8-3 研究開発費

研究開発費とは

研究開発費とは、新しい知識の発見や、新製品の開発のためなどに要した支出をいいます。

研究と開発

会計基準には、次の通り、研究と開発という言葉の定義が記載されています。

研究」とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいいます。

開発」とは、新しい製品等についての計画もしくは設計として、又は既存の製品等を著しく改良するための計画もしくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいいます。

例えば、いわゆる「バイオベンチャー」といわれる創薬( = 薬を作る)事業を行う会社にて、薬の素(もと)となるようなもの(シーズといいます)を調査したり探求することは、「研究」に該当します。

また、ゲームや飲料、コンビニ弁当、自動車などの、様々な新製品の開発は、「開発」に該当します。

研究開発費の範囲

研究開発費には、研究開発に要した人件費や外部業者への委託費用、材料費、減価償却費など、研究開発のための支出を含みます。

研究開発費の仕訳

研究開発費に関する取引は、「研究開発費(費用に属する勘定科目)」で仕訳します。

他の勘定科目から研究開発費への振替

研究開発費の仕訳方法は、他の勘定科目とは少し異なります。

既に費用として仕訳した人件費(給料勘定など)や減価償却費などから、研究開発のために要した取引を抽出(ちゅうしゅつ。選び出すこと)して、該当する勘定科目と金額を貸方に記入し、合計額を「研究開発費」として、借方に記入します。

このように、研究開発費の仕訳では、「費用に属する勘定科目から、研究開発費への振り替え」が行われます。

その他の仕訳方法

その他、支払手数料や材料費などの取引を仕訳する場合に、既に研究開発費として使用することが分かっている場合には、借方に「研究開発費」を記入し、貸方に現金預金、未払金などを記入する、といったように、費用に属する勘定科目を経由せず、直接仕訳することもできます。

費用の配賦

研究開発費の仕訳のうち、人件費や減価償却費を研究開発費に振り替える場合には、工業簿記で習う「配賦基準(はいふきじゅん)」によって、金額を決める方法が一般的です。

例えば、減価償却費については、配賦基準を技術作業員の作業時間として、月の作業時間合計が1,000時間、うち研究開発費に対する作業時間が100時間であった場合には、減価償却費のうち1,000分の100(1/10)を研究開発費に振り替える、という手続きによって仕訳します。

人件費についても、1人の技術作業員が複数のプロジェクトに携わっているような場合には、同様に作業時間などの配賦(厳密には賦課)基準を設定して、研究開発費に配賦します。

仕訳(まとめ)

以上の仕訳をまとめると、次の通り。

取引ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
研究開発費の計上直接計上する場合研究開発費×××現金預金、未払金など×××
他の勘定科目から振り替える場合研究開発費×××給料×××
減価償却費×××
その他勘定科目×××

損益計算書上の表示

研究開発費は、損益計算書上では、「販売費及び一般管理費」に含めて表示します。

仕訳問題

A社では新ゲームの開発を行うためにプロジェクトチームを発足した。次の取引について仕訳しなさい。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1研究開発費1,100,000未払金1,100,000
2研究開発費450,000減価償却費200,000
給料250,000
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仕訳問題(ランダム出題)