原価計算入門その10~労務費(消費時の計算と仕訳)

作成日:2016年11月6日 更新日:2018年5月17日

前回から引き続き、費目別計算のうち労務費について解説します。

労務費は費目別計算の要素の1つです。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

【学習のポイント】

0.労務費となる要素の分類
1.消費時:労務費の計算と仕訳
 ①直接工の労務費
 ②間接工の労務費
 ③その他の労務費


【消費時の労務費の計算】

「労務費の消費」という言葉は、あまりピンとこないかもしれません。

ですが、材料費と同じように、「ズボンを作るのに投入する(作業する)」といった解釈で間違いはありません。

以下、直接工の場合と間接工の場合に分けて解説します。

【直接工の場合】
前回解説したように、直接工は全ての作業時間が直接作業時間になるわけではありません。

直接作業時間になるのは、作業時間のうち直接作業した時間だけです。
例えば、直接工であっても日報を書いた時間(間接作業時間)や手待ちの時間は、直接作業時間には含めません。

直接工の労務費は、賃率×作業時間で計算します。

従って、直接労務費は「賃率×直接作業時間」で計算し、間接労務費は「賃率×間接作業時間」で計算します。

例えば、直接工全員の平均賃率が1,800円、作業時間が2,500時間(うち直接作業時間2,100時間、間接作業時間300時間、手待時間100時間)とすると、

直接労務費 = @1,800円 × 2,100時間 = 3,780,000円
間接労務費 = @1,800円 × (300時間 + 100時間) = 720,000円
となります。

賃率は実際ではなく、予定賃率を使用することがほとんどです。予定賃率については今回の解説では割愛します。

※費目別計算で扱う予定単価は、「原価計算入門その14~予定単価(費目別計算)」で解説しています。



【間接工の場合】
直接工と異なり、間接工は全ての作業時間が間接労務費になります。
従って直接工の労務費計算のように賃率や作業時間は使用しません。

また、労務費の計算方法も直接工とは異なります。

それでは、何に基づいて労務費を計算するかというと、「支払額」です。
正確には、支払額と未払額(未払費用)の情報を使って当月の労務費を計算します。

例えば、この衣服メーカーの賃金支払いは20日締め当月25日払いとします。

また、間接工の賃金について
10月25日の支払額:785,000円(うち9月21日~30日分の支払額は、245,000円)
10月21日~31日までの未払金額:255,000円

上記の設定で間接工の10月の労務費(の消費)を計算してみましょう。

労務費の消費とは、対象期間(ここでは10月)に作業した労働の対価(賃金)をいいます。

今回の例では締め日が20日のため、10月25日の支払額の対象期間は「9月21日~10月20日」です。

従って、785,000円がそのまま答えではありません。
「10月1日~10月31日」になるように調整が必要です。

そこで、次の通り計算します。
(9月21日~10月20日)785,000円 + (10月21日~10月31日)255,000円 - (9月21日~9月30日)245,000円 = 795,000円

以上から、間接工の労務費(間接労務費)は795,000円が答えです。

このように当月に発生した労務費の消費額を要支払額といいます。

間接工の労務費=要支払額となります。

【その他】
従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、その他の法定福利費(健康保険、厚生年金など。社会保険料とも)は、間接工と同様、労務費は要支払額を計算します。

ただし、問題の設定では間接工のようにややこしい計算はしません。まず、載っている金額=要支払額と考えておいて間違いありません(ひねくれた問題でなければ)。



【労務費の仕訳】

上記直接工の例を使用して解説します。次の通り支払額の設定を追加します。

10月25日 直接工に賃金4,350,000円を支払った。うち、9月20日~30日の支払額は1,300,000円である。
10月21日~31日までの未払額は、1,450,000円である。
※間接工の設定と同じく、20日締め、当月25日払い

上記の例では、平均賃率@1,800円でしたが、今回は支払額を追加しました。

<支払関係の仕訳>
10月25日 (借方)賃金・給与 4,350,000 (貸方)諸口 4,350,000
10月31日 (借方)賃金・給与 1,450,000 (貸方)未払費用 1,450,000

※諸口の部分は様々な勘定科目が含まれています。給与の控除項目である源泉税や住民税、社会保険料(法定福利費)の従業員負担分を会社が預かるからです。従って、諸口には普通預金、源泉税預り金、社会保険料預り金などが含まれます。

Tフォームにすると次の通りです。

賃金・給与勘定
(支払)
10/25 諸口 4,350,000円(9/21-10/20)
10/1 未払費用 1,300,000円(9/21-9/30)
10/31 未払費用 1,450,000円(10/21-10/31)(消費)
10/31 ? 4,500,000円(10/1-10/31)

10/31の消費「?」は、直接工のため直接労務費と間接労務費に分ける必要があります。

金額は上記で解説しました。次の通り仕訳します。

<労務費の消費時の仕訳>
(仕訳パターンその1:労務費勘定を使用する場合)
直接労務費
(借方)労務費 3,780,000(貸方)賃金・給与 3,780,000円
(借方)仕掛品 3,780,000(貸方)労務費 3,780,000

間接労務費
(借方)労務費 720,000(貸方)賃金・給与 720,000
(借方)製造間接費 720,000(貸方)労務費 720,000

(仕訳パターンその2:労務費勘定を使用しない場合)
直接労務費
(借方)仕掛品 3,780,000(貸方)賃金・給与 3,780,000

間接労務費
(借方)製造間接費 720,000(貸方)賃金・給与 720,000

※間接工やその他の労務費も上記の間接労務費の仕訳と同じです。

【終わりに】

今回は労務費の計算と仕訳について解説しました。
次回は労務費のまとめを掲載します。


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