工業簿記2級 個別原価計算(製品別計算、仕損費)
作成日:2016年11月16日 更新日:2018年5月25日
前回に引き続き、製品別計算について解説します。
製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し,単位製品の製造原価を算定する手続をいい,原価計算における第3次の計算段階になります。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。
※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
学習のポイント
0.製品別計算の分類
1.個別原価計算
①概要と流れ
②仕損費の計算
2.単純総合原価計算
3.等級別総合原価計算
4.組別総合原価計算
5.工程別総合原価計算
製品別計算(個別原価計算)
前回の設例の続きを解説します。
設例
衣服メーカーは、個別原価計算を採用している。
今月の原価計算の状況と必要なデータは次の通り。
・各要素の計算には予定単価を使用している。
・費目別計算と部門別計算は終了しており、これから製造指図書に原価集計する段階である。
・製造指図書No1101で一部に仕損が発生した(正常な範囲)。そこで、仕損した箇所を補修するために、#1101-2の補修指図書を発行し、補修に必要な原価を集計する。
項目 | #1003 | #1101 | #1102 | #1101-2 |
---|---|---|---|---|
前月製造原価 | 235,000 | - | - | - |
直接材料費 | ||||
直接労務費 | ||||
製造間接費 | ||||
製造原価 | 235,000 | |||
備考 | 前月着手 11/5 完成 売上済 | 今月着手 11/25 完成 未納品 | 今月着手 未完成 | 補修指図書 |
項目 | #1003 | #1101 | #1102 | #1101-2 |
---|---|---|---|---|
布の出庫数(枚) | 300 | 400 | 200 | 15 |
直接労働時間(時間) | 550 | 900 | 600 | 50 |
項目 | 賦課基準または配賦基準 | 予定単価(円) |
---|---|---|
直接材料費 | 布出庫数(枚) | @115 |
直接労務費 | 直接作業時間(時間) | @1,950 |
切抜部門 | 布出庫数(枚) | @650 |
裁縫部門 | 直接作業時間(時間) | @320 |
製品勘定 | |
---|---|
11/1 前月繰越 1,842,000 | 11/30 売上原価 ( ) |
11/5 仕掛品 ( ) | |
11/25 仕掛品 ( ) | 11/30 次月繰越 ( ) |
(問1)原価集計表を完成させましょう。
→(解答)は次の通り。
項目 | #1003 | #1101 | #1102 | #1101-2 |
---|---|---|---|---|
前月製造原価 | 235,000 | - | - | - |
直接材料費 | 34,500 | 46,000 | 23,000 | 1,725 |
直接労務費 | 1,072,500 | 1,755,000 | 1,170,000 | 97,500 |
製造間接費 | 371,000 | 548,000 | 322,000 | 25,750 |
製造原価 | 1,713,000 | 2,349,000 | 1,515,000 | 124,975 |
備考 | 前月着手 11/5 完成 売上済 | 今月着手 11/25 完成 未納品 | 今月着手 未完成 | 補修指図書 |
(問2)製品勘定のTフォームの空欄に金額を埋めましょう。
なお、製品勘定の前月繰越1,842,000円は当月販売され売上計上されている。
個別原価計算(仕損費、製品勘定への振替)
<解答>
(問2)仕掛品、製品、売上原価のどれに該当するのか問題文から読み取ります。
まず(問1)解答までの段階で、費目別計算→部門別計算→製品別計算(原価計算表への原価集計)を経て、当月投入した費用が製造指図書に集計されました。
勘定科目の流れでみると、
直接費→仕掛品
間接費→製造間接費→切取部門・裁縫部門→仕掛品
といった流れで、全ての原価要素が仕掛品に計上されたことになります。
次に各製造指図書が、当月末(11/30)時点で仕掛品なのか製品なのか売上原価なのかを、問題から情報を読み取って判断します。
原価集計表の備考欄より
#1003 :完成=製品 売上済=販売されたので売上原価になった。
