原価計算入門その30~単純総合原価計算(製品別計算、度外視法)

作成日:2016年11月19日 更新日:2018年5月26日

前回に引き続き、製品別計算について解説します。

製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し,単位製品の製造原価を算定する手続をいい,原価計算における第3次の計算段階になります。

下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

【学習のポイント】

0.製品別計算の分類
1.個別原価計算
 ①概要と流れ ②仕損費の計算
2.単純総合原価計算
 ①概要と流れ ②度外視法
3.等級別総合原価計算
4.組別総合原価計算
5.工程別総合原価計算


【製品別計算(単純総合原価計算)】

今回は設例を用いて解説します。

【設例】
衣服メーカーは、1種類のズボンを生産しており、原価計算方法は単純総合原価計算を採用している。

今月の原価計算の状況と必要なデータは次の通り。
・費目別計算と部門別計算は終了。これから製品別計算を行う段階
・直接材料費は製造工程の最初に全て投入。加工費は製造の進捗度合いに応じて投入
・原価を完成品と月末仕掛品に配分する方法として、先入先出法を用いる。
・正常仕損は工程の途中で発生

1.生産データ
 月初仕掛品 400本(50%)
 当月投入 ○○本
  合計  ○○本
 正常仕損  20本
 月末仕掛品 300本(30%)
 完成品   1,500本
※()内の数字は加工費の進捗度である。
※○○の数字は各自計算すること。

2.原価データ
月初仕掛品原価
 直接材料費   47,200円
 加工費    173,600円
当月製造費用  
 直接材料費  168,000円
 加工費   1,244,050円

(問題)当月の完成品原価と月末仕掛品原価を求めましょう。



【度外視法】

仕損や減損が発生した場合には度外視法を用いて計算します。

仕損(しそんじ、又はしそん)は「原価計算入門その27~個別原価計算(製品別計算、仕損)」で解説した通り、失敗品をいいます。

減損(げんそん)とは、加工中に気体となって蒸発したり、ガス化したことによって材料が減少することをいいます。製品別計算上の処理方法は仕損と同じです。

度外視法とは次の方法による計算方法をいいます。
仕損・減損が
(工程の途中で発生)仕損・減損の費用は完成品と月末仕掛品の両方に負担させる
→計算では仕損・減損は存在しないとみなして計算する。
(工程の最後で発生)仕損・減損の費用は完成品のみに負担させる
→計算では仕損・減損は完成品とみなして計算する。



【単純総合原価計算(製品別計算、度外視法)】

<解答>
問題のデータから表を作成します。差し引き計算から当月投入の本数を求めます。

問題に指示がなくとも、仕損と減損の計算は度外視法を採用します。
「仕損は工程の途中で発生」と問題の指示にあります。従って、度外視法により完成品と月末仕掛品の両方に負担。仕損の本数は発生しなかったとみなして無視して計算します。

Tフォームは次の通り。

仕掛品
月初仕掛品 400本(200本※1)完成品 1,500本(1,500本※2)
 47,200円(173,600円)
当月投入 1,400本※4(1,390本※4)
 168,000円(1,244,050円)
月末仕掛品 300本(90本※3)

【補足】
()内は加工費換算の本数と原価。加工費に換算した本数は本数×進捗度で計算
※1:400本×50%=200本
※2:完成品は加工費の進捗度は100%。従って1,500本
※3:300本×30%=90本
※4:左側と右側の差額で計算

問題の指示より、単価の計算として先入先出法を用います。
→上記の表から月末の仕掛品原価は当月投入原価を用いて計算。
完成品原価は左側の合計と月末仕掛品原価との差額計算で求めます。

月末仕掛品原価
 直接材料費:(168,000円÷1,400本)×300本=36,000円
 加工費  :(1,244,050円÷1,390本)×90本=80,550円
 月末仕掛品原価:36,000円+80,550円=116,550円(解答)

完成品原価
 直接材料費:47,200円+168,000円-36,000円=179,200円
 加工費  :173,600円+1,244,050円-80,550円=1,337,100円
 完成品原価:179,200円+1,337,100円=1,516,300円(解答)

仕掛品
月初仕掛品 400本(200本)完成品 1,500本(1,500本)
 47,200円(173,600円) 179,200円(1,337,100円)
当月投入 1,400本(1,390本)
 168,000円(1,244,050円)
月末仕掛品 300本(90本)
 36,000円(80,550円)
【終わりに】

今回で単純総合原価計算の解説が終了しました。
次回は等級別総合原価計算を解説します。


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