工業簿記2級 標準原価計算(概要、原価標準)

作成日:2016年11月27日 更新日:2017年5月30日

今回から、標準原価計算について解説します。

標準原価計算とは、これまで解説してきた原価計算(実際原価計算といいます)と比較される原価計算制度であり、原価の算定に当たっては実際の価格、数量は用いず、標準価格と標準数量によって原価を算定する方法です。

標準原価計算の目的として最も重要なのが、原価管理を効果的に行うことです。

下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

学習のポイント

0.標準原価計算の概要 ①原価標準
1.標準原価の計算
2.原価差額の差異分析 ①材料費 ②労務費 ③製造間接費
3.仕訳処理 ①パーシャルプランとシングルプラン
4.原価差額の会計処理 ①売上原価加減法

標準原価計算(概要)

標準原価計算とは、冒頭に述べたように、原価の標準を価格面と数量面の両方で設定し、原価は、標準原価を用いて計算する方法をいいます。

今まで解説してきた方法では、原価は次の通り計算していました。

実際価格×実際数量=実際原価
※価格は実際ではなく、予定を採用することも可

これに対して、標準原価計算では次の通り原価を計算します。

標準価格×標準数量=標準原価

「標準」とは、実際ではなく、科学的・統計的な調査により設定された価格・数量をいいます。標準価格には、予定価格を使用することができるため、標準=予定と考えればイメージしやすいと思います。

標準原価計算の流れ

標準原価計算は総合原価計算で利用される場合が多いので、総合原価計算を想定して手続きの流れを説明します。

1.原価標準の設定
直接材料費、直接労務費、製造間接費のそれぞれについて、標準価格と製品の完成に要する標準数量を設定します。
設定後、各費目について標準価格×標準数量により、標準原価を算定し、各費目を合計することで、製品1単位当たりの標準原価(原価標準といいます)を設定します。

原価標準の設定(具体例)
 直接材料費 標準価格@120 ×標準消費量1枚=120円
 直接労務費 標準賃率@2,000×標準直接作業時間0.25時間=500円
 製造間接費 標準配賦率@1,440円×標準直接作業時間0.25時間=360円
合計(原価標準=ズボン1本当たりの標準原価) @980円

2.標準原価の計算
生産量データと原価標準から、標準原価を計算します。

例:ズボンを1,000本、生産した。
標準原価=@980円×1,000本=980,000円

3.実際原価の計算
これまでに解説してきた方法によって、実際にかかった原価を計算します。

4.標準原価差額の計算と差額の原因分析
標準原価と実際原価との原価差額(標準原価差額)を費目別(直接材料費、直接労務費、製造間接費)に計算します。
計算したそれぞれの原価差額について、さらに主に価格面と数量面その他の差異に分けることで、原因分析を行います。

5.標準原価差異の記帳(仕訳)
シングルプランまたはパーシャルプランにより、標準原価差異を記帳します(仕訳を行います)。

6.製造原価報告書、損益計算書への反映(原価差額の会計処理を含む)
集計した各科目の残高を製造原価報告書、損益計算書へ反映させます。

標準原価差額は、原則として全額売上原価に賦課します。
※材料受入価格差異は別の方法で処理しますが、簿記2級では説明を割愛します。

補足:原価管理と標準原価計算について

標準原価計算の重要な目的の一つに「原価管理を効果的に行うこと」があります。

メーカーはモノ・サービスを作り、お客に販売して、儲け(=利益)を獲得することを企業活動の目的としています。

売上-売上原価=売上総利益であるため、利益を増やすには、売上を増やすか、売上原価を減らせば良いことになります。

このうち、後者の売上原価を減らすために行う活動の一つとして欠かせないのが原価管理ということになります。

標準原価とは原価の目標値になります。
例えば、ズボン1本の原価標準を1,000円に設定して、今月の製造活動を行い、実際原価との差額を分析してみます。

分析の結果、「実際原価 > 標準原価」になった場合には、目標である標準原価に近づくように差額分析の結果に基づいて原価低減活動を行います。

もし「実際原価 < 標準原価」になった場合には、目標はクリアできました。
そこで、例えば今度は原価標準を950円にするなど、より高い目標を掲げて活動します。

標準原価ではなく、予定原価を採用することでも、ある程度は原価管理に役立てることができます。

しかし、予定原価は予定単価×実際数量で求められ、単価の目標は設定できても、数量の目標は設定することができません。

これに対して、標準原価は標準単価×標準数量で求められ、単価と数量の両面で、目標を設定することができます

このように原価管理は、より低いコストに抑えるための原価低減活動に役立つものであり、有効に原価管理を行うのであれば、標準原価計算を採用することが望ましい、ということになります。

終わりに

今回は標準原価計算の概要を解説しました。
次回から設例を用いて標準原価計算の各論を解説します。

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