3-3 売買目的有価証券
次に、有価証券の勘定科目を1つずつ解説していきます。最初は売買目的有価証券です。
売買目的有価証券とは
売買目的有価証券とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。
例えば、上場企業の有価証券は株式市場が存在しており、日々時価が変動することから、売買目的有価証券の対象になる有価証券です。
売買目的有価証券の取引
次の通り。
売買目的有価証券の取引
- (1)取得
- (2)売却
- (3)利息、配当の受取
- (4)決算評価
勘定科目
売買目的有価証券の取引には、「売買目的有価証券(資産に属する勘定科目)」を使用します。
※有価証券共通の仕訳処理については、「3-1 有価証券と仕訳(取得、売却、利息、配当金)」を参照。
取得と仕訳
売買目的有価証券が増加するため、借方に「売買目的有価証券」を記入し、貸方に現金、預金や未払金などを記入します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 取得 | 売買目的有価証券 | ××× | 現金預金など | ××× |
<例題>
- 時価の変動利益を得る目的で株式を30で購入し、売買手数料5とともに現金で支払った。
- (仕訳)
- 売買目的有価証券 35 / 現金 35
<例題(本試験レベル)>
- A社の社債(額面総額¥1,000,000)を売買目的で額面¥100につき¥95で購入し手数料¥15,000とともに普通預金より支払った。
- (仕訳)
- 売買目的有価証券 965,000※ / 普通預金 965,000
- ※額面総額¥1,000,000 × (¥95 / 額面¥100) + 手数料¥15,000 = ¥965,000
取得時に端数利息を支払う場合
この場合には、端数利息について仕訳を追加する必要があります。
端数利息とは
契約により定められた利息の計算期間の途中までの利息を、端数利息(はすうりそく)といいます。
取得する有価証券が、国債・社債・地方債などの債券である場合、債券の保有者は、利息を受け取ります。
利息は、時間の経過とともに発生しますが、利息計算の事務手続き上、四半期や月次といった単位で、支払(取得者側からは受取)になります。
従って、債券の売却者は、本来受け取るべき利息を、一部受け取っていない場合が発生することがあります。
取得例(端数利息)
次の取引を例にします。
取引例:取得(端数利息)
- ・A社が社債を8月15日にB社に売却
- ・前回の受取利息の計算期間が4月1日から6月30日。次回は7月1日から9月30日
この場合、A社は7月1日から8月15日までの分の利息を受け取っていません。
この例では、取得者(B社)は次回利息受取日に、7月1日から9月30日までの期間の利息を受け取ります。しかし、7月1日から8月15日までは、A社が債券を保有していたので、 B社は利息を受け取りすぎています。
そこで、B社は8月15日に社債を取得した時に、A社に対して、端数利息(7月1日から8月15日まで)を支払います。勘定科目は「有価証券利息」を使用します(収益の減少として借方に記入)。
B社は、取得時点では「有価証券利息」の残高がマイナスになりますが、次回の利息受け取り時には、7月1日から9月30日までの利息を「有価証券利息」として貸方に記入して仕訳するため、 最終的には、残高はプラスになります。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 債券取得 | 売買目的有価証券 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 有価証券利息 | ××× |
<例題>
- 時価の変動利益を得る目的で株式を30で購入し、端数利息5とともに現金で支払った。
- (仕訳)
- 売買目的有価証券 30 / 現金 35
- 有価証券利息 5
端数利息の計算
債券の端数利息は、次の通り計算します。
<ポイント:端数利息の計算>
- 端数利息 = 債券額面金額(総額) × 年利率(%) × (経過日数※ / 365日)
- ※経過日数 = 直近の利払日の翌日から売買日
減価償却費などの月割り計算に対して、「日割り計算」といいます。
<例題(本試験レベル)>
- 社債(額面総額¥50,000,000、期間5年、利率:年0.73%、利払日:6月末、12月末)を売買目的で9月15日に額面¥100につき¥97で購入した。端数利息を含めて代金は来月支払う予定である。
- (仕訳)
- 売買目的有価証券 48,500,000 ※1 / 未払金 48,577,000
- 有価証券利息 77,000 ※2
- ※1:額面総額¥50,000,000 × (¥97 / 額面¥100) = ¥48,500,000
- ※2:¥50,000,000 × 0.73% × (77日 ※3 /365日) = ¥77,000
- ※3:直近利払日(6月末)の翌月7/1から取得日9/15までの日数(31日 + 31日 + 15日)
売却と仕訳
売買目的有価証券が減少する取引であるため、「売買目的有価証券」を貸方に記入します。
取得原価と売却額の差額は、「有価証券売却益」または「有価証券売却損」で仕訳します。
売却する有価証券の種類が、「国債・社債・地方債」などの債券であり、かつ、端数利息が発生する場合には、端数利息を受け取ることができるので、貸方に「有価証券利息」を記入します。
| 取引 | ケース | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売却 ※1 | 益 | 現金預金など | ××× | 売買目的有価証券 | ××× |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 有価証券売却益 | ××× | ||||
| 損 | 現金預金など | ××× | 売買目的有価証券 | ××× | |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 有価証券売却損 | ××× |
※1:端数利息が発生した場合の仕訳
<例題>
- 売買目的有価証券20を25で売却し、端数利息3とともに代金は来月受け取る。
- (仕訳)
- 未収入金 28 / 売買目的有価証券 20
- / 有価証券利息 3
- / 有価証券売却益 5
複数回に渡って取得した場合の単価計算(移動平均法)
複数回に渡って、同一種類の有価証券を購入した場合には、移動平均法(売買日までの帳簿残高から1単位当たりの金額を求める方法)によって、売却する有価証券の金額を計算します。
<例題>
