定資産の計上(評価)と減価償却
これで固定資産が資産である理由は分かりました。
次に固定資産の評価、すなわち「いくらで会計処理するのか?」を考えていきましょう。
例えば、受取手形や売掛金は、モノ・サービスの販売額がそのまま資産として計上する金額になるので分かりやすいと思います。将来現金として入金されそうな金額であり、資産の説明をそのまま当てはめて考えることができます。厳密には貸倒引当金の存在も考えなければなりませんが、イメージはしやすいでしょう。
※貸倒引当金は、「会計入門その12~貸倒引当金」で解説しています。よろしければご訪問ください。
ここでは、固定資産の評価について、上述した2つの理由から考えてみたいと思います。
【補足】
固定資産を資産計上する理由について、考え方を紹介しています。現状の我が国の会計制度(会計基準)については「会計入門その11~固定資産と減損会計」で、まとめていますので、よろしければご訪問ください。
【②売上利益の稼得に貢献の視点で固定資産の評価を考えた場合】
最初に②売上利益の稼得に貢献の視点から考えてみたいと思います。
例えば、会社の本社ビルがあります。会社はこの本社ビルを1億円で購入したとします。
その後、会社はこの本社ビルでモノやサービスを開発・製造・販売、管理といったように事業活動のために使用してきました。その結果、売上・利益を継続的に稼得することができています。
このような場合、本社ビル(表示科目では建物)は貸借対照表にいくらで計上すればいいと思いますか?
上述の通り、確かに本社ビルは会社の売上・利益に貢献しており、経済的価値はあるといえそうです。資産=将来に向けて経済的価値がある、となります。
それでは、この「経済的価値」とはいくらになるでしょう。100万円?1,000万円?1億円?それとも10億円?
人によって様々な回答が予想できます。従って、会社によって資産に計上する建物の金額に対する考え方にバラツキが出てしまうことになり、例えば、同じ1億円で購入したとしてもA社とB社とで貸借対照表に計上する建物の金額が違ってしまうことになります。
しかし、当初の決算書を作る目的から考えてみると非常によくないことになります。なぜならば、「会計入門その2~なぜ決算書を作成するのか?」で説明した通り、投資家が会社に投資するかどうかの判断資料として決算書を利用するからです。
その投資判断の際に、同じルールで決算書が作成されていなければ、A社とB社、どちらに投資したらいいのかが分かりません。
【減価償却】
そこで、人によってバラツキがあるならばルール化しましょう、となります。具体的には建物は次のように資産計上します。
1.固定資産を取得した時:購入した金額で計上
2.固定資産の使用を開始してから:ある一定のルールに基づいて算定した金額を、1の金額から差し引いて計上
2.の「一定のルールに基づいて1.の金額から差し引く金額を算定すること」を減価償却といいます。
減価償却:長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続き
さて、上記のルールで本社ビルの資産計上額を算定してみましょう。まずは1.本社ビルを購入した時です。1億円で購入したわけですから、この時点で貸借対照表を作成した場合には1.の通り、「建物 1億円」となります。千円単位で計上する場合には、「建物 100,000(千円)」です。
【補足】
購入額で評価(計上)する考えを「取得原価主義」といいます。一方で時価など、その時点での市場価格で評価する考え方を「時価主義」といいます。
次に2.です。本社ビルの使用を開始して決算を迎えた時に、1.で計上した金額(1億円)から差し引く金額を減価償却で算定した結果、2百万円になったとします。
従って、決算時に貸借対照表に計上する金額は、1億円-2百万円=9,800万円となるため、「建物 9,800万円」、千円単位であれば、「建物 98,000(千円)」と表示します。本社ビルを使った分、時の経過に応じて、将来の経済的価値も目減りしたということです。
【補足】
具体的な減価償却の方法としては定額法、定率法など様々な方法があります。我が国の会計慣行では、通常は法人税法に基づいて減価償却を計算します。
【減価償却資産】
このように固定資産の計上額には、減価償却を行います。減価償却の対象となる資産を減価償却資産といいます。減価償却資産には次のようなものがあります。
有形固定資産:建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具、器具備品など
無形固定資産:ソフトウェア、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、のれんなど
有形固定資産である土地や、投資その他の資産に区分される科目は減価償却資産には該当しません。なぜならば、これらの資産は時の経過に応じて使用した分、経済的価値を減少させるという考え方にはそぐわないと考えるからです。
この点については、冒頭に説明しました固定資産が資産である理由のうち、①換金価値があるから、という理由で説明します。「その10~固定資産と時価主義」をご参照ください。