工業簿記2級 材料消費価格差異とは(入門)|計算方法や仕訳
更新日:2020年12月26日
作成日:2020年5月19日
前回に引き続き、材料費について解説します。
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※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
今回の学習はココ
材料消費価格差異について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第1段階の費目別計算に該当します。
<今回の学習ポイント>
- ・材料消費価格差異とは
- ・価格差異(標準原価計算)との違い
- ・計算方法と仕訳
- ・問題例
費目別計算(ひもくべつけいさん)とは材料費、労務費、経費といった費目を直接費と間接費に分類して計算・集計するための手続きをいいます。
具体的には上記の各勘定連絡図の左側に位置する材料、賃金、経費などの総勘定元帳から、仕掛品や製造間接費に分類して集計する手続きです。
材料消費価格差異とは
材料消費価格差異(ざいりょうしょうひかかくさい)とは、実際原価計算において消費価格として予定価格を設定して材料消費額を計算した場合に発生する、実際消費価格による実際発生額との差異をいいます。
引用元:原価計算基準
「材料消費価格差異とは、材料の消費価格を予定価格等をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料費額と実際発生額との差額として計算する。」
原価差異を計算する原価計算制度としては実際原価計算(個別、総合)と標準原価計算があります。
材料消費価格差異は実際原価計算(個別、総合)による原価差異のうちの1つです。
材料消費価格差異と実際原価計算
実際原価計算では、実際価格だけでなく予定価格を使って原価を集計できます。
そして、予定価格を使って原価計算を行った場合に発生する原価差異が材料消費価格差異です。
<ポイント:材料消費価格差異の発生条件>
- ・実際原価計算で予定価格を使用して原価計算を行った場合に発生
価格差異(標準原価計算)との違い
標準原価計算で発生する原価差異の1つに材料費の価格差異があります。
しかし材料費の計算について、実際原価計算では「予定消費価格×実際消費数量」で計算しますが、標準原価計算は「標準消費価格×標準消費数量」で計算します。
つまり、標準原価計算では消費数量も実際ではなく標準を設定するため、実際原価計算では把握しない数量差異が登場します。この点が両者の大きな違いです。
この違いから計算の公式も両者は異なります。
※標準原価計算の価格差異の詳細は下記の記事を参照(標準数量の組み合わせが追加されるので消費価格差異よりも難易度高)。
材料消費価格差異の計算方法
材料消費価格の計算式は次の通り。
<材料消費価格差異の計算方法>
- ・材料消費価格差異 = 予定材料費 - 実際材料費
- = 予定消費価格 × 実際消費数量 - 実際材料費
- = (予定消費価格 - 実際消費価格) × 実際消費数量
「予定消費価格 > 実際消費価格」の場合、予想していた価格よりも低い価格で材料を消費したため、計算結果はプラスになり有利差異(貸方差異)になります。
反対に「予定消費価格 < 実際消費価格」の場合、予想していた価格を超える高い価格で材料を消費することになったため、計算結果はマイナスになり不利差異(借方差異)が発生します。
仕訳方法
一般的な仕訳は不利差異(借方差異)の場合、「(借方)材料消費価格差異 ×× (貸方)材料 ××」、有利差異(貸方差異)の場合、「(借方)材料 ×× (貸方)材料消費価格差異 ××」です。
すなわち、材料勘定から材料消費価格差異勘定への振り替え仕訳です。
なぜ仕掛品勘定ではなく材料勘定で仕訳するのかは次の通り考えると理解できるでしょう。
まず、材料購入時の仕訳は「(借方)材料 ×× (貸方)買掛金など ××」です。金額は「実際消費価格×実際消費数量」で計算します。
次に材料を消費した場合の仕訳は「(借方)仕掛品 ×× (貸方)材料 ××」です。予定消費価格を使用する場合の金額は「予定消費価格×実際消費数量」で計算します(実際原価計算では予定価格は使用できても、予定数量は使用しない)。
※材料費の仕訳の詳細は下記の記事を参照。
この時点で材料勘定の借方は実際消費価格による計算金額、貸方は予定消費価格による計算金額が記入されたことになります。
従って、「材料勘定の借方と貸方で差額が生じる→材料勘定で消費価格差異を仕訳する」ということが分かります。
※なお、借方、貸方のどちらが材料勘定でどちらが材料消費価格差異勘定なのかは実際に材料勘定を描いてみれば一目瞭然です。
これに対して仕掛品勘定では材料勘定から振り替えたのは予定消費価格による金額です。また完成品として製品に振り替える金額や月初。月末の仕掛金額も予定消費価格によって計算した金額です(完成品や仕掛品の計算に実際消費価格を使用すると、せっかく材料勘定で計算したことが無意味になってしまう)。
従って、仕掛品勘定では予定消費価格のみ登場し実際消費価格は使用しませんので、仕掛品勘定で消費価格差異が発生することはありません。
※ただし、標準原価計算では仕掛品勘定で原価差異が発生するのが工業簿記2級のスタンダードな処理方法(パーシャルプラン)です。シングルプランとの違いも含め詳細は下記の記事を参照。
「材料消費価格差異」という言葉のイメージから材料勘定で仕訳する、と覚えておければそれに越したことはありませんが、価格差異(標準原価計算)を学習すると混同してしまう可能性はあります。
以上の解説の通り。仕訳を再掲します。
<材料消費価格差異の仕訳(不利差異の場合)>
- (借方)材料消費価格差異 ×× (貸方)材料 ××
問題例(ズボンメーカーを例に)
- 当月の活動は次の通り。
- ・布を単価@400円で500枚、購入した。
- ・製造過程に布を400枚(予定消費価格350円)を消費した。
- (問題)材料消費価格差異を求め、発生の仕訳をきりましょう。
<解答>
- (借方)材料消費価格差異 20,000(貸方)材料 20,000 ※
- ※(予定消費価格@350円ー実際消費価格@400円)×実際消費数量400枚=△20,000円(不利差異、借方差異)
次の問題と解説
先入先出法と移動平均法について解説します。どちらも材料の消費金額する消費価格の計算方法。1つ1つの購入と消費の活動を時系列で順番に計算することがポイント。
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