工業簿記2級 直接労務費とは(入門)|計算方法、仕訳と分類(ズボンメーカーの問題例)

更新日:2020年5月19日
作成日:2016年11月6日

前回に引き続き費目別計算のうち労務費について解説します。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

直接労務費について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第1段階の費目別計算に該当します。

費目別計算(ひもくべつけいさん)とは材料費、労務費、経費といった費目を直接費と間接費に分類して計算・集計するための手続きをいいます。

具体的には上記の各勘定連絡図の左側に位置する材料、賃金、経費などの総勘定元帳から、仕掛品や製造間接費に分類して集計する手続きです。

直接労務費とは

直接労務費(ちょくせつろうむひ)とは、労務費のうち、直接、製品毎にどの位の労働時間が発生したのか把握できるものをいいます。

実務では個別の会社によって原価管理の対象範囲やその管理方法が異なりますので、具体的な直接労務費の範囲も厳密には会社によって異なります。

しかし工業簿記2級の範囲では次に解説する通り、直接労務費の範囲は決まっています。

直接労務費の分類と費目別計算

労務費を分類した細目は様々ですが、直接労務費に該当する項目は次の通り、1項目だけです。

従業員労働対価作業時間直接or間接
直接工直接工賃金-基本給+加給金直接作業時間直接労務費

以上の通り、直接工の賃金で、かつ、直接作業時間に該当する部分のみが該当します。

労務費の分類の項目一覧や労務費全般については下記の記事を参照。

覚え方のポイント

直接労務費になるのは、直接工の直接作業時間のみです。

つまり布を切ったり、糸で縫うなどズボンを作っている時間だけです。

日報を書いた時間や待機時間は直接工であっても間接労務費になります。

そして直接工以外の労務費に該当する項目は全て間接労務費です。

直接労務費なのか間接労務費なのか、覚えていないのに問題で出てきた場合には、「製品毎に労働時間を把握できるかどうか考えてみる」こと(イメージしてみる。製品毎に把握できるのはズボンを作っている時間だけ)。

製品毎にどれ位の作業時間が発生したか把握できる場合は直接労務費です。

そして工業簿記の世界では、直接工賃金のうち直接作業時間のみが直接労務費になります。

直接労務費の消費計算

工業簿記2級では直接労務費は予定賃率によって計算する出題パターンがほとんどです。

一方で間接労務費は実際に発生した要支払額によって計算します。

※間接労務費の仕訳や要支払額の解説は下記の記事を参照。

具体的な計算方法は次の通り。

上記で解説した通り、直接工の作業時間のうちズボンを作っている時間だけを予定賃率に掛け算して計算する、ということです。

仕訳方法

直接労務費が発生した場合には賃金や賃金・給料といった勘定科目で計算したのち、仕掛品勘定へ振り替えます。

詳細に解説すると次の通り。

まず、直接工に賃金を支払った際には「(借方)賃金 ×× (貸方)普通預金 ××」と仕訳します(工業簿記では商業簿記のような複雑な給与支払いの仕訳は出題されない)。

賃金には締め日と支払日の関係によって前月未払と当月未払が存在するので、当月の実際発生額を計算するには要支払額を計算します。この計算は賃金勘定によって行われます。

一方で発生した直接工賃金を仕掛品へ振り替える場合の金額は、実際ではなく「予定賃率×実際直接作業時間」で計算する、と上述で説明しました。

この場合の仕訳は「(借方)仕掛品 ×× (貸方)賃金 ××」ですが、金額は実際ではなく予定です。

以上から、賃金勘定では実際賃率と予定賃率の差異である「賃率差異」が把握できます(作業時間は実際金額でも予定金額でも実際を使って計算しているので作業時間差異は発生しない。作業時間差異が発生するのは標準原価計算)。

直接労務費部分に関しては以上です。

仕訳(その他の方法)

実務では様々な部門が存在し、様々な雇用形態や役割を担う人が働いており、賃金勘定に集計する支払の仕訳も沢山になります。従って賃金勘定から仕掛品勘定へ振り替え仕訳を行うと、直接工や間接工それぞれどれだけのコストが発生したのか把握するのが困難になります。

そこで直接工と間接工それぞれの賃金発生額や仕訳を把握するために、「直接労務費勘定」「間接労務費勘定」を経由して仕掛品に振り替え仕訳する方法を採用する場合があります。

問題例(ズボンメーカーを例に)

(例)当月の直接工は直接作業にのみ従事しており、作業時間は500時間であった。なお、直接工は予定賃率を用いて労務費を計算しており、当期の予定賃率は@2,000円である。

次の問題と解説

間接労務費について解説します。直接労務費と間接労務費の分類の覚え方や複数の仕訳パターンについて理解しておくことがポイント。

関連記事