8-1 無形固定資産
無形固定資産とは
無形固定資産とは、固定資産のうち目に見えない資産をいいます。
無形固定資産の種類
無形固定資産には、次のようなものがあります。
<無形固定資産の種類>
- ・のれん
- ・ソフトウェア
- ・その他:特許権/借地権/商標権など
のれんとは
のれんとは、合併や買収といったM&Aの際に使用される会計用語であり、合併や買収される企業のその時点での純資産額と、その支払対価との差額をいいます。
のれんの特徴
のれんは、「超過収益力(ちょうかしゅうえきりょく)」という言葉で説明されることがあります。以前は、のれんではなく「営業権」という言葉が使われていました。
会計上、合併や買収される企業は、その時点で個別の資産や負債を評価します。しかし、合併・買収時に支払う対価を決める場合には、個別資産・負債の合計(= 資産の合計から負債の合計を差し引いた純資産額)ではなく、それらが組み合わさって機能している企業全体を評価して対価を決めます。
具体的には、会計上の個別資産・負債の評価には表せないブランドイメージや信用力、各種のノウハウといったものなどが、合併・買収の対価に含まれます。
以上をまとめると、会計上の個別資産・負債の合計(= 資産-負債で表される純資産)と支払対価には差額が生じ、差額の源泉(原因、要因)は、ブランドイメージや信用力などの超過収益力であり、これらをまとめて「のれん」として取り扱う、といえます。
ソフトウェアとは
ソフトウェアとは、コンピュータープログラムと、コンピュータープログラムに関連する文書(ソフトウェア仕様書、フローチャートなど)のことをいいます。
PCのOSであるWindowsやゲームソフトが、イメージしやすいでしょう。
自社利用目的のソフトウェア
会計上のソフトウェアは、利用目的から「自社利用目的のソフトウェア」「市場販売目的のソフトウェア」などに分類することができますが、このうち、簿記2級では、自社利用目的のソフトウェアが出題範囲です。
自社利用目的のソフトウェアを、無形固定資産として資産計上するための要件は、その自社利用ソフトウェアが、「将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められること」です。この要件を満たさない場合には、資産計上することができず、費用(損失)として処理することになります。
ソフトウェア仮勘定
もう一つ、ソフトウェアの論点として「ソフトウェア仮勘定」があります。「建設仮勘定」勘定と同様に、完成して引き渡す前の開発中(制作中)の時点で、ソフトウェアに要した支出を集計するための勘定科目です。
その他の無形固定資産
その他の無形固定資産(特許権・借地権・商標権)は、法令上・契約上の権利になるため、法令や契約上に記載された年数に基づいて、耐用年数を決めます。
無形固定資産の減価償却
無形固定資産は、残存価額ゼロの定額法(直接法)で、減価償却します。
耐用年数は、のれんは20年以内、ソフトウェアは利用可能期間を合理的に見積もった年数(通常5年以内を使用)です。他の無形固定資産は、問題の指示に従って償却します。
減価償却の仕訳
有形固定資産は、間接法と直接法の両方で仕訳できましたが、無形固定資産は、直接法で仕訳します。
借方には、「のれん償却」や「ソフトウェア償却」というように「〇〇償却勘定(費用に属する勘定科目)」を記入します。
貸方には、減額させる無形固定資産の勘定科目を記入します。
※無形固定資産を期中に取得した場合には、使用開始月から決算月までの月数を計算し、1年(12か月)の月割りで減価償却費を計算します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 減価償却 | 〇〇償却 | ××× | のれん、ソフトウェアなど | ××× |
無形固定資産の固定資産台帳
「固定資産台帳」とは、補助簿(補助元帳)に該当し、1件1件の固定資産について、詳細を記録するための帳簿をいいます。
簿記3級では、有形固定資産の固定資産台帳を学習しました。無形固定資産も、有形固定資産と同じ固定資産台帳を使用して記帳します。
下に、固定資産台帳のサンプルを掲載します。

仕訳帳や伝票、総勘定元帳だけだと、1件1件の固定資産の把握は難しいですが、固定資産台帳を用いて記録すれば、簡単に1件1件の固定資産の情報を把握できます。
仕訳問題
- A社は×2年3月期の決算を迎えた。次のソフトウェアについて減価償却の仕訳を示しなさい。
- 1.A社は×1年4月1日にB社を買収し、のれん¥10,000,000を無形固定資産として計上した。耐用年数20年の定額法(残存価額ゼロ)で減価償却する。
- 2.A社は×1年10月1日に自社利用目的のソフトウェア¥500,000を購入し使用開始した(利用可能期間5年)。当該ソフトウェアは将来の収益獲得又は費用削減の効果が確実であると認められる。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | のれん償却 | 500,000 | のれん | 500,000 |
| 2 | ソフトウェア償却 | 50,000 | ソフトウェア | 50,000 |
解説
問題1.
のれん償却 = 取得原価¥10,000,000 ÷ 耐用年数20年 = ¥500,000
問題2.
ソフトウェア償却 = 取得原価¥500,000 ÷ 対象年数5年 × (経過月6ヶ月/12ヶ月) = ¥50,000
