工業簿記2級 直接原価計算とは(入門)|概要や手続き、違いのまとめ

更新日:2020年4月29日
作成日:2017年5月21日

直接原価計算の全体像をまとめました

原価計算の全体像を把握したい時や、各ページの解説で、この項目が原価計算全体の中でどの部分に該当するのか理解したい時にご利用下さい。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

直接原価計算とは

直接原価計算(ちょくせつげんかけいさん)とは、コストを変動費と固定費に分類して原価を集計して損益計算書を作成する原価計算制度をいいます。

変動費と固定費とは

変動費(へんどうひ)とは、操業度の変動に応じて発生する費用をいいます。

固定費(こていひ)とは、操業度の変動に関係なく一定額が発生する費用をいいます。

操業度(そうぎょうど)とは、製品生産量や工場の直接労働時間など、生産設備をどの程度利用したのかの指標となるような数値をいいます。

変動費の例には、材料費や水道光熱費などがあり、固定費の例として減価償却費や賃借料を挙げることができます。

変動費と固定費に分類する理由

直接原価計算は原価計算制度の目的のうち、利益計画に代表される「予算の編成ならびに予算統制」「経営の基本計画の設定」のために採用される原価計算制度です。

目標利益を達成するために必要な売上高を設定するには、製品の販売単価の設定が必要です。また「利益 = 収益 - 費用」のため、費用である製品原価や販売費・一般管理費の目標を設定しなければいけません。

原価や費用設定の際に、短期的にコントロール可能な変動費と、すぐには増減させることができない固定費とを分類することで、より実現可能となる適切な原価・費用の目標を設定でき、積雪な原価・費用の設定によって、「適切な目標製品単価→目標売上高→目標利益」と導けます。

以上から、利益計画という目的を達成するために直接原価計算ではコストを変動費と固定費に分類する、といえます。

実際・標準原価計算との違い

実際原価計算とは製品を実際原価で計算する原価計算制度をいい、標準原価計算とは製品を標準原価で計算する原価計算制度をいいます。

同じ「原価計算」という名称であることから間違いやすいですが、直接原価計算は実際原価計算や標準原価計算と対比される用語ではありません。

直接原価計算と対比される用語は「全部原価計算」です。実は前回までに解説してきた実際原価計算や標準原価計算は「全部実際原価計算」「全部標準原価計算」のことです。普通は全部を省略して使います。

直接原価計算と標準原価計算や実際原価計算とを組み合わせた「直接標準原価計算」「直接実際原価計算」も存在します。この場合は省略せずに頭に「直接」を付して使います。

簿記で学習する一般的な原価や費用の集計方法による方法が全部原価計算と覚えておいて差し支えありません。

全部原価計算との違い

全部原価計算(ぜんぶげんかけいさん)とは製品原価を製品の製造に要した全ての原価に基づいて計算するために採用する原価計算制度をいいます。

上述の通り、一般的に実際原価計算や標準原価計算という用語を使うときには全部原価計算のことを表わします。

全部原価計算は、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて、一般企業で作成される財務諸表や商法計算書類などの決算書に表示される売上原価や棚卸資産を計算する目的で採用される原価計算制度である、ということもできます。

これに対して直接原価計算によって計算・作成された損益計算書や棚卸資産の金額は、一般に公正妥当と認められる会計基準とはいえないことから、外部に公表する財務諸表や商法計算書類などの決算書の作成には使用できません。

全部原価計算と直接原価計算の損益計算書の比較

両者の損益計算書の違いが分かるようにサンプルを下に掲載します。全部原価計算の方は単純実際原価計算(実際価格を用い、原価分析を行わない)に基づく製造原価報告書と損益計算書です。

全部原価計算の方は簿記でも学習する一般的な形式であるのに対して、直接原価計算の損益計算書はあまり見ない形式であることが分かります。

全部原価計算の損益計算書

直接原価計算の損益計算書

直接原価計算のメリット

原価計算の目的のうち、利益計画の策定といった点で直接原価計算は最も役立ちます。

コストを操業度に着目して変動費と固定費とに分類して、適切なコスト設定を検討できます。具体的にはCVP分析を行うことで、計画だけでなく、成果の測定や分析にも貢献する原価計算制度です。

標準原価計算と組み合わせれば、原価管理にも有効になります。

直接原価計算のデメリット

上述の通り、一般的に公正妥当と認められる会計基準に準拠した損益計算書を作成する目的には機能しません。

従って直接原価計算を採用する場合には、全部原価計算も併せて採用する必要があるため、手続が煩雑となり、実務上の負担が大きくなります。

直接原価計算の流れ

直接原価計算の流れは次の通りです。

1.変動費と固定費の分類

原価を変動費と固定費に分類します。主な方法として高低点法、費目別精査法があります。

2.直接原価計算とCVP分析

主に利益計画目的に利用されます。

分類した変動費と固定費を使用して、全部原価計算による損益計算書から直接原価計算による損益計算書を作成します。

全部原価計算による期首棚卸資産と期末棚卸資産に含まれる固定費について調整を行い、直接原価計算の営業利益を計算します。

CVP分析ですが、作成した損益計算書を将来の趨勢などを加味して計画数値に置き換えることで、利益計画用の損益計算書を作成します。

作成した計画用の損益計算書に対してCVP分析を行います。

例えば損益分岐図表に基づき、損益分岐点売上高や安全余裕率、損益分岐点比率などを計算します。

CVP分析による結果を検討し、数値の調整などを行い利益計画を作成します。

以上を繰り返すことで合理的な利益計画を作成します。

その他

直接原価計算以外の論点として本社工場会計があります。

製造に関する取引や材料、製品の倉庫への搬入・出庫など、工場で行われる取引について工場側で仕訳を行うことを「工場会計の独立」といいます。本社と工場の連携する取引については「本社」勘定、「工場」勘定を用います。

損益計算書と製造原価報告書

実際原価計算、標準原価計算と併せて、直接原価計算の損益計算書と製造原価報告書を掲載しています。

原価差異の表示方法や各原価計算による表示の違いなどが分かります。

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