工業簿記2級 総合原価計算とは(入門)|用語(加工費、進捗度)と仕訳

更新日:2020年8月10日
作成日:2016年11月19日

前回に引き続き、製品別計算について。今回は総合原価計算の概要(用語、手続き、仕訳など)を解説。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

総合原価計算の概要について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第3段階の製品別計算に該当します。

製品別計算(せいひんべつけいさん)とは、製品の種類毎に製品一単位の原価を計算する手続きをいいます。

例えば、ジーンズ、チノパンといった製品別に原価を集計し、それぞれの製品の製造実態に合わせて個別原価計算や各種の総合原価計算(単純、等級、組別、工程別)を適用してジーンズ1本、チノパン1本当たりの原価を計算します。

総合原価計算とは

総合原価計算(そうごうげんかけいさん)とは、製品を連続生産(大量生産)する場合に適用する製品別計算をいいます。

項目総合原価計算
説明製品を連続生産(大量生産)する生産形態に適用する(いわゆる見込生産)。
具体例海外ではギャップ(GAP)、国内ではユニクロ(ファーストリテイリング)や無印良品(良品計画)など

総合原価計算はさらに「単純総合原価計算」「等級別総合原価計算」「組別総合原価計算」「工程別総合原価計算」に分けることができます。

項目説明具体例(ズボンメーカー)
単純総合原価計算単一製品の生産1種類のズボンを生産
等級別総合原価計算同種の製品だが、形状、大きさなどが異なる製品を生産S、M、Lサイズのズボンを生産
組別総合原価計算同一工程で異なる製品を生産同じ工程でジーンズとチノパンを生産
工程別総合原価計算製造工程が2以上の連続する工程に分けられ,工程毎に工程製品の総合原価を計算切抜→裁縫→取付の各工程で総合原価を計算する場合

総合原価計算に対して、製品を大量生産ではなく個別の注文毎に受注生産する場合に適用する製品別計算を個別原価計算(こべつげんかけいさん)といいます。

総合原価計算の役割

総合原価計算の役割は、「正確な製品単価の計算」です。

「(第1次)費目別計算→(第2次)部門別計算」といった原価計算手続きで行ってきた「実態の製造活動を原価に反映させる」という目的を引き継いで(第3次)製品別計算である総合原価計算で完成させます。

ボックス図とは

ボックス図とは、総合原価計算の計算問題を解く時に使うTフォーム(勘定元帳)に似た図をいいます。

簡単に言えば、上図のように仕掛品勘定に生産数量や原材料費・加工費の金額を記入したものです。

代表的な描き方はいくつかかありますが、私は1つのボックス図に原材料費と加工費のデータを両方記入して計算しています。カッコ書きの方が加工費です。進捗度(〇〇%)は書かずに換算後の数量(後述する「換算量」)を記入します。

与えられた問題文から上図までの部分を完成させ、その後は先入先出法か平均法を使って右側の完成品原価と月末仕掛品原価を求めるのが典型的な出題パターンです。

加工費とは

加工費(かこうひ)とは、直接労務費と製造間接費を合わせたものをいいます。

日商簿記2級(工業簿記)の出題パターンは「原料は工程の最初(始点)に投入し、加工費は工程を通じて平均的に投入する」であり、この点、原料費と加工費は異なります(ただし過去には原料も加工費と同様、平均的に投入する例外的な出題もあります)。

従って、製品別計算のうち、特に総合原価計算では原価を直接費(原料費)と加工費に分けて計算を行います。具体的には上のボックス図の通り、原料費と加工費をそれぞれ分けて完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。

加工費の数量計算では、特に次に説明するように「進捗度を使って換算量を正確に計算すること」が重要です。

進捗度とは

進捗度(しんちょくど)とは、総合原価計算の製造の進み具合を%(パーセント)表示したものをいいます。すなわち、始点(製造開始時点)であれば「0%」、完成であれば「100%」です。

当月の製造活動のうち、仕掛状態になる部分も同様に考え、例えば半分完了していれば50%、7割完了であれば70%とします。

厳密に考えると、例えば未完成のズボンが100本あったとして、あるズボンは30%、別のズボンは80%といったようになりますが、総合原価計算は大量生産のため、1本1本の進捗度を考慮して原価計算するといくら時間があっても足りません。

そこで、実務では「ここまでの製造まで完了すれば○○%とする」といったように基準を決めたり、進捗度の平均値を求める方法を定めたりと工夫して、効率的かつ効果的な進捗度を設定するような工夫を行います。

換算量とは

換算量(かんさんりょう)とは、当月の生産数量に原料費と加工費を全体の何%(パーセント)投入したのかを反映させて換算した数量をいいます。

日商簿記2級(工業簿記)では、「原料費は始点に投入し加工費は平均的に投入する」と前提を置く出題パターンがほとんどです。従って、同じ進捗度であったとしても原材料費と加工費の投入割合は異なります。

例えば当月の製造では300本分のズボンが月末仕掛となり、進捗度は30%だったとすると、「ズボン何本分の原材料費、加工費が投入された状態なのか」を表すのが換算量です。

計算方法は次の通り。

従って今回の例の場合の換算数量は次の通り。

すなわち、「原料費は製造開始で投入するので、300本分の原材料は仕掛状態であっても、300本分がかならず含まれている。一方で、加工費は工程の珍直度合いで平均して投入するので、30%の進捗度であれば、300本の30%である90本分しか製造投入していない」ということです。

