会計入門その23~売上原価と費用収益対応の原則

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月20日

売上原価と費用収益対応の原則

前回、「会計入門その22~売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)」では、売上高と実現主義について解説しました。

今回は、売上原価と費用収益対応の原則について解説します。

最初に売上原価について説明します。

次に費用収益対応の原則について具体的な例を挙げて解説していきます。

<学習ポイント>
1.売上原価
 ・種類(内訳)
 ・認識
2.費用収益対応の原則
3.(参考)発生主義と費用収益対応の原則との関係


損益計算書
売上原価について

費用収益対応の原則を解説する前に、まず売上原価について説明します。
売上原価は費用です。モノやサービスを作るのにかかったお金や、販売するモノやサービスを仕入れたときにかかったお金をいいます。前者はメーカー、後者はデパートや商社などが代表的な業種です。

例えば、「会計入門その6~棚卸資産」で例に挙げた衣服メーカーですが、ズボンを作るのに、どのようなお金がかかるかを考えてみましょう。

【材料費】
まずズボンを作るのに材料が必要です。生地や糸などが必要になります。

【人件費】
ズボンを作るためには製造工場で、生地を糸で縫う人が必要ですよね。この人たちに毎月支払う給料(賃金)も、ズボンを作るために必要なお金になりますので売上原価の要素となります。

【製造間接費】
例えば、工場や機械装置を借りているとすれば家賃(賃借料)が売上原価の要素となります。工場や機械装置を購入している場合には減価償却費が売上原価になります。減価償却費とは、「会計入門その9~減価償却と資産計上」で説明した減価償却によって算定された金額をいいます。

他には、工場で使用された電気料金や水道料金、ガス代、生地を裁断するハサミ、生地を糸で縫うときの針やミシンといったものも売上原価に含まれます。

※売上原価の計算は、工業簿記の範囲になります。工業簿記は「原価計算入門~簿記資格の学習を支援」で詳しく解説しています。ご興味ある方はご訪問ください。


売上原価の認識について

売上原価となる要素は以上の通りです。それでは次に売上原価として、費用計上されるタイミング、すなわち認識(「会計入門その21~損益計算書とは」を参照)はいつになるのかを考えてみましょう。

【棚卸資産が資産に計上される理由】

上記の売上原価の要素は、モノやサービスの製造開発から完成に至る過程で原材料及び貯蔵品⇒仕掛品⇒商品及び製品と加工されます。これらを総称して「棚卸資産」ということを、「会計入門その6~棚卸資産」で解説しました。

上で説明した売上原価の要素は、まずは棚卸資産として資産に計上します。

さて、棚卸資産は資産ですが、ここで資産とは何かについてもう一度、おさらいします。

資産:お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービス(権利)がどれだけあるのか。

この資産の説明に照らし合わせると、棚卸資産が資産として計上されるのは、「将来、モノやサービスとして販売される結果、お金が入ってくるから」ということになります。

「将来、モノやサービスとして販売される結果、お金が入ってくるから資産である」ということは、販売された時点で、棚卸資産は資産には該当しなくなるということを意味します。

厳密には、販売時点ではお金、すなわち現金は入らず、現金同等物(受取手形や売掛金)を計上する場合が多いのですが、この時点で既にお金が入った状態と考えます(現金同等物は現金と同様に考える)。

従って、販売時点で、棚卸資産は販売したズボンの本数だけ減少します。

そして同時に、ズボンのお金が棚卸資産ではなく売上原価になり、損益計算書上に計上されることになります。

費用収益対応の原則

会計入門その21~損益計算書とは(認識、現金主義と発生主義)」で、発生主義について説明しました。

発生主義:モノやサービスを消費した時に収益や費用を計上する認識の考え方

売上原価もこの発生主義に基づいて、販売した時に計上することになります。

上述の通り、棚卸資産が資産として計上される理由について説明しましたが、資産計上の理由は次のように説明することもできます。

将来、会社の売上に貢献するから資産として計上される。

※資産計上の理由については、会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却から会計入門その11の固定資産の回にて詳しく解説しています。ご興味ある方は、ご訪問下さい。

そしてモノやサービス(ここではズボン)を販売し、現金や現金同等物を受領した時点で売上高を計上します。前回、売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)で説明した実現主義です。

この売上高に貢献する棚卸資産とは何でしょう。

正解は「販売したズボンにかかったお金」です。このお金が売上原価に計上されることになります。

例えば、ズボンを1本3,000円で、合計10本販売したとします。またこのズボンを作るのにかかった原価は1本あたり2,000円とします。

すると、販売した時点で、売上高が3,000円×10本=30,000円、計上されると同時に、売上原価が2,000円×10本=20,000円、計上されることになります。

このように「収益(ここでは売上高)に対応(貢献)する費用(ここでは売上原価)を計上する」というルールを、費用収益対応の原則といいます(企業会計原則に記載されています)。

今回は図を用いて説明しておりませんが、その6~棚卸資産にて、図を用いて棚卸資産を説明しています。併せてご参考下さい。


【補足】発生主義と費用収益対応の原則との関係について

※入門の範囲を超えた内容になっています。ご興味ある方はお読みください。

上記で発生主義について記載しましたが、このようにお考えになった方もいるかもしれません。

「発生主義の考えに基づいて考えれば、モノやサービスを消費した時に費用計上されるのであれば、販売する時まで待たなくても、ズボンを作るのに生地や糸を使用したり、工場で作業員が糸で生地を縫ったり、電気や水道を使用した時に、そのお金は費用になるのではないでしょうか?」

確かにその通りです。生地や糸などのモノや労働サービスを提供してもらった時に費用計上することは、発生主義の説明と照らし合わせても当てはまっています。

但し、売上原価について、発生主義だけではなく「費用収益対応の原則」も考える必要があります。この両方を満たして初めて売上原価は費用(売上原価)に計上することになります。

棚卸資産が費用収益対応の原則を満たすのはどの時点か、を考えてみますと、売上・利益に貢献する時点、すなわち「販売して現金や現金同等物を入手した時点」ということになります(=実現主義の条件を満たした時ということです)。

以上から、費用収益対応の原則は、モノやサービスが販売される時点まで費用計上を後ろに遅らせるという効果があると言われることがあります(従来から存在する会計学の考え)。

従って、棚卸資産は、製造から完成までの段階では、生地や糸、労働サービスといったモノやサービスを消費したにも関わらず、販売されるまでは仕掛品や製品といった勘定科目で棚卸資産として計上することになります。


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