会計入門その30~B/SとP/Lの財務分析

更新日:2018年12月27日
作成日:2012年7月1日

B/SとP/Lの財務分析

前回、「会計入門その29~財務指標」では、財務指標について説明しました。

今回は、財務指標を使用して、B/SとP/Lの財務分析を行います。

財務指標のうち、安全性分析と収益性分析について、それぞれ具体例を挙げながら、解説しています。

最後に財務分析の注意点について言及しました。

<学習ポイント>
1.財務指標
2.安全性分析
 ・自己資本比率
 ・流動比率
3.収益性分析
 ・棚卸資産回転期間
 ・総資本回転率
4.財務分析の注意点


貸借対照表 損益計算書
財務指標

まずは前回説明した、財務指標についておさらいしましょう。

財務指標(ざいむしひょう)とは、決算書データなどを用いて算出される、経営分析を行う際に有用となる数値をいいます。

これまでにもいくつか財務指標を紹介してきましたが、主な財務指標について一覧表を下に掲載します。

「今回ケース」の欄には、前回、「会計入門その29~財務指標」に掲載の貸借対照表、損益計算書データを用いた場合の数字を記載しています(空欄になっているところは、データが足りず算出できない箇所です)。

財務指標一覧
安全性分析

まずは簡易的なB/Sを用いて、安全性分析を行ってみましょう。下の2つのB/Sをご覧ください。

安全性分析

今回は安全性の財務指標のうち、自己資本比率と流動比率を算出します。

【自己資本比率】

自己資本比率は、総資産(資産合計、または負債・純資産合計)と自己資本(株主資本)の比率を算出して、財務の安全性を確認する指標です。

上の例では自己資本比率は、次の通りとなります。

甲社: 90 ÷ 150 × 100 = 60.0%
乙社: 20 ÷ 150 × 100 = 13.3%

自己資本比率は高い方が評価が高くなりますので、甲社の方がより財務の安全性が高いということができます。

【流動比率】

前回、「会計入門その29~財務指標」でも説明しましたが、流動比率についても算出してみましょう。

甲社: 60 ÷ 40 × 100 = 150%
乙社: 20 ÷ 40 × 100 = 50%

流動比率も高い方が評価が高いので、流動比率でも甲社の方がより財務の安全性が高いということができます。


収益性分析

収益性分析については、これまでに説明してきましたのでそちらを参照下さい。

その24~売上総利益と粗利率・原価率
その26~営業利益・営業利益率
その27~営業外収益・費用と経常利益

効率性・有効性分析

次に効率性・有効性分析について、指標を用いて財務分析を行ってみましょう。

今回は、電気製品メーカーとファーストフード会社(ともに大手)を想定して簡易的なB/SとP/Lを作りました。それが下の図です。

<電気製品メーカー>

電気製品メーカー

<ファーストフード会社>

ファーストフード会社

今回は安全性の財務指標のうち、棚卸資産回転期間と総資本回転率を算出します。

【棚卸資産回転期間】

棚卸資産回転期間は、棚卸資産と売上原価を利用して、何日分の棚卸資産を保有しているかを示す指標です。この数字が低い程、在庫を圧縮して保有しており、有効かつ効率的な経営をしているということができます(在庫が多いとその分、陳腐化や廃棄の金額が増加する)。

今回の例では、棚卸資産回転期間は次の通りとなります。

電気製品メーカー: 3,500 ÷ 25,550 × 365日 = 50.0日
ファーストフード:  20 ÷  700 × 365日 = 10.4日

ファーストフード店では、廃棄を出さないようなるべく在庫を保有しないよう様々な工夫をしています。その結果、約10日という非常に効率の良い在庫金額を保っています。棚卸資産回転期間が短いのはファーストフード会社の特徴といえます。

一方で電気製品メーカーでは、生ものを扱っていないし、ファーストフード店よりも製品のリードタイム(製品を作るのにかかる時間)が長くなります(ファーストフード店では数分から10数分)。従ってファーストフードと比較すると棚卸資産回転期間は長くなります。

