会計入門その19~資本取引・損益取引区分の原則

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月6日

資本取引・損益取引区分の原則

前回、「会計入門その18~資本金と資本準備金」では、資本金と資本準備金について説明しました。

今回は、利益準備金と資本取引・損益取引区分の原則について説明していきます。

利益準備金がなぜ存在するのかについて解説します。

次に資本取引・損益取引区分の原則について、両者を区別する理由に焦点を当てて解説していきます。

<学習ポイント>
1.利益準備金
 ・存在する理由
2.資本取引・損益取引区分の原則
 ・定義
 ・趣旨(用語の存在理由)


貸借対照表
利益準備金

利益準備金とは、その名の通り「利益の準備金」すなわち儲けに対する準備金をいいます。

例えば、会社に儲けが出たので、株主に還元するために配当を行うとします。

ここで、配当を行うこと自体は別に構わないのですが、安易に配当してしまうと、会社財産が外部に流出してしまい、その結果、会社債権者がお金を回収できない、といったことが生じるケースがあります。

例えば、これまでの累積の儲け(前回「、会計入門その18~資本金と資本準備金」で説明した繰越利益剰余金)が100あったとして、そのうち80を株主に配当しました。その後、売掛金が50回収不能になってしまった結果、次の決算では繰越利益剰余金がマイナス30(100-80-50)になってしまった、というケースです。

結果としてこの会社の債権者はお金を回収できなくなってしまうといった、困った事態となってしまいました。

このように、いくら繰越利益剰余金があるといっても、将来のことは分かりませんので、余りにも多くのお金を配当として流出させてしまうと、後々、会社債権者がお金を回収できないといったことになるかもしれません。

そこで会社財産が安易に社外に流出しないようにし、会社債権者を保護するため、会社法会社計算規則で次のルールが定められました。

・配当をした場合、配当した金額の10分の1を資本準備金又は利益準備金として積み立てなければならない。
・上記の金額は資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1となるまで積み立てることとする。

以上から、利益準備金とは、配当による会社財産の流出によって会社債権者が害されることを保護するために設定する科目ということができます。


資本取引・損益取引区分の原則

さて、これまでの説明で、純資産の科目には大きく2つの取引に区別することができることが分かります。

1.資本取引:出資してもらったお金に関する区分・科目
⇒資本金、資本剰余金(資本準備金、その他)

2.損益取引:出資してもらったお金をビジネス活動に投資した結果、得られた儲け(または赤字)に関する区分・科目
⇒利益剰余金(利益準備金、繰越利益剰余金その他)

この2つの取引は、性質的に異なるため、この2つの取引を区別して使い分ける必要があります。これを資本取引・損益取引区分の原則といいます。企業会計原則にも次の通り定められています。

資本取引と損益取引を明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金を混同してはならない。

例えば、繰越利益剰余金は儲け、すなわち損益計算書に関連する科目であるため、この科目を資本取引と混同して使用してしまうと、適正な損益計算ができなくなってしまい会社の実体を反映しないことになってしまいます。従ってこの2つの取引は区別して使い分けしないといけません。


戻る | 次へ





記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


  • 【運営者情報・免責事項】



    関連リンク

    商業簿記入門
    ~2級、3級の資格学習を支援

    サイト管理者の経験も交えて実務的な視点で解説。「実務に役立つシリーズ」第3弾!!

    原価計算入門
    ~簿記資格の学習を支援

    衣服メーカーを例に分かりやすく解説。「実務に役立つシリーズ」第2弾!!

    会計ヘッジ
    将来リスクを回避するためのサイト

    会計、簿記、経理、税務、起業など、トピックやトレンドも含め、様々な情報を配信

    個人事業主の開業手続に必要な書類(所得税、社会保険、消費税など)

    個人事業主として開業するためには、法人ほど厳格な手続きは必要ありません。しかし、税務や社会保険に関する所定の手続きは存在します。ビジネスの最初のステップであり、誰もが・・・

    個人事業主が開業前支出を必要経費として所得税確定申告する方法(範囲と仕訳)

    個人事業主として事業を開始するためには開業手続きを行う必要があります。具体的には開業届けを税務署に届け出ることで事業開始の日付を定めます。しかし、開業する前の準備のために・・・

    個人事業主とフリーランスの納税地の選び方と引っ越し時の手続き

    個人事業主やフリーランスは毎年、所得税の確定申告を行いますが、その際に提出先となる所轄の税務署を決めるのが「納税地」です。ここでは、納税地の選び方と・・・

    商業簿記入門その30~商品券と他店商品券の仕訳処理(3級)

    商品券とは、現金の代わりに使用することができる、券面に記載された金額の商品と交換することができる権利を表す有価証券をいいます・・・

    原価計算入門その26~個別原価計算(製品別計算、原価計算表)

    【製品別計算(個別原価計算)】今回は設例を用いて解説します。【設例】衣服メーカーは、個別原価計算を採用している。今月の原価計算の状況と必要なデータは次の通り。・・・