9-2 ファイナンスリース取引
ファイナンスリース取引とは
「ファイナンスリース取引」とは、ノンキャンセラブルとフルペイアウトを、両方とも満たすリース取引をいいます。
ファイナンスリース取引の借り手の会計処理
ファイナンスリース取引では、固定資産の売買処理に準じた会計処理を適用します。
仕訳の方法
ファイナンスリース取引の仕訳の方法には、「利子込み法」と「利子抜き法」があります。
どちらの方法も、「リース資産(資産に属する勘定科目)」、「リース債務(負債に属する勘定科目)」、「リース資産減価償却累計額(資産の控除科目)」で仕訳します。
見積現金購入価額
見積現金購入価額とは、リース物件を現金で購入した場合に、要するであろう支払額のことをいいます。
※「見積」という言葉が付されずに、「現金購入価額」という言葉で出題される可能性もありますが、問題を解く上では、同様と考えて差し支えありません。
見積現金購入価額は、リース会計の重要なキーワードです。利子抜き法で仕訳処理する場合に、リース物件(リース資産)の計上の際に使用します。
利息
リース取引では、リース物件の借り手は、リース会社に対してリース料を一定期間毎に支払いますが、そのリース料には金利が含まれており、借手はリース会社に利息を支払っていることになります。
リース料と見積現金購入価額の比較
ファイナンスリース取引はフルペイアウトです。リース料には、自分で購入した場合に負担するのと同様のコストが、含まれています。
さらに、利息を含むので、理論的には「リース料総額 > 見積現金購入価額」が成り立ちます(利息分だけリース料総額が大きくなる)。
利子込み法の仕訳
利子込み法では、「リース資産の計上額 = リース料総額」として、リース料に含まれる利子も、固定資産の金額に含めて仕訳します。
(1)取引開始の仕訳
リース取引の開始日に、借方に「リース資産」、貸方に「リース債務」を、それぞれリース料総額で記入します。
<例題>
- リース物件を総額100で賃借する契約を締結した。
- (仕訳)
- リース資産 100/リース債務 100
(2)リース料支払いの仕訳
リース料の支払日には、リース債務を減額させるために、借方に「リース債務」を記入し、貸方に現金預金などの勘定科目を記入します。
<例題>
- リース料10を当座預金より支払った。
- (仕訳)
- リース債務 10/当座預金 10
(3)減価償却の仕訳
決算日(月次の場合もあり)には、リース資産の減価償却を行います。減価償却費勘定を借方に記入し、リース資産減価償却累計額勘定を貸方に記入します。
<例題>
- リース資産100を残存価額ゼロ、耐用年数5年で減価償却する。
- (仕訳)
- 減価償却費 20/リース資産減価償却累計額 20
利子込み法-仕訳のまとめ
次の通り。
取引 | 計上額の元 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|---|
リース取引開始 | リース料 | リース資産 | ××× | リース債務 | ××× |
リース料の支払い | リース料 | リース債務 | ××× | 現金預金 | ××× |
減価償却 | リース料 | 減価償却費 | ××× | リース資産減価償却累計額 | ××× |
利子抜き法の仕訳
利子抜き法では、「リース資産 = 見積現金購入価額」として、リース料に含まれる利子を除いた金額で、リース資産を計上します。
(1)取引開始の仕訳
リース取引の開始日に、借方に「リース資産」を、貸方に「リース債務」を、見積現金購入価額で記入します。
<例題>
- リース物件を総額100(見積現金購入価額90)で賃借する契約を締結した。
- (仕訳)
- リース資産 90/リース債務 90
(2)リース料支払いの仕訳
リース料の支払日には、リース債務を減額させるために、借方に「リース債務」を記入し、貸方に現金預金などの勘定科目を記入します。貸方の現金預金は、見積現金購入価額に基づいた支払ではなくリース料になるため、利息分だけ貸方金額が大きくなります。そこで、差額を「支払利息」で借方に記入します。
<例題>
- リース料10(うち利息1)を当座預金より支払った。
- (仕訳)
- リース債務 9/当座預金 10
- 支払利息 1/
(3)減価償却の仕訳
決算日(月次の場合もあり)には、リース資産の減価償却を行います。「減価償却費」を借方に記入し、「リース資産減価償却累計額」を貸方に記入します。
利子込み法では、利息も含めて減価償却費を計上しますが、利子抜き法では、リース資産を見積現金購入価額(すなわち利息抜き)で計上しているため、利息を含まずに減価償却費を計上することができます。
<例題>
- リース資産90を残存価額ゼロ、耐用年数5年で減価償却する。
- (仕訳)
- 減価償却費 18/リース資産減価償却累計額 18
利子抜き法-仕訳のまとめ
次の通り。
取引 | 計上額の元 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|---|
リース取引開始 | 見積現金購入価額 | リース資産 | ××× | リース債務 | ××× |
リース料の支払い | 見積現金購入価額 とリース料 | リース債務 | ××× | 現金預金 | ××× |
支払利息 | ××× | ||||
減価償却 | 見積現金購入価額 | 減価償却費 | ××× | リース資産減価償却累計額 | ××× |
仕訳問題
A社は期首に次の条件でリース会社と契約してリース取引を開始した。このリース取引はファイナンス・リース取引に該当するとする。
- ・年間リース料:¥500,000(年1回。後払い)
- ・リース期間:5年
- ・見積現金購入価額:¥2,300,000
1.リース開始時の仕訳、2.リース料支払い時の仕訳(当座預金より支払)、3.決算の仕訳(減価償却 残存価額ゼロ、耐用年数5年の定額法)について、利子込み法と利子抜き法のそれぞれで仕訳しなさい。
<利子込み法>
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | リース資産 | 2,500,000 | リース債務 | 2,500,000 |
2 | リース債務 | 500,000 | 当座預金 | 500,000 |
3 | 減価償却費 | 500,000 | リース資産減価償却累計額 | 500,000 |
<利子抜き法>
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | リース資産 | 2,300,000 | リース債務 | 2,300,000 |
2 | リース債務 | 460,000 | 当座預金 | 500,000 |
支払利息 | 40,000 | |||
3 | 減価償却費 | 460,000 | リース資産減価償却累計額 | 460,000 |
解説
(利子抜き法)問題2.
リース債務減少額 = 見積現金購入価額¥2,300,000 ÷ リース期間5年 = ¥460,000