3-3 売買目的有価証券

次に、有価証券の勘定科目を1つずつ解説していきます。最初は売買目的有価証券です。

売買目的有価証券とは

売買目的有価証券とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。

例えば、上場企業の有価証券は株式市場が存在しており、日々時価が変動することから、売買目的有価証券の対象になる有価証券です。

売買目的有価証券の取引

次の通り。

勘定科目

売買目的有価証券の取引には、「売買目的有価証券(資産に属する勘定科目)」を使用します。

※有価証券共通の仕訳処理については、「3-1 有価証券と仕訳(取得、売却、利息、配当金)」を参照。

取得と仕訳

売買目的有価証券が増加するため、借方に「売買目的有価証券」を記入し、貸方に現金、預金や未払金などを記入します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得売買目的有価証券×××現金預金など×××

取得時に端数利息を支払う場合

この場合には、端数利息について仕訳を追加する必要があります。

端数利息とは

契約により定められた利息の計算期間の途中までの利息を、端数利息(はすうりそく)といいます。

取得する有価証券が、国債・社債・地方債などの債券である場合、債券の保有者は、利息を受け取ります。

利息は、時間の経過とともに発生しますが、利息計算の事務手続き上、四半期や月次といった単位で、支払(取得者側からは受取)になります。

従って、債券の売却者は、本来受け取るべき利息を、一部受け取っていない場合が発生することがあります。

取得例(端数利息)

次の取引を例にします。

この場合、A社は7月1日から8月15日までの分の利息を受け取っていません。

この例では、取得者(B社)は次回利息受取日に、7月1日から9月30日までの期間の利息を受け取ります。しかし、7月1日から8月15日までは、A社が債券を保有していたので、 B社は利息を受け取りすぎています。

そこで、B社は8月15日に社債を取得した時に、A社に対して、端数利息(7月1日から8月15日まで)を支払います。勘定科目は「有価証券利息」を使用します(収益の減少として借方に記入)。

B社は、取得時点では「有価証券利息」の残高がマイナスになりますが、次回の利息受け取り時には、7月1日から9月30日までの利息を「有価証券利息」として貸方に記入して仕訳するため、 最終的には、残高はプラスになります。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
債券取得売買目的有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××

端数利息の計算

債券の端数利息は、次の通り計算します。

減価償却費などの月割り計算に対して、「日割り計算」といいます。

売却と仕訳

売買目的有価証券が減少する取引であるため、「売買目的有価証券」を貸方に記入します。

取得原価と売却額の差額は、「有価証券売却益」または「有価証券売却損」で仕訳します。

売却する有価証券の種類が、「国債・社債・地方債」などの債券であり、かつ、端数利息が発生する場合には、端数利息を受け取ることができるので、貸方に「有価証券利息」を記入します。

取引ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売却 ※1現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券利息×××
有価証券売却益×××
現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券利息×××
有価証券売却損×××

※1:端数利息が発生した場合の仕訳

複数回に渡って取得した場合の単価計算(移動平均法)

複数回に渡って、同一種類の有価証券を購入した場合には、移動平均法(売買日までの帳簿残高から1単位当たりの金額を求める方法)によって、売却する有価証券の金額を計算します。

配当金、利息の受取と仕訳

株式配当金の受け取りは、「受取配当金」、債券利息の受け取りは「有価証券利息」で仕訳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
株式配当金現金×××受取配当金×××
債券利息現金×××有価証券利息×××

利息計算は、端数利息と同様に、日割りで計算します。

決算評価と仕訳

決算評価」とは、貸借対照表上の科目のうち、主に資産科目の表示額を決めるための手続をいいます。

具体的には、取得原価で計上されている有価証券を決算日の時価で評価します。

取得原価と時価との差額は、「売買目的有価証券」の増減として仕訳し、相手勘定科目は、「有価証券評価益(利益が発生した場合)」または、 「有価証券評価損(損失が発生した場合)」で仕訳します。

取引ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算評価売買目的有価証券×××有価証券評価益×××
有価証券評価損×××売買目的有価証券×××

仕訳(まとめ)

まとめると、次の通り。

取引ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得株式売買目的有価証券×××現金預金など×××
債券売買目的有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××
売却 ※1現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券利息×××
有価証券売却益×××
現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券利息×××
有価証券売却損×××
株式配当金現金×××受取配当金×××
債券利息現金×××有価証券利息×××
決算評価売買目的有価証券×××有価証券評価益×××
有価証券評価損×××売買目的有価証券×××

仕訳問題

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1売買目的有価証券1,850,000当座預金1,850,000
2売買目的有価証券3,850,000未払金3,868,400
有価証券利息18,400
3未収入金1,950,000売買目的有価証券1,900,000
有価証券利息13,400
有価証券売却益36,600
4当座預金36,800有価証券利息36,800
5有価証券評価損80,000売買目的有価証券80,000

解説

問題1.
・取得原価 = 額面¥2,000,000 ×(¥90 / ¥100) × 社債1枚 + 買取手数料¥50,000 = ¥1,850,000
※6月30日が利払日であるため端数利息は発生しません。

問題2.
・取得原価 = 額面¥2,000,000 × (¥94 / ¥100) × 社債2枚 + 買取手数料¥90,000 = ¥3,850,000
端数利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数46日(7/1~8/15) / 365日} × 社債2枚 = ¥18,400

問題3.
・社債の平均取得原価 = (6/30 ¥1,850,000 + 8/15 ¥3,850,000) ÷ 社債3枚 = ¥1,900,000(移動平均法)
・売却代金 = 額面¥2,000,000 × (¥97.5 / ¥100) × 社債1枚 = ¥1,950,000
・端数利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数67日(7/1~9/5) / 365日} × 社債1枚 = ¥13,400
・売却益 = ¥36,600(貸借差額から計算)

問題4.
・有価証券利息 = 額面¥2,000,000 × 利率3.650% × {経過日数日92日(7/1~9/30) / 365日} × 社債2枚 = ¥36,800

問題5.
・取得原価 ¥1,900,000(問題3.より) × 社債2枚 = ¥3,800,000
・時価評価額 = 額面¥2,000,000 × (¥93 / ¥100) × 社債2枚 = ¥3,720,000
・有価証券評価損 = ¥3,800,000 - ¥3,720,000 = ¥80,000

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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著者プロフィール