直接経費と間接経費(工業簿記)|違いと原価計算上の分類・仕訳
記事最終更新日:2025年1月8日
記事公開日:2016年11月7日
「経費」という言葉は経理の日常業務でも管理会計の用語としても用いられますが、工業簿記においても登場し、左記とは厳密には異なる意味を持ちます。
本記事では、直接経費と間接経費とは何かについて、両者の違いや原価計算上の分類、及び仕訳を中心に解説します。
※本記事は原価計算基準に基づき文章中心で解説しています。
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経費とは
工業簿記における経費とは費目別計算の原価要素のうち、材料費と労務費以外をいいます。
引用元:原価計算基準
「経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。」
直接経費と間接経費
経費は製品との関係から直接経費と間接経費とに分類し、それぞれ異なる原価計算の手法を適用します。
項目 | 内容 |
---|---|
直接経費 | どの製品にどれだけ消費したのかが直接的に把握できる。 |
間接経費 | どの製品にどれだけ消費したのか直接的には把握できない。 |
経費の計算
実際原価計算における経費は実際発生額又は予め設定した予定価格・予定配賦額に基づき計算します。
また、経費の費目に応じて経費を認識・測定します。例えば、減価償却費であれば月割り計算して月ベースで計上し、水道光熱費の場合には、メーターの測定に基づく実際消費量に基づいて金額を計算します。
引用元:原価計算基準
「一三 経費計算
(一) 経費は、原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし、必要ある場合には、予定価格又は予定額をもって計算することができる。
(二) 減価償却費、不動産賃借料等であって、数ヶ月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については、これを月割り計算する。
(三) 電力料、ガス代、水道料等であって、消費量を計量できる経費については、その実際消費量に基づいて計算する。」
原価計算上の分類
具体的な費目(勘定科目とは異なる)を表して直接経費と間接経費とに分類すると、次の通りです。
費目 | 直接or間接 |
---|---|
外注加工賃 | 直接経費 |
特許権使用料 | |
福利施設負担額 | 間接経費 |
厚生費 | |
減価償却費 | |
賃借料 | |
保険料 | |
修繕料 | |
電力料 | |
ガス代 | |
水道料 | |
租税公課 | |
旅費交通費 | |
通信費 | |
保管料 | |
棚卸減耗費 | |
雑費 |
以下、これらの費目にも言及しながら直接経費と間接経費について説明した後に、仕訳を解説します。
直接経費
一般的には外注加工賃と特許権使用料は直接経費として分類されます。なぜならば、どちらも個別の製品に直接関連して把握できる場合が想定されるからです。
例えば、原材料の加工を自社工場ではなく、外注先に依頼して加工してもらった場合は外注加工賃に該当し、さらに直接材料費になる原材料の加工であるため、どの製品に消費したのか把握できます。
しかし、実務では様々な場合が考えられることから、外注加工賃・特許権使用料に該当するからといって全てのケースにおいて直接経費となるわけではありません。実務においては直接費と間接費の定義に照らし合わせて分類することが重要です。
間接経費
費目が多いため、本記事では理解に役立つポイントについて説明します。
種類
間接経費はその把握の仕方によって「支払経費」「月割経費」「測定経費」「発生経費」という4種類に分類できます。
<間接経費の分類>
種類 | 内容 | 費目例 |
---|---|---|
支払経費 | 支払や請求書の受領時に計上 | 旅費交通費、通信費、保管料、雑費など |
月割経費 | 一定期間の発生額を月割りして計上 | 減価償却費、賃借料、保険料 |
測定経費 | 月次の消費量をもって計上 | 電力料、ガス代、水道料 |
発生経費 | 発生時に実際の発生額で計上 | 棚卸減耗費 |
勘定科目
上記の表で掲載した各費目は原価計算基準上の用語であり、実務で用いられる勘定科目とは微妙に異なる場合があります。一般的な勘定科目を例示すると次の通り。
・減価償却費 ・水道光熱費 ・棚卸減耗費 ・保険料 ・保管費 ・修繕費 ・旅費交通費 ・通信費 ・雑費
販売費及び一般管理費との違い
販売費及び一般管理費の科目と同じ費目が多いですが、一般的には、工場で発生し製造に関連する費用は経費として製造原価に含め、本社で発生した場合など製造に関連しない費用は販売費及び一般管理費として計上します。
(コメント)会計ソフト上の勘定科目
- ・同じ勘定科目を使用せず、例えば、販管費の科目コードは5000番台、原価は6000番台とし、原価の勘定科目には「(原)減価償却費」のように原価を示すワードを付すといった工夫がなされているケースが少なくありません。
経費の仕訳
教科書的な仕訳を示すと次の通り。
種類 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
直接経費 | 仕掛品 | ××× | 現金・未払金など | ××× |
間接経費 | 製造間接費 | ××× | 減価償却累計額など | ××× |
上記の仕訳は複数の仕訳を相殺した後の仕訳型です。端折らずに取引例で説明すると次の通りになります。
直接経費の仕訳
<取引例>
原材料の特殊加工の代金として外注業者から100万円の請求書が届いたため適切に処理する。
<仕訳>
仕訳の意味 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
外注加工費の計上 | 外注加工費 | 1,000,000 | 未払金 | 1,000,000 |
仕掛品への振替 | 仕掛品 | 1,000,000 | 外注加工費 | 1,000,000 |
この2仕訳から外注加工費を相殺して合体させると上記の仕訳型になります。
間接経費の仕訳
直接経費と同様に2仕訳から費用(正確には原価)科目(本例では減価償却費)を相殺後に合体させます。
<取引例>
工場の減価償却費の当月負担額20万円を間接経費として計上する。
<仕訳>
仕訳の意味 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
減価償却費の計上 | 減価償却費 | 200,000 | 建物減価償却累計額 | 200,000 |
製造間接費への振替 | 製造間接費 | 200,000 | 減価償却費 | 200,000 |
参考文献
・岡本清 原価計算[6訂版] 国元書房 2000年
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