- A社の株式(売買目的)を4/1に10、5/10に14で1株ずつ取得し、6/30に1株を15で売却し代金を小切手で受け取った。
- (仕訳)
- 現金 15 / 売買目的有価証券 12 ※
- / 有価証券売却益 3
- ※(10 + 14)÷ 2株 = @12
配当金、利息の受取と仕訳
株式配当金の受け取りは、「受取配当金」、債券利息の受け取りは「有価証券利息」で仕訳します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 株式配当金 | 現金 | ××× | 受取配当金 | ××× |
| 債券利息 | 現金 | ××× | 有価証券利息 | ××× |
利息計算は、端数利息と同様に、日割りで計算します。
決算評価と仕訳
「決算評価」とは、貸借対照表上の科目のうち、主に資産科目の表示額を決めるための手続をいいます。
具体的には、取得原価で計上されている有価証券を決算日の時価で評価します。
取得原価と時価との差額は、「売買目的有価証券」の増減として仕訳し、相手勘定科目は、「有価証券評価益(利益が発生した場合)」または、 「有価証券評価損(損失が発生した場合)」で仕訳します。
| 取引 | ケース | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 決算評価 | 益 | 売買目的有価証券 | ××× | 有価証券評価益 | ××× |
| 損 | 有価証券評価損 | ××× | 売買目的有価証券 | ××× |
<例題>
- 決算整理仕訳としてA社株式(売買目的 帳簿価額12)の評価を行う。決算日の時価は15である。
- (仕訳)
- 売買目的有価証券 3 / 有価証券評価益 3
仕訳(まとめ)
まとめると、次の通り。
| 取引 | ケース | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 取得 | 株式 | 売買目的有価証券 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 債券 | 売買目的有価証券 | ××× | 現金預金など | ××× | |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 売却 ※1 | 益 | 現金預金など | ××× | 売買目的有価証券 | ××× |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 有価証券売却益 | ××× | ||||
| 損 | 現金預金など | ××× | 売買目的有価証券 | ××× | |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 有価証券売却損 | ××× | ||||
| 株式配当金 | 現金 | ××× | 受取配当金 | ××× | |
| 債券利息 | 現金 | ××× | 有価証券利息 | ××× | |
| 決算評価 | 益 | 売買目的有価証券 | ××× | 有価証券評価益 | ××× |
| 損 | 有価証券評価損 | ××× | 売買目的有価証券 | ××× | |
仕訳問題
- 1. 6月30日 甲社の社債(額面¥2,000,000 年利率:3.650%、利払日:3,6,9,12月の各末日)を1枚、売買目的で額面¥100につき¥90で購入した。購入時に買取手数料¥50,000とともに当座預金より支払った。
- ※保有目的は時価の変動による利益を得ることである。
- 2. 8月15日 1.と同じ種類である甲社の社債券を2枚、額面¥100につき¥94で購入した。購入時に買取手数料¥90,000とともに月末に支払う予定である。
- 3. 9月5日 上記1.と2.で購入した甲社の社債(額面200万円)のうち1枚を額面¥100円につき¥97.5(端数利息含む)で売却した。売却代金は来月末に受け取る。
- 4. 9月30日 甲社の社債の利払日が到来し利息が当座預金に振り込まれた。
- 5. 9月30日 A社は決算日を迎えた。決算日の甲社の社債の時価は額面¥100につき¥93である。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 売買目的有価証券 | 1,850,000 | 当座預金 | 1,850,000 |
| 2 | 売買目的有価証券 | 3,850,000 | 未払金 | 3,868,400 |
| 有価証券利息 | 18,400 | |||
| 3 | 未収入金 | 1,950,000 | 売買目的有価証券 | 1,900,000 |
| 有価証券利息 | 13,400 | |||
| 有価証券売却益 | 36,600 | |||
| 4 | 当座預金 | 36,800 | 有価証券利息 | 36,800 |
| 5 | 有価証券評価損 | 80,000 | 売買目的有価証券 | 80,000 |
解説
問題1.
・取得原価 = 額面¥2,000,000 ×(¥90 / ¥100) × 社債1枚 + 買取手数料¥50,000 = ¥1,850,000
※6月30日が利払日であるため端数利息は発生しません。
問題2.
・取得原価 = 額面¥2,000,000 × (¥94 / ¥100) × 社債2枚 + 買取手数料¥90,000 = ¥3,850,000
端数利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数46日(7/1~8/15) / 365日} × 社債2枚 = ¥18,400
問題3.
・社債の平均取得原価 = (6/30 ¥1,850,000 + 8/15 ¥3,850,000) ÷ 社債3枚 = ¥1,900,000(移動平均法)
・売却代金 = 額面¥2,000,000 × (¥97.5 / ¥100) × 社債1枚 = ¥1,950,000
・端数利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数67日(7/1~9/5) / 365日} × 社債1枚 = ¥13,400
・売却益 = ¥36,600(貸借差額から計算)
問題4.
・有価証券利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数日92日(7/1~9/30) / 365日} × 社債2枚 = ¥36,800
問題5.
・取得原価 ¥1,900,000(問題3.より) × 社債2枚 = ¥3,800,000
・時価評価額 = 額面¥2,000,000 × (¥93 / ¥100) × 社債2枚 = ¥3,720,000
・有価証券評価損 = ¥3,800,000 - ¥3,720,000 = ¥80,000