仕損費・減損費と度外視法

仕損(しそん)とは、製品を製造する過程で発生した失敗をいいます。

減損(げんそん)とは、製品を製造する過程でガスや煙となって消失するものをいいます。

仕損や減損に係る原価をそれぞれ、仕損費(しそんひ/しそんじひ)減損費(げんそんひ)といいます。

仕損の場合には、失敗作であっても価値がある場合があります。このような仕損によって発生した価値のある失敗品を仕損品(しそんひん/しそんじひん)といいます。仕損費・減損費とも、仕損品の処分価値の処理を除いて計算方法は同じです。

日商簿記2級(工業簿記)の総合原価計算では、仕損費・減損費が発生した出題パターンでは「度外視法(どがいしほう)」といわれる方法で完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。

より具体的に説明すると、度外視法とは「仕損費・減損費を完成品原価と月末仕掛品原価のどちらに含める(負担させる)のか」に関する処理方法の一つです(別の方法に非度外視法(ひどがいしほう)がありますが、日商簿記2級の範囲外です)。

度外視法は次の通り、「仕損・減損がどの時点で発生したのか」によって処理が異なります。

問題によっては仕損品に処分価値がある場合があります。この場合にも「仕損費・減損費がどの時点で発生したのか」によって処理が異なります。

以上、総合原価計算の用語や計算方法を解説しましたが、言葉を暗記するよりも次の記事のような単純原価計算の問題を繰り返し解けば理解できるようになります。

総合原価計算の勘定科目

工業簿記2級で出題される勘定科目の例は次の通り。

・製造間接費 ・仕掛品 ・仕掛品-原料費 ・仕掛品-加工費 ・仕掛品-〇〇工程 ・仕掛品-前工程費 ・製品 ・製品○○ ・原料費 ・加工費

総合原価計算の原価計算手続き

4種類の総合原価計算に共通する原価計算手続きは次の通り。

以下、それぞれの手続きについて計算方法や仕訳も含めて説明します。

(1)受注

お客より注文を受けた段階では、特に原価計算手続はありません。製造指図書を発行した個別原価計算とは異なる点です。

個別原価計算では、注文の都度、製造指図書を発行し、製造指図書を生産単位として製造します。

これに対して、総合原価計算では見込み生産を行い、注文に関係なく大量生産を行います。

(2)費目別計算と部門別計算

この手続きは個別原価計算と同じです。

製品別計算を行う前に、第1次と第2次の原価計算手続きである費目別計算と部門別計算を行います。

費目別計算の段階で直接材料費と直接労務費(外注加工賃があれば直接経費も)の材料消費価格や平均賃率を計算します。

製造間接費はさらに部門別計算を行った結果、製造部門別に配賦率を計算します。

(3)当月製造原価の投入と仕訳

費目別計算や部門別計算で計算した単価や配賦率に、各費目の当月製造投入量(消費量)を掛け算して、当月投入した製造原価を計算します。

直接材料費や直接労務費(あれば直接経費も)は「材料単価×消費量」「平均賃率×作業時間」で計算し、製造間接費は「配賦率×配賦基準」で計算します。

総合原価計算の出題があった場合に毎回ではありませんが、外注加工賃(直接経費)が出題される場合があります。

直接材料費は材料勘定、直接労務費は賃金勘定、直接経費は外注加工費、製造間接費は製造間接費勘定から仕掛品勘定へそれぞれ振り替える仕訳をきります。

その他、材料費や賃金ではなく、直接材料費勘定や直接労務費勘定を設定している場合や、部門毎の製造間接費勘定(例えば製造間接費-〇〇部門)といった仕訳パターンも存在します(下記の関連記事にて解説)。

(4)完成品原価と仕掛品原価の計算と仕訳

ボックス図を描き、当月原価データを記入して、完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。

「総合原価計算の種類」「先入先出法 or 平均法」「仕損・減損の発生有無」「それぞれの進捗度と生産数量」などの情報を読み取って正確に計算します。

仕損・減損が発生した場合には、仕損費・減損費の処理を行います。

処理方法は上述「仕損費・減損費と度外視法」の説明の通りです。

次に仕訳ですが、完成品原価は製品になるので、仕掛品勘定から製品勘定へ振り替える仕訳をきります。月末仕掛品はこの段階の仕訳はありません。

等級別総合原価計算や組別総合原価計算で仮に製品が複数存在する場合の仕訳は次の通り。

工程別総合原価計算で第1工程の完成品(前工程費)を第2工程へ振り替える場合。

※日商簿記2級(工業簿記)では、商業簿記と異なり勘定科目の出題範囲は決まっていません。問題で与えられた勘定科目を使って解答します。

(5)その他

実務では個別原価計算と同じく総合原価計算であっても製造間接費の差異分析が存在します。しかし最近の過去問を分析する限り、日商簿記2級(工業簿記)の総合原価計算の出題では差異分析が含まれることはありません(原価差異を含めると問題のボリュームが多すぎるからと考えられます)。

次の問題と解説

単純総合原価計算についてズボンメーカーを例に問題を掲載して解説します。ボックス図を描き、与えられた生産データを読み取って正確に完成品原価と月末仕掛品原価を計算できるかどうかがポイント。

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