会計入門その22~売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月15日

売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)

前回、「会計入門その21~損益計算書とは」では、損益計算書について説明しました。

今回は、売上高と実現主義、また、売上高の処理基準(出荷基準、納品基準、検収基準)について説明します。

「実現主義とは何か?」を理解しましょう。

そのために、実現主義を具体的な売上基準である「出荷基準」「納品基準」「検収基準」について、具体的に説明していきます。

<学習ポイント>
1.売上高
2.実現主義
 ・出荷基準
 ・納品基準
 ・検収基準


損益計算書
売上高について

会社の事業で取り扱っているモノやサービスが販売されれば、売上高として損益計算書に計上されます。

始めに、いつ売上高を計上するのか(前回、「会計入門その21~損益計算書とは」で説明した認識)について考えてみましょう。

実現主義

一般的にはモノやサービスを販売(お客に引き渡す)して、その対価を受け取った時に売上を計上します。このような認識方法を実現主義といいます。
ここで「対価」とはお金、つまり現金だけではなく、売掛金や受取手形も含みます(現金同等物といいます)。

業種・業態をいくつか例に挙げて具体的に考えてみましょう。

例えば、八百屋さんや飲食業、コンビニといった業種の場合、野菜やハンバーグやラーメン、お菓子や雑誌といったモノをお客さんが購入(食事)して、レジでお金を払います。通常、これらの行為は同時に行われるので、この日付で売上高を計上します(同時に貸借対照表に現金が計上される)。

次に「会計入門その6~棚卸資産」で例として挙げた衣服メーカー(ズボンを製造して、デパートや衣服屋さんに販売するケース)で考えましょう。

この場合には、衣服メーカーとデパートや衣服屋さんとの取引前の約束事(取引基本契約)によって売上の計上時点が異なります。

様々なケースが考えられるのですが、大きく分けて出荷基準納品基準があります。

【出荷基準】

出荷基準とは、この例で説明すれば、衣服メーカーからズボンがトラックで運搬される時、すなわち出荷する時に売上を計上する方法です。

まだ、お客さんの手許には届いていないので、厳密に考えれば、お客さんに引き渡してはいないのですが、次に説明する納品基準だと売上の計上作業が大変であることや、オーダーメイド品(特注品)ではなく一般大衆向けの大量消費製品であれば、厳しい検収もなく、ほとんど返品なく納品される(「検収」については「会計入門その6~棚卸資産」を参照)。またトラックで運搬されてからお客さんの手許に届くのにそんなに時間はかからない(国内であれば数日)ので「ほぼお客さんに引き渡した状態」ということができます。

このような場合には、「出荷した時の日付が記載された請求書をズボンと一緒に添付して運搬してくれても構わないよ。こちらもその日付で起算して契約書に基づいた期日にお金を支払うから」という、デパートや衣服屋さんとの約束(基本取引契約書や注文書に記載される文言、口頭の約束事など)があれば、出荷した日付で売上高を計上することになります(同時に貸借対照表には売掛金や受取手形を計上)。

出荷基準は日本では慣行として認められているポピュラーな売上の計上基準です。


【納品基準】

次に納品基準ですが、こちらは衣服メーカーから製品がトラックで運搬され、お客さんの手許に届き、納品された時に売上を計上する方法です。

納品基準の場合には、納品書の控えをデパートや衣服屋さんから入手して、その納品日で売上を計上することになります。

従って、売上を計上するためには、「納品書の控えの入手」という衣服メーカーとデパートや衣服屋さんの「共同作業」が必要です。一方で、出荷基準では衣服屋さんだけの作業(出荷日付が分かる資料や請求書の発行)で売上計上できます。以上から、納品基準の方が売上計上の作業が大変になります。

一方で、納品基準では、販売側である衣服メーカーと仕入側であるデパートや衣服屋さんとの「確認作業」が行われたうえで売上計上されると同時に売掛金や受取手形の計上が行われます(デパートや衣服屋さんでは買掛金や支払手形の計上)。

従って、後日、売掛金を回収する段階や決算時に売掛金計上額を検証・確認する段階では、比較的スムーズに進むといえます(同じ日付で衣服メーカーの売掛金・受取手形とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形が計上されることになるため)。

出荷基準の場合には、ズボンがデパートや衣服屋さんに納品されるまで数日ズレる場合があり、また、検品作業により返品される場合などがあるため、衣服メーカーの売掛金・受取手形とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形が一致しません。

従って、売掛金の回収段階や決算時の売掛金計上額の検証・確認作業は比較的煩雑となります。

【検収基準】

検収基準とは、ソフトウェアの受注販売など、一般大衆向けの大量消費される製品ではなく、1つ1つオーダーメイドの受注品である場合に採用される売上の方法です。

ソフトウェアの場合には、メーカーがソフトウェアの完成後、お客さんに納品(販売代理店を通じて販売する場合もありますが)するのですが、その後、お客さんの側で検証作業が行われます。

この検証作業の期間は納品されるソフトウェアによって異なります。ソフトウェアが特殊であり、プログラムの量が多ければ、もちろん検証作業の期間は長くなります。

そこで、メーカーとお客さんとの間で基本取引契約書や注文書上の文言で、検証作業の期間に関する取り決めを行っておきます。その検証期間で検証が終了し、お客さんが検収印や検収日付を押印・記載した検収書をメーカーが入手した時、その検収書に記載された日付でメーカーは売上を計上することになります(同時に売掛金を計上)。

【その他】

その他、建設業などで採用される工事完成基準や工事進行基準、割賦販売で採用される回収基準等、様々な売上計上基準があります。


税法と金融商品取引法の売上計上について

会計入門その2~なぜ決算書を作成するのか?」で決算書は3種類あると説明しました。

そのうち、税法と金融商品取引法では売上高の計上に関するルールが異なります(売上高だけではなく、その他の取引についてもルールは異なります)。

一方、会社法はあまり細かいルールはなく、金融商品取引法、税法どちらかのルールに従っていれば問題ないといって差し支えありません(表示する科目名や表示の仕方自体は異なります)

従って、例えば上場企業(子会社等、グループ会社含む)の場合には、まず金融商品取引法で売上高を計上して決算書を作成し、その後、調整(加算、減算といいます)を行って税法上の決算書(確定申告書)を作成することになります。

非常に面倒な作業になりますが、各法が決算書に対して求めている目的が違うので、このような調整を行うことになります。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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