2-2 銀行勘定調整表
銀行勘定調整表とは
銀行勘定調整表とは、主に当座預金の残高を分析するために作成する表であり、銀行が発行する残高証明書と会社が把握している帳簿残高が一致しない場合に、不一致の原因を分析するために作成する表をいいます。
会社は月次や決算日といったタイミングで、定期的に残高確認を行う場合があります。
具体的には、預金残高がある各銀行に対して残高証明書を発行してもらい、残高証明書と会社の帳簿残高が一致しているかどうか確認します。
残高証明書のサンプルは次の通り。

【引用元】大和ネクスト銀行
残高確認を行った結果、残高証明書と会社の帳簿残高が不一致の場合があります。
このような場合に社内の会計や経理部署などで銀行勘定調整表を作成して、不一致の原因を分析する作業を行います。
預金残高の不一致の原因
預金残高が不一致となる原因には、「会社の修正事項」と「銀行の修正事項」が存在します。
代表的な不一致の原因となる事項は次の通り。
<会社の修正事項>
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 銀行連絡未達 | 預金を増減させる取引のうち、銀行から通知がない取引 |
| 未渡小切手 | 小切手を振出(作成)したが取引先に渡していない |
| 誤記入 | 誤って仕訳処理した取引 |
<銀行の修正事項>
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 時間外預入 | 銀行の営業時間外に預け入れした。 |
| 未取付小切手 | 取引先が銀行へ小切手を呈示していない。 |
会社の修正事項
「銀行連絡未達」「未渡小切手」「誤記入」があります。
銀行連絡未達
銀行連絡未達とは、例えば売掛金の回収で当座預金が増加したり、または料金の引き落としで当座預金が減少した、といった取引について銀行から連絡がなかったために、会社で取引を記帳していなかったことをいいます。
<例題>
- 売掛金100について当座預金に入金があったが銀行から連絡がないため未記帳であった。
- (仕訳)
- 当座預金 100 /売掛金 100
未渡小切手
未渡小切手(みわたしこぎって)とは、取引先への代金として小切手を振り出し、その時点で当座預金の減少として記帳したにも関わらず、取引先へ渡さずに金庫などに保管したままの状態の小切手をいいます。
小切手を取引先に渡していないことから、当座預金を減少させた仕訳は間違いであるため、会社側が修正します。
<例題>
- 仕入の掛け代金として記帳した小切手100が金庫に保管されたままであった。
- (仕訳)
- 当座預金 100 /買掛金 100
誤記入
誤記入とは、文字通り、仕訳時に金額や勘定科目を誤って記帳したことをいいます。
<例題>
- 当座預金から通信費10の引き落としを誤って100と記入していた。
- (仕訳)
- 当座預金 90 /通信費 90
銀行の修正事項
「時間外預け入れ」「未取付小切手」があります。
時間外預け入れ
時間外預け入れとは、夜間など銀行の営業時間外に預け入れたことをいいます。
例えば、決算日の夜間に資金を当座預金に預け入れた場合が該当します。この場合は、銀行では決算日の翌日の入金として処理していますが、会社側では決算日に入金していることから、銀行側の修正事項として取り扱います。
<例題>
- 決算日の夜間の入金10は銀行では翌日入金として処理されていた。
- (仕訳)
- 会社側の仕訳なし
未取付小切手
未取付小切手(みとりつけこぎって)とは、会社が取引先への支払として小切手を振り出して取引先に渡したものの、取引先が銀行へ小切手を持ち込んでいないため、銀行では預金の減少として記録していない小切手をいいます。
小切手は、振り出して取引先に渡した時点で当座預金を減少させるのが正しい仕訳です。従って会社は正しく記帳しています。
しかし、取引先が銀行に呈示していないため、銀行が小切手振り出しの事実を知らない、ということです。
以上から、未取付小切手は銀行側の残高を減少させる取引になります。未渡小切手と言葉が似ていますが異なる取引です。間違いやすいので注意しましょう。
<例題>
- 振出小切手20について取引先が銀行に持ち込んでいないことが判明した。
- (仕訳)
- 会社側の仕訳なし
修正仕訳の記帳
以上の不一致の原因は、銀行勘定調整表を作成して原因を分析した結果、発見できます。
従って、会社の当座預金帳簿残高と銀行が発行した残高証明書の残高が一致しない場合には、原因を調べるために、最初に銀行勘定調整表を作成します。
銀行勘定調整表の作成方法
銀行勘定調整表の作成方法には、3つの方法があります。
- ①銀行の残高証明書が正しいと仮定して調整する方法
- ②会社の帳簿残高が正しいと仮定して調整する方法
- ③両者の残高を調整して一致させる方法
ここでは、「③両者の残高を調整して一致させる方法」で作成した銀行勘定調整表を使って解説します。
例-銀行勘定調整表の作成
<取引例>
A社は、X01年8月末日の当座預金残高を確認するために、銀行から残高証明書を発行してもらったところ、残高が一致しなかった。
- A社の帳簿残高:¥1,460,000
- 銀行残高証明書の当座預金残高:¥1,720,000
そこで、不一致の原因を調べたところ、次の事実が判明した。
1.8月31日に当座預金口座に¥50,000を預け入れたが、時間外のため銀行では翌営業日の預け入れとして記録されていた。
→時間外預け入れ。銀行の修正
2.B社より売掛金の回収代金¥150,000が当座預金に振り込まれていたが、銀行から通知がなかった。
→銀行連絡未達。会社の修正
3.C社への買掛金¥270,000の支払いとして振り出した小切手が銀行に呈示されていなかった。
→未取付小切手。銀行の修正
4.D社より売掛金¥100,000を当座預金にて回収したが、誤って¥330,000と仕訳していた。
→誤記入。会社の修正
5.E社への買掛金¥120,000の支払いに小切手を振り出したが、金庫を実査した結果、当該小切手が保管されていることが判明した。
→未渡小切手。会社の修正
以上から、銀行勘定調整表は次の通りとなった。
<銀行勘定調整表>

よって、会社側の修正事項である2、4、5について次の通り、修正仕訳を行う。
<会社側の修正仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 当座預金 | 150,000 | 売掛金 | 150,000 |
| 4 | 売掛金 | 230,000 | 当座預金 | 230,000 |
| 5 | 当座預金 | 120,000 | 買掛金 | 120,000 |
<ポイント:修正後残高>
- 当座預金帳簿残高 = ¥1,460,000 + ¥150,000 + ¥120,000 - ¥230,000 = ¥1,500,000
銀行側の修正仕訳は記帳しません。しかし、銀行勘定調整表の作成問題では、会社側だけでなく銀行側も記入するため、銀行側の修正事項も覚える必要があります。
「時間外預け入れ」「売掛金の回収誤記入」といった取引内容を記入させる問題が出題される可能性は低く、金額は記入し、取引内容は選択肢から選ぶ出題形式が想定されます。
