会計入門その25~販売費及び一般管理費

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年5月28日

販売費及び一般管理費

前回、「その24~売上総利益と粗利率・原価率」では、売上総利益と粗利率・原価率について説明しました。

今回は、販売費及び一般管理費を説明します。

販売費及び一般管理費とは何か、や、科目にどのようなものがあるのか解説します。

さらに売上原価との区分の違いや、科目の中から研究開発費や接待交際費、寄付金について詳細に解説しています。

<学習ポイント>
1.販売費及び一般管理費
 ・明細
 ・区分
 ・研究開発費
 ・接待交際費と寄付金


損益計算書
販売費及び一般管理費とは

販売費及び一般管理費(はんばいひおよびいっぱんかんりひ)は、売上総利益の次に表示される区分で、販売関連や管理関連の費用科目をまとめて集約したものです。ちなみに販管費(はんかんひ)と、省略形で使われることが多いです。

「販売費及び一般管理費」という言葉の通り、販売費と一般管理費に関する取引はこの区分に含まれます。

その24~売上総利益と粗利率・原価率」では、売上高と売上原価の差し引きで求められる売上総利益は、会社がビジネスとして販売しているモノ・サービス自体にどれだけ競争力があるのかを表している、と説明しました。

今回の販売費及び一般管理費は、売上総利益の次の区分です。従って、会社が販売するモノ・サービス自体に関連した科目は取り扱いません。

それではどのような取引を取り扱うのか、というと、会社ビジネスの次の段階である、「モノ・サービスを販売するための活動」や「会社を維持するための活動」に必要な取引を含めます。

この「モノ・サービスを販売するための活動」に該当するのが販売費であり、「会社を維持するための活動」に該当するのが一般管理費ということになります。

例えば、販売費には、広告宣伝費や接待交際費、寄付金、支払手数料、旅費交通費といった科目が含まれます。

また、一般管理費には、会社を維持する活動を行う役員や経理総務部などの管理部門に属する従業員に対する報酬・給与(役員報酬・給与)、法定福利費(社会保険料)、賃貸している事業場の家賃や所有する建物の減価償却費などが含まれます。


販売費及び一般管理費の明細

損益計算書上では、上の画像のように「販売費及び一般管理費」と一つの表示になっています。

しかし、販売費及び一般管理費には様々な科目が含まれており、これら科目を合算したものとして表記されています。

従って、会社外部の第三者に決算書を提出する際には、販売費及び一般管理費の内訳(明細)を決算書に添付するように求められることが少なくありません。また、会社法で求められる決算書(計算書類)では「附属明細書(ふぞくめいさいしょ)」として販売費及び一般管理費の明細を作成することになっています。

下記に会社法に基づいた附属明細書による形式で、販売費及び一般管理費の明細を用意しましたのでご参考ください。

販管費明細

今回の表では金額を省略しておりますが、「計」の欄の金額(合計金額の意味)は、当然、損益計算書上の販売費及び一般管理費の金額と一致します。

様々な科目が存在します(上の表は一例なので他にもたくさんの科目があります)。大体の科目はイメージできると思います。当サイトでは、(1)売上原価と販売費及び一般管理費の区分について (2)研究開発費 (3)接待交際費と寄付金 という3つの論点について、下に解説していきます。

【販売費及び一般管理費の科目の仕訳処理について】

次の科目の仕訳処理は「商業簿記入門~2級、3級の資格学習を支援」で解説していますので、よろしければご参照ください。

・減価償却費:その56~有形固定資産の減価償却と仕訳処理
・貸倒引当金繰入:その40~貸倒引当金と貸倒損失の仕訳処理


売上原価と販売費及び一般管理費の区分について

その23~ 売上原価と費用収益対応の原則」では、売上原価について説明しました。売上原価の項目の中には販売費及び一般管理費と同様の科目が含まれています。

例えば、給与や、減価償却費、地代家賃、水道光熱費などが該当します。

そこで問題になるのは、「売上原価(製造原価)に含めるのか、それとも販売費及び一般管理費に含めるのか」ということです。

この点について、大まかに区分するのであれば、「製造に関するものは売上原価(製造原価)、本社や営業所等に関するものは販売費及び一般管理費」と言うことができます。

例えば、従業員給与であっても、工場の作業員に関するものであれば売上原価(製造原価)、本社の営業マンや事務員に関するものであれば販売費及び一般管理費となります。
また、機械設備の減価償却費は売上原価(製造原価)、本社建物や営業用の自動車の減価償却費は販売費及び一般管理費です。

【補足】ただし、本社内で製造を行っているような場合では、製造に係る費用は売上原価(製造原価)になります。製造原価は、原価計算や工業簿記の範囲になるため、「原価計算入門~簿記資格の学習を支援」で詳細を解説しています。簿記2級の工業簿記をカバーしています。ご興味があればご訪問ください。

研究開発費

研究開発費とは、新しい知識の発見や新しい製品・サービス等の開発等にかかった費用をいいます。

新しいソフトウェアを開発しているIT企業や、医薬品を開発(創薬)する、バイオベンチャー等の会社では、研究開発費が多額に計上されることになります。

このような研究開発型の会社では、研究開発費にどれだけコストをかけているかが重要な指標の一つとなります。従って外部の投資家や金融機関などは研究開発費の金額を重要視するので、金融商品取引法に基づく決算書(財務諸表)では、研究開発費の総額を記載することにしています。

研究開発費は、新たな知識の発見や新しい製品・サービス等の開発等にかかる費用であるため、これらの研究開発が成功して製品・サービスとして販売し、売上利益を獲得できるかどうかは研究開発の段階では分かりません。

従って、「将来、現金として入金される」という資産の説明には該当しませんので棚卸資産として計上しませんし、現時点の既存製品の売上に貢献するわけでもないため、売上原価には計上しません(「会計入門その23~売上原価と費用収益対応の原則」で解説しています。ご参照ください。)。

以上から、研究開発費は、販売費及び一般管理費の区分で処理されます(但し、製造費用として処理されるケースが全くないわけではありません。実態で判断した結果、製造費用としての処理が妥当である場合には製造費用で処理します)。

接待交際費と寄付金

接待交際費や寄付金は、名前から内容は分かると思いますので、説明は省略します。

これらの科目は、法人税の税務調査でよく指摘される内容の一つです。

法人税では、費用(税法上では損金といいます)を計上すればその分、払う税金が少なくて済むため、税金対策として当初の支出計画を前倒しにして費用を計上する場合もあります。

一方で、接待交際費や寄付金には損金として認められる金額に制限があります。従って、接待交際費や寄付金を別の科目で処理してしまい、税金を少なく済ませようとする会社も出てきます。

このような脱税行為が税務調査等で見つかった場合、重加算税や社会的信用を失う等、ペナルティを被ることもありますので、注意が必要です。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析


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