会計入門その10~固定資産と時価主義

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年4月23日

固定資産と時価主義

前回、「会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却」では、固定資産の資産計上や減価償却について解説しました。

今回は、前回の続きと時価主義について解説します。

前回は「経済価値があるから」という理由から、固定資産の計上額を考えました。

今回は「換金価値があるから」という理由から説明します。

<学習ポイント>
1.固定資産の計上
 ・「換金価値」の視点
 ・減価償却資産と経済価値の関係
2.(参考)株価算定の難しさ


貸借対照表
時価と固定資産の計上額

前回は固定資産が資産となる理由について次の2つについて説明しました。

①換金価値があるから:固定資産自体を売却することができるので、将来現金として入金される可能性が高い。
②経済的価値があるから:売上・利益の稼得に貢献し、結果として、将来、入金されるであろう現金の獲得に貢献している。

前回、「会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却」では、②経済的価値があるから の視点から固定資産の計上(評価)について解説しました。

今回はもう1つの視点、①換金価値があるから、の視点から固定資産の資産計上について説明します。

【補足】
固定資産を資産計上する理由について、考え方を紹介しています。現状の我が国の会計制度については「会計入門その11~固定資産と減損会計」で、まとめていますので、よろしければご訪問ください。


減価償却資産と経済的価値との関係(前回のおさらい)

前回の説明で、減価償却資産の対象になるものとならないものを説明しました。

減価償却資産の対象となる資産は、減価償却によって時の経過に応じて使用した分、資産計上額が減少します。

建物や機械、ソフトウェアなど減価償却資産は、売上・利益の稼得に貢献しています。しかし、棚卸資産のように直接貢献しているわけではなく、どの売上にどの程度貢献したのかを把握することは困難です。

従って、「一定のルールに基づいて各会計期間に費用配分しましょう」ということにしたものが減価償却です。

このように減価償却資産では、上述②経済的価値があるから、の視点によって資産計上(評価)について考えることができます。

時価主義と換金価値との関係から資産計上を考える】

では、減価償却資産の対象とならない土地や有価証券などの減価償却資産の対象にならない資産は、減少しないと思いますか?

その答えは、上述①固定資産は換金価値があるので資産である、という視点で固定資産の資産計上を考えることで理解することができます。

例えば、上場企業の株式(有価証券)を1億円で購入したとします。その後、決算を迎えた時点で、貸借対照表に計上する土地の金額がいくらになるか、ということを考えてみます。

上場企業の株式には株式市場があり、毎日の時価が分かります。例えば決算日の株価が9,000万円だとします。会社が保有している株式が決算日には9,000万円で売れるということです。

一方で、資産に計上するのは、「将来に」入ってくる現金です。この言葉をそのまま当てはめれば、会社が将来、株式をお金に換金しようと考えている時の株価で資産計上することになります。

例えば、会社が「当社は2年後に株価を売却する」と考えているならば、2年後の時価を予測して資産計上する、ということです。

しかし、そのようなことは未来である限り不可能です。従って、資産計上の説明をそのまま、有価証券に当てはめてしまうと「なんでもアリ」になってしまいます。将来は誰にも分からないのだから100億円と言ってもいいし1兆円といってもいい。これでは、会社外部の投資家や債権者などの判断に役に立つ決算書には程遠いものになることは明らかです。

そこで減価償却資産の減価償却と同じようにルール化することになります。具体的には次の通りです。

1.固定資産を取得した時:購入時の金額で計上(取得原価主義。前回説明しました)
2.決算時:決算日の時価で計上(時価主義といいます)

従って、今回の例では、決算日に貸借対照表を作成した場合には9,000万円(千円単位であれば、90,000(千円))が答えになります。


(参考)株価の算定は難しい

(株価の算定について実務的な手続きを含めて説明しています。入門の枠を超えた内容となっております。ご興味ある方はお読みください)

株価の算定について、その時の時価を使用しますが、時価とは何でしょうか?

「企業会計基準第10号 金融商品に関する会計基準」という基準に次の定義があります。

時価:時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(以下「市場価格」という)に基づく価額をいう。市場価格がない場合には合理的に算定された価額を公正な評価額とする。

上場企業の株式については株式市場が存在するため、上述の定義のうち、市場価格が存在します。証券取引所等の株価がインターネットでも入手できるので株価の算定は簡単です。

一方で、市場価格が存在しない場合もあります。例えば、上場していない会社の株式が代表的なものです。

市場価格が存在しない場合には、上述の時価の定義の通り、「合理的に算定された価額」を求めるのが原則的な取り扱いですが、未上場の株式のように市場価格が存在しない株式は、たとえ合理的に算定可能であったとしても、算定は行わず、「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」として例外的に取り扱うことになります(会計制度委員会報告第14号 金融商品会計に関する実務指針 第63項)。

それでは、未上場株式は株価算定を行う機会がないかといえば、そんなことはありません。未上場株式であっても株式譲渡を行うこともあります。また、ベンチャーキャピタル(VC)などから、新株発行による資金調達を受ける場合には、株価算定を行うことになります。

どうするのかというと、株価算定を行う会社の決算書や事業計画、また類似した事業を行っている会社で上場している会社のデータなどを使用して、検討していくことになります(例えば、DCF法や類似会社批准方式などが存在します)。

上場企業のように市場価格が存在しないため、株価の算定はなかなか困難です。

事業計画を作成していない場合もあれば、決算書についても発生主義会計に基づき作成されているかどうかや、粉飾がないかどうかといったことが判然としない場合もあります。

この場合には事業計画を策定しないとなりませんし、決算書についても過去に遡って調べてみる必要があるでしょう。

さらに外資系企業であれば、外国の会計基準で決算書を作成していますし、また、外貨建てで決算書が作成されているため、外国為替相場のデータを使用して円建てに換算した決算書を作り直さないといけないといったことも出てくるので面倒な作業が生じます。

また、仮に、株価を算定するために必要なデータが全て揃ったとしても、検討方法には様々な方法があり、また人によって様々な考え方ができるので、株価を算定するといっても結果として出てくる価額の答えは1つではないのが実情です。

そのため、「キッチリ」した金額を出すというよりも、計算の仮定について、合理的に会社外部に対しても説明でき、算定の結果として出てくる価額が妥当な範囲内にあるかどうか、という考え方が重要になります。

株価算定サービスを提供する会社も増えてきましたが、市場価格が存在しない株価の算定には、どうしても上述のような困難さが伴います。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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