#1101 :完成=製品 未納品=売上計上していないので売上原価。
#1102 :未完成=仕掛品
ということが分かります。
個別原価計算(仕損とは)
仕損とは、いわゆる失敗作です。今回の設例には指示がありませんが、例えば製造指図書#1101で製造しているズボン100本のうち5本分だけ、布の切取りに失敗してしまった、といったことが仕損に該当します。
仕損の処理はいくつかありますが、入門の段階では仕損の処理は次の通りです。
・仕損を補修した費用は補修指図書に集計する
・補修指図書に集計した原価は、仕損が発生した製造指図書に賦課する
今回は補修指図書=#1101-2で、仕損が発生したのは#1101。従って、#1101-2の製造原価は全て#1101に賦課します。
#1101は製品であるので、#1101-2の原価も全て製品となります(仕損が正常な発生である場合。もし異常な発生と問題に指示があれば、非原価項目となるため原価にはなりません)。
個別原価掲載(製品・売上原価への振替)
製造が完成し製品になった段階で次の仕訳を行います。
<仕訳>
(借方)製品 ××× (貸方)仕掛品 ×××
また製品が販売され売上計上された時には、次の仕訳になります。
<仕訳>
(借方)売上原価 ××× (貸方)製品 ×××
個別原価計算:設例の解答
以上から問2の解答は次の通りです。
<解答>
製品勘定 | |
---|---|
11/1 前月繰越 1,842,000 | 11/30 売上原価 (3,555,000) |
11/5 仕掛品 (1,713,000) | |
11/25 仕掛品 (2,473,975) | 11/30 次月繰越 (2,473,975) |
補足前月繰越1,842,000円は(問2)の記載の通り、売上計上されているので売上原価になります。
終わりに
今回は設例を用いて個別原価計算の仕損と製品・売上原価への振替について解説しました。
次回は個別原価計算のまとめを掲載します。
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目次
- 〇学習方法 工業簿記2級を学習する3つのコツ(苦手を克服)
- 〇概要 1.はじめに(必ずお読み下さい) 2.概要(原価計算の目的、定義、制度) 3.まとめ(1)実際原価計算 4.まとめ(2)標準原価計算 5.まとめ(3)直接原価計算、その他、損益計算書
- 〇費目別計算 6.材料費(分類と材料副費) 7.材料費(消費と月末の計算) 8.材料費(費目別計算、まとめ) 9.労務費(分類と直接費、間接費) 10.労務費(消費時の計算と仕訳) 11.労務費(まとめ) 12.経費(分類・計算・仕訳) 13.経費(まとめ) 14.予定単価(費目別計算) 15.予定単価(まとめ)
- 〇製造間接費と部門費計算 16.製造間接費(予定配賦) 17.製造間接費(固定費、変動費と配賦差額) 18.製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異) 19.製造間接費(まとめ) 20.部門別計算(製造・補助部門、部門個別費・共通費) 21.部門別計算(直接配賦法と相互配賦法) 22.部門別計算(続・直接配賦法と相互配賦法) 23.部門別計算(まとめ)
- 〇製品別計算(実際原価計算) 24.製品別計算(分類) 25.個別原価計算(概要:製造指図書、原価計算表) 26.個別原価計算(製品別計算、原価計算表) 27.個別原価計算(製品別計算、仕損) 28.個別原価計算(まとめ) 29.単純総合原価計算(概要:進捗度、加工費) 30.単純総合原価計算(製品別計算、度外視法) 31.等級別総合原価計算(製品別計算、等価係数) 32.組別総合原価計算(製品別計算、組間接費) 33.工程別総合原価計算(製品別計算、累加法、前工程費) 34.総合原価計算(まとめ)
- 〇製品別計算(標準原価計算) 35.標準原価計算(概要、原価標準) 36.標準原価計算(標準原価) 37.標準原価計算(価格・数量差異、賃率・作業時間差異) 38.標準原価計算(予算差異、操業度差異、能率差異) 39.標準原価計算(シングルプランとパーシャルプラン) 40.標準原価計算(原価差異の会計処理、まとめ)
- 〇直接原価計算その他 41.CVP分析(損益分岐図表と損益分岐分析) 42.直接原価計算(計算の方法、固定費調整) 43.本社工場会計(工場会計の独立) 44.その他(原価予測、製品の受払い)
- 〇損益計算書・製造原価報告書 45.損益計算書と製造原価報告書