組別総合原価計算の解き方|組間接費の計算方法と仕訳
記事最終更新日:2021年12月20日
記事公開日:2016年11月19日
組別総合原価計算と組間接費について問題例を使って解説します。
組別総合原価計算とは
組別総合原価計算とは、種類が異なる製品を同じ工程で連続生産(大量生産)する場合に適用する製品別計算をいいます。
引用元:原価計算基準
「組別総合原価計算は、異種製品を組別に連続生産する生産形態に適用する。」
組別総合原価計算では、まず当月投入する製造原価を組直接費(または材料費)、組間接費(または加工費)それぞれ各製品にあん分するところから計算が始まります。
組直接費(または材料費)は各製品に賦課し、組間接費(または加工費)は適切な配賦基準に基づき各組別製品に配賦します。
その後の計算方法は単純総合原価計算と同じです。各製品ごとにボックス図を描き単純総合原価計算と同様に計算します。
引用元:原価計算基準
「組別総合原価計算にあっては、一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け、個別原価計算に準じ、組直接費又は原料費は、各組の製品 に賦課し、組間接費又は加工費は、適当な配賦基準により各組に配賦する。」
問題例(組別総合原価計算と組間接費)
設例を用いて解説します(簿記2級のレベルでは「普通」レベル。一部応用問題あり)。
<問題例-組別総合原価計算>
- 当社は2種類のズボン(ジーンズとチノパン)を製造しており、原価計算制度として組別総合原価計算を採用している。
- 今月の原価活動の状況と必要なデータは次の通り。
- ・原料費は製造工程の始点に投入し、加工費は平均的に投入する。
- ・原価を完成品と月末仕掛品に配分する方法として、平均法を用いる。
- (問1)加工費の予定配賦率を求めましょう。
- (問2)各組別製品の完成品原価を求めましょう。
- (問3)各組別製品の完成品原価計上の仕訳をきりましょう(「ジーンズ」「チノパン」「仕掛品-ジーンズ」「仕掛品-チノパン」の各勘定科目を使用すること)。
1.生産データ
項目 | ジーンズ | チノパン |
---|---|---|
月初仕掛品 | 300本(50%) | 500本(40%) |
当月投入 | ○○本 | ○○本 |
合計 | ○○本 | ○○本 |
月末仕掛品 | 400本(60%) | 700本(50%) |
完成品 | 1,400本 | 2,000本 |
2.原価データ
項目 | ジーンズ | チノパン | |
---|---|---|---|
月初仕掛品 | 原料費 | 72,000円 | 75,000円 |
加工費 | 225,680円 | 172,350円 | |
当月製造費用 | 原料費 | 369,000円 | 338,100円 |
加工費 | 3,800,000円 |
3.組間接費
・加工費は当月の直接労働時間を配賦基準として各製品に配賦する。
・当月の直接労働時間は1,000時間(ジーンズ550時間、チノパン450時間)
解答
<解答(問1)(問2)-加工費の予定配賦率、完成品総合原価と仕掛品原価>
- 加工費の予定配賦率 = @3,800円
- 完成品総合原価 ジーンズ 2,319,800円 チノパン 1,908,000円
<解答(問3)-組別製品の完成品原価計上の仕訳)>
- (借方)ジーンズ 2,319,800 (貸方)仕掛品-ジーンズ 2,319,800
- (借方)チノパン 1,908,000 (貸方)仕掛品-チノパン 1,908,000
(1)組間接費(加工費)の処理
上述の通り、組間接費(または加工費)は配賦基準に基づき各組別製品に配賦します。
問題では当月投入の組間接費(または加工費)は組別製品には分けずに全体で与えられます。本問でも原料費は組別製品毎に原価データが与えられていますが、当月投入の加工費はジーンズ、チノパンの合計で3,800,000円になっています。
配賦基準を探すと、「組間接費は当月の直接労働時間で各製品に配賦する。」「当月の直接労働時間は1,000時間(ジーンズ550時間、チノパン450時間)」とあるので、当月直接労働時間を配賦基準として、加工費をジーンズとチノパンに按分します。
<ポイント:組間接費(加工費)の予定配賦率の計算>
- ・加工費の予定配賦率 = 当月投入加工費3,800,000円 ÷ 当月直接労働時間1,000時間 = @3,800円 ←(問1)の解答
<ポイント-組別製品の加工費の計算>
- ・加工費(ジーンズ) = 予定配賦率@3,800円 × 当月直接労働時間550時間 = 2,090,000円
- ・加工費(チノパン) = 予定配賦率@3,800円 × 当月直接労働時間450時間 = 1,710,000円
(2)ボックス図と生産・原価データの記入
ボックス図は次の通り。
仕掛品-ジーンズ | |
---|---|
月初仕掛品 300本(150本) | 完成品 1,400本(1,400本) |
72,000円(225,680円) | |
当月投入 1,500本(1,490本) | |
