会計入門その18~資本金と資本準備金

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月4日

資本金と資本準備金

前回、「会計入門その18~ 資本金と資本準備金」では、純資産について解説しました。

今回は純資産の科目のうち、資本金と資本準備金について解説していきます。

特に資本金が会社活動上で重要な役割を果たす理由や、資本準備金の活用場面について言及しながら解説します。

<学習ポイント>
1.会社の設立
2.資本金
 ・重要である理由
3.資本準備金
 ・存在する理由
 ・欠損填補(けっそんてんぽ)


貸借対照表
会社の設立

資本金や資本準備金が増減する取引はいくつか存在しますが、代表的な増加の取引は会社設立です。

例えば、会社を設立するにあたって経営者は数人の知人から出資してもらい株主になってもらいました。結果として合計1千万円のお金を集めることができました。

この時の貸借対照表は次の通りとなります。

会社設立時のBalance Sheet

この時点で現金及び預金に1千万円を計上すると同時に資本金資本準備金が増加します。


資本金

「資本金」は皆さんも聞いたことのある言葉だと思います。例えば、会社のホームページを見ると、会社概要のところに資本金の額が記載されている場合もあります。

資本金は会社に出資してもらった時に使用する科目です。この科目を見れば、会社がどれだけ株主(=会社の所有者)からお金を預っているかが分かります。

従って重要な科目ということが分かると思います。なぜならば、会社設立時には会社はまだ実質的なビジネス活動は行っていないため、当然、売上や利益が計上されているわけではなく、取引先もいないからです。

従って、外部の人間からすると信用していい会社かどうかは分かりません。

それではどこを見るかというと、「会社にどれだけの元手があるか」が分かる資本金の額です。もちろん資本金だけを見ているわけではありませんが重要な指標になります。

会社設立時点では、この資本金がお金として現金及び預金で計上されていますが、今後ビジネス活動を通じて別の資産、例えば棚卸資産や建物、工具器具備品等に形を変えていくことになります。

しかし、どんな形であれ、重要なのは資本金の額に見合った資産が会社にあるかどうか、ということです。

いったん出資してもらったからには、簡単に資本金の額を減少させることはできません。減少させることができないということは、会社は少なくとも同額の資産を保有していなければならないということです。

例えば現在5百万円の資本金を2百万円に減少させ、減少した3百万円は自分のふところに入れてしまう、といったことを防がないといけません。なぜならば、資本金の額を見て安心して会社と取引している外部の人間(特に会社債権者)を保護する必要があるからです。

以上から、会社への出資については会社法で厳格な手続が定められています。手続が厳格であるため出資が完了するまでに数ヶ月もかかってしまうことは珍しくなく、手続も煩雑ですが、このような理由があるからです。


資本準備金

さて、以上の通り、出資は債権者保護のため、資本金として厳格な手続が求められますが、今回の例では出資は1千万円であるにも関わらず、なぜ資本金は1千万円ではなく5百万円なのでしょうか。

確かに会社債権者を保護するのであれば全額資本金に計上すべきかもしれません。

一方で資本金を減少させる合理的な理由がある場合には、もう少し拘束力の弱い「資本金に準じた科目」があると手続的にも比較的スムーズに進みます。こういったケースに対応するために「資本準備金」という科目があります。

資本準備金は資本金よりも柔軟に使用することのできる科目です(といっても自分のふところに入れることができるわけではもちろんありません)。

出資のうち2分の1までを資本準備金にしてもいいという会社法上のルールがあります。これに習って上のケースでも1千万円のうち、5百万円を資本準備金に計上しています。実務でも通常は2分の1を資本準備金に計上します。

ではどういった場合に、より柔軟に使用できるかというと、例えば、欠損填補(けっそんてんぽ)があります。次の2つの貸借対照表をご覧下さい。

欠損填補時のBalance Sheet

上の貸借対照表ですが、繰越利益剰余金がマイナス150万円となっています。繰越利益剰余金とは、「これまでのビジネス活動を通じて決算を経てきた結果、累積した損益であり、会社が累積して儲かっているのかどうか」、ということが分かります。

今回のケースでは赤字が累積し、繰越利益剰余金がマイナスとなりました。これを繰越欠損(くりこしけっそん)といいます。

このままですと見栄えがよくありません。また繰越剰余金がマイナスになっていると、「今期の決算では黒字だったのにまだ累積では赤字なのか」といったことにもなり、新たな気持ちでビジネスを進めるモチベーションも下がってしまいます。

そこで、この欠損を資本準備金と相殺させることで欠損填補することが会社法上のルールとして認められています。具体的には株主総会で普通決議の承認を得ることになります(株式数による多数決。人数による多数決ではありません)。

決議の結果、矢印の下の貸借対照表となり、繰越利益剰余金がゼロになりました。併せて資本準備金も5百万円から350万円に減少しています。

これで見栄えは一応良くなりました。ただし、株主から預っているお金を減らすという決断を下すことになりますし、今後の会社の事業でこの赤字を取り戻すことはできないので減少するのか、という見方もする人もいるでしょう。実務では軽々しく資本準備金の減少はできるはずがありません。慎重に会社内で検討する必要があります。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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