会計入門 売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)

更新日:2019年11月30日
作成日:2012年5月15日

前回、「会計入門その21~損益計算書とは」では、損益計算書について説明しました。

今回は、売上高と実現主義、また、売上高の処理基準(出荷基準、納品基準、検収基準)について説明します。

売上高

会社の事業で取り扱っているモノやサービスが販売した場合には、売上高として損益計算書に計上します。

売上高をいつ計上するのか(前回説明した認識(にんしき))について説明していきます。

実現主義

一般的にはモノやサービスを販売(お客に引き渡す)して、その対価を受け取った時に売上を計上します。

このような売上の認識方法を実現主義(じつげんしゅぎ)といいます。

「対価」とはお金、つまり現金だけではなく、売掛金や受取手形も含みます(売掛金や受取手形などを「現金同等物(げんきんどうとうぶつ)」といいます)。

業種・業態別に例を挙げて具体的に説明します。

例えば、八百屋さんや飲食業、コンビニといった業種の場合、野菜やハンバーグやラーメン、お菓子や雑誌といったモノをお客さんが購入(食事)して、レジでお金を払います。

通常、これらの行為は同時に行われるので、この日付で売上高を計上します(同時に現金を計上します)。

次にで衣服メーカー(ズボンを製造して、デパートや衣服屋さんに販売するケース)で考えてみます。

衣服メーカーとデパートや衣服屋さんとの取引前の約束事(「取引基本契約(とりひききほんけいやく)」)によって売上の計上時点(すなわち売上の認識)は異なります。

様々なケースが考えられるのですが、この場合の売上の認識基準として「出荷基準」と「納品基準」があります。

出荷基準

出荷基準(しゅっかきじゅん)とは、この例で説明すれば、衣服メーカーからズボンがトラックで運搬される時、すなわち出荷する時に売上を計上する方法です。

出荷時点ではお客さんの手許には届いていないので、厳密に考えればお客さんに引き渡してはいません。

しかし、次に説明する納品基準だと売上の計上作業が大変であることや、オーダーメイド品(特注品)ではなく一般大衆向けの大量消費製品であれば、厳しい検収もなく、ほとんど返品なく納品できます。

トラックで運搬されてからお客さんの手許に届くのにそんなに時間はかかりません(国内であれば数日)ので「ほとんどお客さんに引き渡した状態」といえます。

このような場合には、「出荷した月の請求書として請求しても構いませんよ。こちらもその月で起算して契約書に基づいた期日にお金を支払いますから」という、デパートや衣服屋さんとの約束(基本取引契約書や注文書に記載される文言、口頭の約束事など)があれば、出荷した日付で売上高を計上します(同時に売掛金や受取手形を計上)。

出荷基準は日本では慣行として認められている最も一般的な売上の計上基準です。

納品基準

納品基準(のうひんきじゅん)は、衣服メーカーから製品がトラックで出荷され、お客さんの手許に届き、納品された時に売上を計上する方法です。

納品書の控えをデパートや衣服屋さんから入手して、その納品日で売上を計上することになります。

従って、売上を計上するためには、「納品書の控えの入手」という衣服メーカーとデパートや衣服屋さんの「共同作業」が必要です。

出荷基準では衣服屋さんだけの作業(出荷日付が分かる資料や請求書の発行)で売上計上できることから、納品基準の方が売上計上の作業が大変になります。

納品基準は、販売側である衣服メーカーと仕入側であるデパートや衣服屋さんとの「確認作業」が行われたうえで売上計上されると同時に売掛金や受取手形の計上が行われます(デパートや衣服屋さんでは買掛金や支払手形の計上)。

従って、後日、売掛金を回収する段階や決算時に売掛金計上額を検証・確認する段階では、比較的スムーズに手続きが進むといえます(同じ日付で衣服メーカーの売掛金・受取手形とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形が計上されることになるため)。

出荷基準では、ズボンがデパートや衣服屋さんに納品されるまで数日ズレる場合があり、検品作業により返品される場合もあるため、衣服メーカーの売掛金・受取手形の金額とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形の金額は完全には一致しません。

従って、売掛金の回収段階や決算時の売掛金計上額の検証・確認作業は比較的煩雑となります。

検収基準

次にソフトウェア開発会社などで適用される検収基準について解説します。

最新のゲームを開発している会社を考えると想像しやすいと思います。

検収基準(けんしゅうきじゅん)とは、ソフトウェアの受注販売など一般大衆向けの大量消費される製品ではなく、1つ1つオーダーメイドの受注品である場合に採用される売上の会計基準です。

ソフトウェア開発会社がソフトウェアの完成後、お客さんに納品すると、その後、お客さんの側で検証作業が行われます。

最新ゲームのプログラムを納品する場合には、オーダーメイド、すなわち、世界でたった一つのモノです。

従って、注文をしたお客側でも、注文した通りのモノが出来上がったのかどうか、自分たちで検証する必要があります。

ソフトウェアの場合、オーダーメイドであることが多く、ソフトウェアを注文したお客側で検証する作業を特に「検収(けんしゅう)」といいます。

検収の期間は納品されるソフトウェアによって異なります。

ソフトウェアが特殊であり、プログラムの量が多ければ、検収の期間は長くなります。

通常はソフトウェア開発会社とお客さんとの間で基本取引契約書や注文書上に、検収期間に関する取り決めを記載しておきます。

検収が終了し、お客さんが検収印や検収日付を押印・記載した検収書をソフトウェア開発会社が入手した時、その検収書に記載された日付で売上を計上するします(同時に売掛金を計上)。

その他の売上計上基準

建設業で適用される工事完成基準や工事進行基準、割賦販売で採用される回収基準等、様々な売上計上基準があります。

税法と金融商品取引法の売上計上について

これまでの解説で主な決算書は3種類あると説明しました。

そのうち、税法と金融商品取引法では売上高の計上に関するルールが異なります(売上高だけではなく、その他の取引についてもルールは異なります)。

会社法はあまり細かいルールはなく、金融商品取引法、税法どちらかのルールに従っていれば問題ないといって差し支えありません(表示する科目名や表示の仕方自体は異なります)

例えば上場企業では、金融商品取引法で売上高を計上して決算書を作成し、その後、税務上の調整(加算、減算といいます)を行って税法上の決算書(確定申告書)に計上する売上高を計算します。

面倒な作業になりますが、各法が決算書に対して求めている目的が違うので、このような調整を行うことになります。

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