工業簿記2級 標準原価計算とは(入門)|概要や手続き、違いのまとめ

更新日:2020年12月26日
作成日:2017年5月21日

標準原価計算の全体像をまとめました

標準原価計算の全体像を把握したい時や、各ページの解説でこの項目が原価計算全体の中でどの部分に該当するのか理解したい時にご利用下さい。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

標準原価計算とは

標準原価計算(ひょうじゅんげんかけいさん)とは、製品を標準原価で計算する原価計算制度をいいます。

標準原価とは

標準原価(ひょうじゅんげんか)とは、科学的、統計的調査に基づいて設定した標準消費量(標準数量)と標準価格をもって計算した原価標準に生産量データを乗じて計算した原価をいいます。

標準価格は予定価格や正常価格を用いることが一般的です。

原価標準(げんかひょうじゅん)とは、製品1単位当たりの標準原価をいいます。

標準消費量とは何かというと、原価管理、すなわち、無駄を省き、効率的に製品を製造するために設定する目標になる消費量をいいます。

標準消費量として設定される目標消費量にも標準価格と同様にいくつか種類があります。最も原価管理という目的に適した目標消費量としては「良好な能率」のもとで現実的に達成可能な「現実的標準原価(げんじつてきひょうじゅんげんか)の考えに基づく目標消費量」。があります。

その他、目標消費量としては、正常原価のや予定原価の考えに基づく目標消費量がありますが、目標の高さ(厳しさ)は現実的標準原価が上回ります。しかも手の届かないような理想ではなく、現実的に達成可能な目標となりえるため、現実的標準原価が原価管理という目的に最も適した標準原価となります。

実際原価計算との違い

実際原価計算とは製品を実際原価で計算する原価計算制度をいいます。

実際原価とは「実際原価 = 実際価格(又は予定価格) × 実際消費量」で計算した原価です。

実際原価は原価計算の目的のうち、「損益計算書作成に対して真実の原価を集計する」「正確な価格計算に基づく原価」に最も貢献する原価計算制度といえます。

原価管理のため、標準価格と標準消費量から計算される標準原価計算とは採用の目的が違います。価格や消費量は異なる数値で計算するため、両者は異なる計算結果になります。また、原価差異についても原価管理により有効な標準原価計算の方が、実際原価計算で把握できる価格差異や予算差異、操業度差異以外にも数量差異や能率差異も把握でき、項目数が多くなります。

一方で、どちらの原価計算制度も一般に公正妥当と認められる会計基準として認められており、財務諸表や商法計算書類といった外部公表用の決算書を作成する目的で採用される原価計算制度である点は同じです。

直接原価計算との違い

直接原価計算とは利益計画や予算編成目的のために、原価を変動費と固定費とに分類して、簿記で学習する損益計算書とは異なる原価、費用の集計方法で損益計算書を作成し、CVP分析などを行うために採用する原価計算精度をいいます。

直接原価計算によって計算・作成された損益計算書や棚卸資産の金額は、一般に公正妥当と認められる会計基準とはいえないことから、外部に公表する財務諸表や商法計算書類などの決算書の作成には使用できません。

この点、標準原価計算や実際原価計算とは異なります。

同じ「原価計算」という名称であることから間違いやすいですが、直接原価計算は実際原価計算や標準原価計算と対比される用語ではありません。

直接原価計算と対比される用語は「全部原価計算」です。実はこれまでに解説してきた標準原価計算や実際原価計算は「全部標準原価計算」「全部実際原価計算」のことです。普通は全部を省略して使います。