【総資本回転率】

総資本回転率は、総資産と売上高の比率を算出することで、どれだけ資産を有効かつ効率的に使用して、売上を獲得しているのかを示す指標です。この数字が高い程、資産を有効かつ効率的に使用しているということができます。

今回の例で、総資本回転率を算出すると次の通りとなります。

電気製品メーカー: 34,000 ÷ 29,500 = 1.15
ファーストフード: 2,000 ÷ 1,400 = 1.42

今回の例では、効率性・有効性分析の結果、ファーストフード会社の方が電気製品メーカーよりも有効かつ効率的な経営を行っているということになります。


財務分析の注意点

<1.多面的な分析を行う>

今回は各項目毎に説明しましたが、実際に仕事などで財務分析を行う時には様々な指標を用い、かつその時の状況も鑑みて判断する必要があります

例えば、上の財務の安全性の評価では、甲社が高く評価されました(財務の安全性の観点)。一方で景気が良いのであれば、自己資本ではなく、他人資本(借り入れ)を増やし、ビジネスに投下するお金を増やして売上・利益を増加させるという判断もありえます。

この場合には借り入れが増えるため、負債が増加し、結果として自己資本比率は減少してしまいます。しかし、投下するお金が増加するため、売上・利益は増加する可能性が高くなります(=収益性)。実際のビジネスではこのような判断は普通にありえることです。

また効率性・有効性分析ではファーストフード会社の評価が高くなりましたが、金額ベースで見ると電気製品メーカーがファーストフード会社を圧倒しています。

<2.業種・業態の異なる会社の比較>

業種・業態の異なる会社を比較しても有用な分析とはならないケースがあります。今回の例ではこの点を露出するため、あえて電気製品メーカーとファーストフード会社を比較しています。

自社の分析を行うのであれば、同じ業種・業態のライバル企業と比較するのが一番でしょう。また、自社の過年度データの推移を見てみるのも有効な分析となります。

一方で、例えば、株を購入するということであれば、業種・業態の異なる会社であっても、財務分析は有用だと思います。

終わりに

今回は財務指標について説明しました。今回が最終回となります。

会計入門その1~はじめに(必ずお読み下さい)」の「学べること」に記載した内容は説明することができました。

「会計の入門サイト」をテーマとして解説してきましたが、中には日商簿記1級でも扱わない内容もあれば、日商簿記3級で扱っている内容を説明していない等、「簿記や会計を基礎から学ぶ」という点から考えると、扱っている内容のレベルにはかなりバラツキがあると思います。

この点は、当サイトが「実務に役立つ会計の入門サイト」という位置付けで制作していることが理由になっています。

今後は、皆さんの目的や興味に合わせて、教科書や参考書籍なり、学校や資格取得スクールなり、他のサイトなりで調べて頂ければと思います。


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記事一覧


  • 1.概要
    その 1~はじめに(必ずお読み下さい)
    その2~ なぜ決算書を作成するのか?

  • 2.貸借対照表
    その3~ 貸借対照表の見方
    その4~ 資産と負債、純資産の関係

  • 3.資産の部
    その5~ 資産の区分、受取手形と売掛金、有価証券
    その6~ 棚卸資産
    その7~ 未収入金と経過勘定
    その8~ 固定資産の区分
    その9~ 減価償却と資産計上
    その10~ 固定資産と時価主義
    その11~ 固定資産と減損会計
    その12~ 貸倒引当金

  • 4.負債の部
    その13~ 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
    その14~ 未払金と経過勘定
    その15~ 未払法人税等と預り金
    その16~ リース債務と退職給付引当金

  • 5.純資産の部
    その17~ 純資産とは
    その18~ 資本金と資本準備金
    その19~ 資本取引・損益取引区分の原則
    その20~ 貸借対照表の分析

  • 6.損益計算書
    その21~ 損益計算書とは
    その22~ 売上高と実現主義
    その23~ 売上原価と費用収益対応の原則
    その24~ 売上総利益と粗利率・原価率
    その25~ 販売費及び一般管理費
    その26~ 営業利益・営業利益率
    その27~ 営業外収益・費用と経常利益
    その28~ 特別損益と当期純利益その他

  • 7.財務分析
    その29~ 財務指標
    その30~ B/SとP/Lの財務分析

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