369,000円(2,090,000円) | 月末仕掛品 400本(240本) |
仕掛品-チノパン | |
---|---|
月初仕掛品 500本(200本) | 完成品 2,000本(2,000本) |
75,000円(172,350円) | |
当月投入 2,200本(2,150本) | |
338,100円(1,710,000円) | 月末仕掛品 700本(350本) |
ボックス図の書き方や加工費の数量計算(進捗度と換算量)は下記の記事を参照。
(3)完成品原価と月末仕掛品の計算
次にボックス図の数字に従って、原料費と加工費それぞれの完成品原価と月末仕掛品原価を求めます。
問題文より計算には平均法を使います。
具体的には、ボックス図の左側の原価合計(月初仕掛品+当月投入)を数量の合計で割り算して単価を計算することで完成品原価を求めます。
<ポイント-完成品原価と月末仕掛品原価の計算(平均法)>
- ・ジーンズの完成品原価
- 原料費 =(72,000円 + 369,000円)÷(300本 + 1,500本)× 1,400本 = 343,000円
- 加工費 =(225,680円 + 2,090,000円)÷(150本 + 1,490本)× 1,400本 = 1,976,800円
- 完成品原価 = 343,000円 + 1,976,800円 = 2,319,800円 ←(問2)の解答
- ・チノパンの完成品原価
- 原料費 =(75,000円 + 338,100円)÷(500本 + 2,200本)× 2,000本 = 306,000円
- 加工費 =(172,350円 + 1,710,000円)÷(200本 + 2,150本)× 2,000本 = 1,602,000円
- 完成品原価 = 306,000円 + 1,602,000円 = 1,908,000円 ←(問2)の解答
仕掛品-ジーンズ | |
---|---|
月初仕掛品 300本(150本) | 完成品 1,400本(1,400本) |
72,000円(225,680円) | 343,000円(1,976,800円) |
当月投入 1,500本(1,490本) | |
369,000円(2,090,000円) | 月末仕掛品 400本(240本) |
98,000円(338,880円) | |
仕掛品-チノパン | |
---|---|
月初仕掛品 500本(200本) | 完成品 2,000本(2,000本) |
75,000円(172,350円) | 306,000円(1,602,000円) |
当月投入 2,200本(2,150本) | |
338,100円(1,710,000円) | 月末仕掛品 700本(350本) |
107,100円(280,350円) | |
(4)仕訳(組別製品の完成品原価の計上)
完成品は仕掛品から製品に振り替える仕訳をきります。
ただし本問では、「ジーンズ」「チノパン」「仕掛品-ジーンズ」「仕掛品-チノパン」の各勘定科目を使用するように指示があるので、借方は製品勘定ではなく、左記の勘定科目を記入し、金額は各組別製品の完成品原価を記入します。
<解答(問3)-組別製品の完成品原価計上の仕訳)>
- (借方)ジーンズ 2,319,800 (貸方)仕掛品-ジーンズ 2,319,800
- (借方)チノパン 1,908,000 (貸方)仕掛品-チノパン 1,908,000
解答のポイント
最後に本問の解答のポイントを掲載します(総合原価計算共通の解き方の部分を含む)。
<解答のポイント-等級総合原価計算と等価係数>
- ・問題の生産・原価データや仕損・減損の設定を読み取り、ボックス図を正確に描く
- ・先入先出法なのか平均法なのかを読み取り、仕損・減損の発生時点の情報と併せて完成品原価と月末仕掛品原価を計算
- ・仕損・減損の処理は度外視法(発生時点により2通りの方法)
- ・組間接費(加工費)は与えられた配賦基準に基づき、各組別製品に配賦する。
- ・完成品原価計上の仕訳:仕掛品→製品(各等級製品)への振り替え
関連記事(個別・実際原価計算)
※電子書籍WEB版(フリー)の一覧は「PDCA会計 日商簿記2級 工業簿記詳解-傾向と対策(電子書籍WEB阪)」内の「第5章 個別原価計算」及び「第6章 総合原価計算」に掲載
- ・製品別計算とは|概要、種類と手続き
- ・個別原価計算とは|概要と手続きの流れを解説
- ・製造指図書と原価計算表、補修指図書とは|集計の仕方と仕訳
- ・総合原価計算とは|種類と手続き
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- ・ボックス図と書き方|計算方法も解説
- ・度外視法とは|仕訳と計算方法の解き方
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- ・組別総合原価計算の解き方|組間接費の計算方法と仕訳
- ・工程別総合原価計算の解き方と累加法、前工程費
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