用語解説|原価標準(標準原価カード)とは(工業簿記2級例題付き)
記事最終更新日:2025年5月19日
記事公開日:2016年11月27日
今回は原価標準(標準原価カード)について解説します。原価計算の種類でいうと「標準原価計算」の手続きに該当します。
標準原価計算とは製品を標準原価で計算する原価計算制度をいい、主に原価管理の目的で採用します。実際原価計算では把握できない数量差異や能率差異を把握することで、原価活動の能率改善に役立ちます。
<今回の学習ポイント>
- ・原価標準(原価計算カード)とは何か?
- ・計算方法と手続きを理解する
- ・問題例(ズボンメーカーを例に)を解く
原価標準(標準原価カード)とは
「原価標準(げんかひょうじゅん)」とは、製品1単位を製造するのにかかる標準原価のことをいいます。日商簿記の試験では「標準原価カード」として出題されます。
※原価標準と標準原価は別々の用語です。間違えやすいので注意しましょう。
役割
当月に要した製品の製造原価は、「(製品1単位当たりの原価)× 実際生産量」で計算します。
そこで、この式のうち「製品1単位当たりの標準原価(すなわち原価標準)」を予め設定しておく必要があります。
具体的には上記のイメージのように、直接材料費、直接労務費、製造間接費といった費目毎に設定して「標準原価カード」にします。
計算式
原価標準は次の式で計算します。
<ポイント>原価標準の計算式
- 原価標準 =(各費目の標準価格)×(各費目の1製品当たり標準消費量)の合計
例えば上の標準原価カードでは、ズボンの製造に必要な布(直接材料費)は「1枚当たり標準価格(標準単価)120円×ズボン1本当たり消費枚数1.0枚=120円」で設定しています。つまり、ズボン1本を製造するのに直接材料費120円の標準コストを要することを意味し、この120円を原価目標として製造活動を行います。
手続き
標準原価計算は総合原価計算で利用される場合が多いので、総合原価計算を想定して手続きの流れを説明すると次の通り。
(手続き1)各費目の標準価格と標準消費量の設定
直接材料費、直接労務費、製造間接費のそれぞれについて、標準価格と製品の完成に要する1製品当たりの標準消費量を設定します。
(手続き2)原価標準の計算
1.で設定した各費目について、標準価格×製品1単位当たりの標準消費量を計算し、各費目を合計することで製品1単位当たりの標準原価、すなわち原価標準を設定します。
問題例(ズボンメーカーを例に)
設例を用いて解説します(理解するための問題)。
<問題例-標準原価計算(原価標準)>
- 当社はズボンを生産しており、原価計算方法は標準原価計算を採用している。
- 原価標準に関するデータは次の通り。
- ・直接材料費:標準価格@120×標準消費量1枚 = 120円
- ・直接労務費:標準賃率@2,000×標準直接作業時間0.25時間 = 500円
- ・製造間接費:標準配賦率@1,440円×標準直接作業時間0.25時間 = 360円
- (問題)原価標準を求めましょう。
標準消費量とは、ズボン1本当たりに要する標準の消費量です。
例えばズボンの製造について、布は直接材料費ですが、「ズボン1本を製造するための標準の消費量は1枚」ということを意味します。
ズボンの原価標準とは「ズボン1本当たりに要する標準原価」です。従って、原価標準を求めるには、直接材料費、直接労務費、製造間接費それぞれの「標準価格×標準消費量」を合計します。
<解答-標準原価計算(原価標準)>
- 直接材料費120円 + 直接労務費500円 + 製造間接費360円 = 980円
- 原価標準 = ズボン1本当たりの標準原価 = @980円
次の問題と解説
標準原価についてズボンメーカーの設例を用いて解説します。
標準原価の計算式には今回解説した原価標準が登場します。計算式が分かりにくく、原価標準と間違って覚えやすいです。解説を読んで理解した後に、頭と手を働かせて問題を解くことでイメージが定着していきます。