直接原価計算と標準原価計算や実際原価計算とを組み合わせた「直接標準原価計算」「直接実際原価計算」も存在します。この場合は省略せずに頭に「直接」を付して使います。

簿記で学習する一般的な原価や費用の集計方法による方法が全部原価計算と覚えておいて差し支えありません。

標準原価計算のメリット

原価計算の目的のうち、「原価管理に資する」といった点で標準原価計算に勝る原価計算制度は存在しません。

原価差異を把握して原価管理したい場合には、様々な視点で原価管理を行えます。

また、「損益計算書作成に対して真実の原価を集計する」「正確な価格計算に基づく原価」といった点でも一般的に公正妥当と認められる会計基準と矛盾することなく採用できます。標準原価の性質を予定原価に近づければ利益計画や予算編成目的としても利用可能です。

標準原価計算のデメリット

標準価格や照準消費量の設定や標準原価の算定、差異分析など、実際原価計算と比較して手続きが煩雑となり、実務的な負担が大きくなります。

【補足】原価管理と標準原価計算について

上述の通り、標準原価計算の重要な目的の一つに「原価管理を効果的に行うこと」があります。

メーカーはモノ・サービスを作り、お客に販売して、儲け(=利益)を獲得することを企業活動の目的としています。

「売上 - 売上原価 = 売上総利益」であるため、利益を増やすには、売上を増やすか売上原価を減らせば良いことになります。

このうち、後者の売上原価を減らすために行う活動の一つとして欠かせないのが原価管理ということになります。

標準原価とは原価の目標値になります。例えば、ズボン1本の原価標準を1,000円に設定して、今月の製造活動を行い実際原価との差額を分析してみます。

分析の結果、「実際原価 > 標準原価」になった場合には、目標である標準原価に近づくように差額分析の結果に基づいて原価低減活動を行います。

もし「実際原価 < 標準原価」になった場合には、目標はクリアできました。そこで、例えば今度は原価標準を950円にするなど、より高い目標を掲げて活動します。

標準原価ではなく予定原価を採用することでも、ある程度は原価管理に役立てることができます。

しかし、予定原価は「予定価格×実際数量」で求められ、単価の目標は設定できても数量の目標は設定できません。

これに対して、標準原価は「標準単価×標準数量」で求められ、単価と数量の両面で、目標を設定することができます

このように原価管理は、より低いコストに抑えるための原価低減活動に役立つものであり、有効に原価管理を行うのであれば標準原価計算を採用することが望ましい、ということになります。

標準原価計算の流れ

標準原価計算の手続きの流れは次の通りです。

0.原価標準の設定

原価標準(げんかひょうじゅん)」とは、製品1単位を製造するのにかかる標準原価のことをいいます。

「標準」とは、実際の単価や数量ではなく、科学的・統計的な調査活動によって測定した単価や数量、または予定(想定・計画)される単価や数量を用いて原価を計算することを意味しています。

ところで標準原価は次の式で計算します。

標準価格 × 標準数量 = 標準原価

このうち、標準価格とは、「製品1単位当たりに要する標準原価」を意味します。

すなわち、原価標準とは「標準価格」のことと考えることができます。

つまり、原価標準の設定とは、「標準原価計算を進めるに当たって、最初に標準価格を設定しましょう」ということです。

製品1単位当たりに要する費目別(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)の価格と消費数量を設定し、それらの数値から原価標準を求めます。

