工業簿記2級 価格・数量差異、賃率・作業時間差異の計算方法(入門)|ズボンメーカーの問題例

更新日:2020年5月4日
作成日:2016年12月4日

前回に引き続き、標準原価計算について解説します。

今回は原価差異のうち、材料費の価格差異、数量差異。

そして労務費の賃率差異、作業時間差異に関する解説です。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

標準原価計算(材料費と労務費の原価差異)の計算方法(ズボンメーカーの問題を例に)

前回からの設例の続き(問2から)になります。

<設例(前回までに分かったことは問題に反映しています)>
衣服メーカーはズボンを生産しており、原価低減を目的として原価管理を行うことから、原価計算方法は標準原価計算を採用している。

今月の原価計算の状況と必要なデータは次の通り。
・直接材料費は各工程の最初に全て投入。加工費(直接労務費+製造間接費)は各工程の製造の進捗度合いに応じて投入
・操業度として直接作業時間を採用している。

1.生産データ

項目本数(進捗度)
月初仕掛品200本(50%)
当月投入1,800本(1,600本)
合計2,000本(1,700本)
月末仕掛品500本(40%)
完成品1,500本(1,500本)

※()内の数字は加工費の進捗度である。

2.原価標準

項目原価標準
直接材料費標準価格@120 ×標準消費量1枚=120円
直接労務費標準賃率@2,000×標準直接作業時間0.25時間=500円
製造間接費標準配賦率@1,440円×標準直接作業時間0.25時間=360円
合計(完成品)@980円

※月間の基準操業度は450時間。基準操業度の変動費率は@480円 固定費予算額は432,000円である。

3.実際原価データ

項目原価標準
直接材料費225,700円(122円×1,850枚)
直接労務費798,000円(1,900円×420時間)
製造間接費630,000円(実際直接作業時間は420時間であった)

(問1)当月に投入した標準原価(標準直接材料費、標準直接労務費、標準製造間接費)を求めましょう。
→前回に解説済みです。
 標準直接材料費=1,800本×120円=216,000円
 標準直接労務費=1,600本×500円=800,000円
 標準製造間接費=1,600本×360円=576,000円(解答)

 

(問2)次の通り、原価差異の差額分析を行いましょう。
 (1)直接材料費:価格差異と数量差異 ←今回の解説
 (2)直接労務費:賃率差異と作業時間差異 ←今回の解説

 (3)製造間接費:予算差異、操業度差異、および能率差異

※問1と問2(3)の解説は下記を参照。

標準原価計算の原価差異と差異分析(実際原価計算との比較)

実際原価計算の差異分析は、「製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異)」にて製造間接費の差異分析について解説しましたが、予算差異と操業度差異を計算して差異分析を行いました。

具体的には製造間接費の差異分析では予定配賦率と基準操業度から予定原価を計算し、さらに予算許容度を求め、実際原価との差額から予算差異や操業度差異を計算しました。

標準原価計算では次のデータを用いて差異分析を行います。
 (1)標準単価(価格、賃率など)を用いる。
 (2)標準数量を用いる。
 (3)基準操業度と実際操業度だけでなく、標準操業度を用いる。

標準原価計算と実際原価計算の差異分析を比較すると次の通り。

項目実際原価計算による差異分析標準原価計算による差異分析
直接材料費価格差異価格差異、数量差異
直接労務費賃率差異賃率差異、作業時間差異
製造間接費予算差異、操業度差異予算差異、操業度差異、能率差異

直接材料費差異(価格差異、数量差異)

直接材料費差異は次の通り計算します。

直接材料費差異 = 標準直接材料費 - 実際直接材料費
= 価格差異 + 数量差異

結果がマイナス(△)になった場合には不利差異(借方差異)、プラスになった場合は有利差異(貸方差異)といいます。

※結果がプラス→標準 > 実際→原価(コスト)は標準(目標)よりも抑えることができた→有利差異
とイメージしましょう。

直接材料費差異は、価格差異と数量差異に分けることができます。

次の図を用いると簡単に問題が解けます。

価格差異=(標準価格-実際価格)×実際数量
数量差異=標準価格×(標準数量-実際数量)

※(標準-実際)です。
また、図のうち点線で囲んだ部分は価格差異に含まれますが、式だけを暗記しようとすると、この部分が価格差異なのか数量差異なのか忘れてしまうことがあります。従って図で覚えておきましょう。

直接労務費差異(賃率差異と作業時間差異)

直接労務費差異は直接材料費差異と同様に求めます。

直接労務費差異 = 標準直接労務費 - 実際直接労務費
= 賃率差異 + 作業時間差異

結果がマイナス(△)になった場合には不利差異(借方差異)、プラスになった場合は有利差異(貸方差異)です。

賃率差異=(標準賃率-実際賃率)×実際作業時間
作業時間差異=標準賃率×(標準作業時間-実際作業時間)

※(標準-実際)です。
また、図のうち点線で囲んだ部分は賃率差異に含まれますが、式だけを暗記しようとすると、この部分が賃率差異なのか作業時間差異なのか忘れてしまうことがあります。従って図で覚えておきましょう。

問題の解答

問2のうち、(1)直接材料費と(2)直接労務費の解答は次の通り。

解答(問2)
(直接材料費)価格差異=(標準価格120円-実際価格122円)×実際数量1,850枚=△3,700円(不利差異、借方差異)
数量差異=標準価格120円×(標準数量1,800枚-実際数量1,850枚)=△6,000円(不利差異、借方差異)

(直接労務費)賃率差異=(標準賃率2,000円-実際賃率1,900円)×実際作業時間420時間=42,000円(有利差異、貸方差異)
作業時間差異=標準賃率2,000円×(標準作業時間400時間-実際作業時間420時間)=△40,000円(不利差異、借方差異)

解説
(標準数量・標準作業時間の求め方)問題の「2.原価標準」より、ズボン1本を生産するのに直接材料は1枚、直接作業時間は0.25時間を必要とします。

当月投入量は直接材料費は1,800本、加工費は1,600本であるので、
直接材料費:標準数量=1,800本×1枚=1,800枚
直接労務費:標準作業時間=1,600本×0.25時間=400時間

次の問題と解説

今回の問題のうち、問2(3)を解説します。

実際原価計算でも製造間接費の差異分析とは能率差異を計算する点が異なります。標準が加わるため公式も複雑になり、シュラッター図も標準操業度が加わる点がポイントです。

標準原価計算の製造間接費差異(予算差異、操業度差異、能率差異)

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