標準原価計算とは|概要と手続きの流れ、違いを解説
記事最終更新日:2023年7月7日
記事公開日:2017年5月21日
標準原価計算とは何かについて、概要と他の原価計算制度との違い、手続きの流れを解説します。
標準原価計算とは|概要と手続きの流れ、違いを解説
目次
標準原価計算とは
標準原価計算とは、製品を標準原価で計算する原価計算制度をいいます。
引用元:原価計算基準
「標準原価計算制度は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。」
標準原価とは
標準原価とは、科学的、統計的調査に基づいて設定した標準消費量(標準数量)と標準価格をもって計算した原価標準に生産量データを乗じて計算した原価をいいます。
標準価格は予定価格や正常価格を用いることが一般的です。
引用元:原価計算基準
「標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。」
原価標準とは、製品1単位当たりの標準原価をいい、「標準原価カード」ともいいます。
<ポイント>標準原価
- 標準原価 = 原価標準(標準価格 × 標準消費量)×生産量(当月投入、完成品、棚卸数量)
標準消費量とは、原価管理、すなわち、無駄を省き、効率的に製品を製造するために設定する目標になる消費量をいいます。
標準消費量として設定される目標消費量には、いくつか種類があります。最も原価管理という目的に適した目標消費量としては「良好な能率」のもとで現実的に達成可能な「現実的標準原価の考えに基づく目標消費量」。があります。
その他、目標消費量としては、正常原価のや予定原価の考えに基づく目標消費量がありますが、目標の高さ(厳しさ)は現実的標準原価が上回ります。理想ではなく、現実的に達成可能な目標となりえるため、現実的標準原価が原価管理という目的に最も適した標準原価となります。
引用元:原価計算基準
「標準原価計算制度において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価である。現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。現実的標準原価は、原価管理に最も適するのみでなく、たな卸資産価額の算定および予算の編成のためにも用いられる。」
他の原価計算との違い
実際原価は原価計算の目的のうち、「真実の原価」「正確な価格計算」に最も有効です。
直接原価計算は、利益計画や予算編成目的のために、CVP分析などを行うために採用する原価計算制度をいいます。
標準原価計算のメリット
原価計算の目的のうち、「原価管理に資する」といった点で標準原価計算に勝る原価計算制度は存在しません。
原価差異を把握して原価管理したい場合には、様々な視点で原価管理を行えます。
また、「損益計算書作成に対して真実の原価を集計する」「正確な価格計算に基づく原価」といった点でも一般的に公正妥当と認められる会計基準と矛盾することなく採用できます。標準原価の性質を予定原価に近づければ利益計画や予算編成目的としても利用可能です。
デメリット
標準価格や標準消費量の設定や標準原価の算定、差異分析など、実際原価計算と比較して手続きが煩雑となり、実務的な負担が大きくなります。
標準原価計算の流れ
標準原価計算の手続きの流れは次の通りです。
<手続きの流れ>
- 0.原価標準の設定
- 1.費目別計算
- 2.部門別計算
- 3.製品別計算
- 4.売上原価の計上
- 5.損益計算書と製造原価報告書の作成
0.原価標準の設定
「原価標準(標準原価カード)」とは、製品1単位を製造するのにかかる標準原価をいい、「直接材料費」「直接労務費」「製造間接費」といった費目別に設定します。
「標準」とは、実際の単価や数量ではなく、科学的・統計的な調査活動によって測定した単価や数量、または予定(想定・計画)される単価や数量を用いて原価を計算することを意味しています。
標準原価は次の式で計算します。
標準価格 × 標準数量 = 標準原価
製品1単位当たりに要する費目別(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)の価格と消費数量を設定し、それらの数値から原価標準を求めます。
1.費目別計算
標準原価計算といっても、実際原価も集計しなければなりません。
実際原価を集計し、標準原価との原価差異分析を行います。また、標準原価計算であっても最終的な損益計算書には実際の原価を計上しなければなりません(真実の原価)。
費目別計算では、発生した原価を材料費・労務費・経費に分類します。さらにそれぞれを直接費と間接費に分けて、最終的には「直接材料費」「直接労務費」「製造間接費」として集計します。
2.部門別計算
※標準原価ではなく、実際原価(じっさいげんか)の集計手続き
製造間接費(実際原価)について、部門別計算を行う場合があります。
部門別に原価を集計した後、直接配賦法などの方法によって、全ての製造間接費を製造部門に集計します。
3.製品別計算
3-1.製造への投入(当月投入原価の計算)
当月投入原価について、各費目(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)の原価を仕掛品勘定へ集計します。
3-2.個別原価計算と総合原価計算の選択
製品の生産形態が受注生産(オーダーメイド)であれば個別原価計算、見込生産であれば総合原価計算を選択して完成品原価を求めます。
工業簿記2級では、標準原価は総合原価計算が出題されます。
3-3.標準原価の計算(完成品原価の計算)
標準原価を用いて完成品原価を計算します。
標準原価 = 標準価格 × 標準数量
3-4.標準原価と実際原価の差異分析
集計した実際原価と標準原価は費目別に原価差異の分析を行います。
記帳方法の違いによって、シングルプランとパーシャルプランが存在します。
4.売上原価の計上
完成した製品は製品勘定へ集計します。売上済みの製品は製品から売上原価へ集計するように仕訳します。
5.損益計算書と製造原価報告書の作成
決算手続きとして損益計算書と製造原価報告書を作成します。
標準原価計算では、シングルプランとパーシャルプランとで、表示する内容や金額が異なってきます。
関連記事(原価計算の概要)
※電子書籍WEB版(フリー)の一覧は「第1章 原価計算(工業簿記)とは-PDCA会計 日商簿記2級 工業簿記詳解-傾向と対策(電子書籍WEB阪)」に掲載