1.費目別計算

※標準原価ではなく、実際原価(じっさいげんか)の集計手続き

標準原価計算といっても、実際原価も集計しなければなりません。

工業簿記で説明すると、各費目の勘定科目、もしくは仕掛品勘定で、実際原価と標準原価との差異分析を行います。

差異分析を行った勘定科目の次の勘定科目から、標準原価を使用して仕訳処理していきます。

※標準原価計算で原価を計算しても、製造原価報告書や損益計算書に表示させる原価の最終的な金額は実際原価と一致します。

発生した原価を材料費、労務費、経費に分類します。さらにそれぞれを直接費と間接費に分けて、最終的には直接材料費、直接労務費、製造間接費として集計します。

※費目別計算に関する、より詳しい説明は「まとめ(1)実際原価計算」を参照

2.部門別計算

※標準原価ではなく、実際原価(じっさいげんか)の集計手続き

分類した費目のうち、製造間接費についてはさらに部門別計算を行う場合があります。

製造部門と補助部門を設定して、各部門毎に部門個別費と部門共通費を集計します。

そして、各部門の配賦基準に基づき、直接配賦法や相互配賦法といった手法で、最終的には全ての原価を製造部門に集計させます。

製品部門に集計させた原価は、その製品部門の配賦基準に基づき製品の製造間接費として製造に投入されます。

3.標準原価計算による製品別計算

<手続き3-1>製造への投入(当月投入原価の計算)

当月に投入する製造原価について、各費目(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)の原価を計算し、各費目の勘定科目から仕掛品勘定へ振り替えの仕訳処理をします。

各費目の勘定科目から仕掛品勘定に振り替える原価は実際原価の場合と標準原価(各費目の標準価格 × 各費目の消費数量)の場合の両方が考えられます。

振り替える原価は、原価差異の記帳方法としてシングルプランを採用していれば標準原価、パーシャルプランを採用していれば実際原価です(シングルプランとパーシャルプランは下記4.を参照)。

<手続き3-2>個別原価計算と総合原価計算の選択

投入された仕掛品は、製品の生産形態が受注生産(オーダーメイド)であれば個別原価計算(こべつげんかけいさん)、見込生産であれば総合原価計算(そうごうげんかけいさん)を採用して完成品原価を求めます。

総合原価計算では、生産形態の違いにより、さらに単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算、工程別総合原価計算に区分して原価計算が行われます。

※以下のリンクは全て実際原価計算による説明(標準原価計算と大きな違いはありません)

<手続き3-3>標準原価の計算(完成品原価の計算)

標準原価を用いて完成品原価を計算します。

標準原価 = 標準価格 × 標準数量

標準価格は上記「0.原価標準の設定」で計算は済んでいます。

そこで、次に標準数量を決めます。

問題文を読み取り、製品の完成品数量を計算します。

計算した標準数量と標準価格を掛け算して標準原価を計算します。

※標準原価は、個別原価計算であれば製造指図書(せいぞうさしずしょ)ごとに集計し、総合原価計算であれば、Tフォームを使って完成品数量を計算して集計します。

<手続き3-4>標準原価と実際原価の差異分析

集計した実際原価と標準原価は費目別に原価差異の分析を行います。

原価差異の分析をどの勘定科目で行うかによって、シングルプランとパーシャルプランが存在します(記帳方法の違い)。

上記の「<手続き3-1>製造への投入(当月投入原価の計算)」では、当月投入の製造原価を計算し集計した際に、シングルプランの場合には各費目の勘定科目に、パーシャルプランの場合には仕掛品勘定に、借方に実際原価を集計し、貸方に標準原価を集計しました。

この貸借差額を費目別に差異を計算していきます。

<手続き3-5>原価差異の会計処理

原価差異の会計処理は売上原価に加減すると覚えておきましょう。

4.売上原価の計上

<手続き4-1>製品の受け払いと仕訳処理

完成した製品は仕掛品勘定から製品勘定へ振り替え処理を行います。

<手続き4-2>製品の販売と仕訳処理

製品が販売された場合には、売上を計上する仕訳処理を行うのとともに、製品勘定から売上原価勘定への振り替え処理を行います。

5.損益計算書と製造原価報告書の作成

上記1.から4.の手続きは月ごとに行います。

そして1年間手続きを行った後、決算手続きとして損益計算書(そんえきけいさんしょ)製造原価報告書(せいぞうげんかほうこくしょ)を作成します。

※貸借対照表も作成しますが、原価計算や工業簿記では解説しません。

標準原価計算では、シングルプランとパーシャルプランとで、表示する内容や金額が異なってきます。

損益計算書や製造原価報告書のどこに原価差異を表示させるのかがポイントです。

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