会計入門その20~貸借対照表の分析

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月13日

貸借対照表の分析

前回、「会計入門その19~資本取引・損益取引区分の原則」では、利益準備金と資本取引・損益取引区分の原則について説明しました。

今回は、貸借対照表のまとめとして業種別・規模別に貸借対照表を分析します。

最初に貸借対照表を分析するためのポイントをまとめました。

そして、2つの架空の会社を例として掲げ、具体的に貸借対照表の分析の仕方を解説しています。


貸借対照表
貸借対照表の分析のポイント

これまで、貸借対照表の科目を中心に説明してきました。これで貸借対照表について大体理解できるようになったと思います。

今後は実際の貸借対照表を見て経験を積んでいけば読めるようになります。そこで、実際に貸借対照表を見るときのポイントをまとめてみました。

1.対象となる会社の貸借対照表について数年分の貸借対照表を比較する。
最近の貸借対照表だけではなく、過去数年分の貸借対照表も見て、推移を比較します。資産、負債、純資産といった部毎の比較、流動資産、固定資産、有形固定資産といった区分毎の比較、科目別の比較をしてみると会社の財政状態の大枠を把握することができます。

2.規模別・業種別に比較する。
対象となる会社とは別の規模・業種の会社と、貸借対照表を比較することで、対象となる会社の属する規模・業種の特徴が浮き彫りになります。

3.ライバル会社と比較する。
ライバル会社の貸借対照表を入手して自社と比較してみると自社の強みや課題が浮き彫りになります。

貸借対照表を分析してみよう(機器メーカー)

それでは、貸借対照表を2つ、簡単に説明します。まずは機器の製造・販売を事業としている1部上場の大企業を想定して作成した貸借対照表です(架空の会社)。

貸借対照表(機器の製造販売)

1部上場の大企業だけあり、金額が大きい。資産合計が「3,381,759」。単位が百万円なので3兆3,817億円です。

繰越利益剰余金が1兆868億円。一方で資本金が3,261億円、資本準備金が1,630億円であり、株主から預ったお金は4,891億円(欠損填補していないことを前提)。実際には配当等、社外流出している部分もありますが、事業を始めてからこれまでに設けたお金は株主から預ったお金の倍以上となっています。

その他、機器を製造するために固定資産、特に機械装置が2,148億円計上されています。いわゆるメーカーの特徴です(デパートなどの小売業には機械装置は必要ありません)。固定資産を購入するためこの会社は多額の借り入れを行っています。


貸借対照表を分析してみよう(情報通信産業)

次に情報・通信産業の会社を見てみます。この会社は上場していますが1部ではなくもう少し規模の小さな会社を想定しています(架空の会社)。

貸借対照表(情報通信産業)

まず資産合計は「12,658,985」。先ほどの会社より数字自体は大きいですが、単位は千円なので、126億円です。

繰越利益剰余金は「△6,399,531」。すなわちマイナス63億円と、ビジネスを始めてからの累計の儲けは大幅な赤字となっています。

一方で、これだけの赤字であるにも関わらず借り入れがゼロなのは、この会社の資本金、資本準備金の合計が183億円であり、株主から預っているお金が潤沢にあるからです。

この預ったお金のうち、現在、お金として残っているのが、現金及び預金に計上されている31億円です。お金が潤沢にあるので、有価証券を51億円購入して資金運用に充てています。

その他、ソフトウェアが17億円計上されています。情報通信産業であるため、自社でソフトウェアを開発した結果、この金額が計上されています。これはITをビジネスとしている会社の特徴です。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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