3-4 満期保有目的債券
満期保有目的債券とは
満期保有目的債券とは、満期まで保有する意図をもって、取得した債券(国債、社債、地方債など)をいいます。
売買目的有価証券には、株式も債券も含めますが、名称の通り、満期保有目的債券は「債券」のみが対象です。
次に、これまでにも登場してきた債券を、改めて解説します。
債券とは
債券とは、金銭債務(借入)による資金調達を目的として、発行される有価証券をいい、券面には、金銭消費貸借契約と類似した内容が表示されます。
発行体が国である場合には「国債」、会社であれば「社債」など、都道府県や市町村区といった地方公共団体であれば「地方債」といいます。
以前に解説した通り、債券は国や会社などが借入を行う際に、発行します。金融機関(銀行)からの一般的な借入に対して、債券は広く多数の者から、借入を募る場合に利用する手段です。
社債のサンプルを掲載します。

【引用元】金子証券印刷株式会社:少人数私募債
債券から分かること
この社債からは、「発行体:名古屋資源株式会社 種類:第1回無担保社債券 額面金額:100万円 利率:年5.0% 利払日:毎年12月25日 償還期限:平成18年12月25日」といったことなどが分かります。
金銭消費貸借契約(要するに借入)で締結する内容と類似した事項が、券面に表示されています。
インカムゲインとキャピタルゲイン
債券を取得した場合には、①利息の受け取りや償還時の購入額との差益といった「インカムゲイン」や、②取引市場で売買することで売却益を得るといった「キャピタルゲイン」が期待できます。
上述のうち、「償還時の購入額との差益」ですが、額面金額は償還(発行体が債券の保有者にお金を払い戻すこと)時に、払い戻す金額を表しています。例えば、額面100万円の社債を98万円で購入した場合、償還期限まで保有しているだけで、償還時には100万円を受け取ることができるため、100万円 - 98万円 = 2万円 が利益(インカムゲイン)になる、ということです(プラス償還時まで保有していた場合には、利札(クーポン)期限到来時の利息もインカムゲインです)。
割引発行と打歩発行
債券の発行体が債券を発行する時に、額面金額よりも低い金額で発行することがあります。このことを「割引発行」といいます。それに対して、高い金額で発行することを「打歩(うちぶ)発行」といいます。
満期保有目的債券の取引
売買目的有価証券と同様に、仕訳します。
<満期保有目的債券の取引>
- (1)取得
- (2)利息の受け取り
- (3)決算評価
勘定科目
満期保有目的債券の取引には、「満期保有目的債券(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。
※有価証券共通の仕訳処理については、「3-1 有価証券と仕訳(取得、売却、利息、配当金)」を参照。
取得と仕訳
売買目的有価証券と同様に、仕訳します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 取得 | 満期保有目的債券 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 有価証券利息 | ××× |
<例題>
- 満期まで保有する目的で国債を手数料含めて30で購入し当座預金より支払った。
- (仕訳)
- 満期保有目的債券 30 / 当座預金 30
利息の受け取りと仕訳
売買目的有価証券と同様、「有価証券利息」で仕訳します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 利息 | 現金 | ××× | 有価証券利息 | ××× |
決算評価と仕訳
満期保有目的債券は原則として、取得原価で評価します。
償却原価法と仕訳
しかし、債券を額面より高い金額、または低い金額で取得した場合において、額面金額との差額が「金利の調整と認められる場合」には、その差額を取得日から償還期限の間、帳簿価額が額面金額と等しくなるまで、決算日毎に毎期一定の方法で計算された金額を、「満期保有目的債券」の帳簿残高に加減します。
この「毎期一定の方法」のことを、償却原価法といいます。簡単に言えば、金利の調整に該当する金額を計算する方法です。
「金利の調整」であるため、償却原価法で計算した金額は、「有価証券利息」で仕訳し、「満期保有目的債券」に加減します。
<ポイント:償却原価法>
- ・額面より高い金額で取得
- →満期日までに毎期、金利調整に該当する金額を帳簿残高からマイナス
- ・額面より低い金額で取得
- →満期日までに毎期、金利調整に該当する金額を帳簿残高にプラス
- ※どちらも「満期日までに額面金額に一致するように、満期保有目的債券を加減する」ことがポイント
金利調整部分の計算方法
簿記2級では「額面と取得原価の差額は月数で各期に按分」して計算します。
| 取引 | ケース | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 決算評価 | 原則 | 仕訳なし | ||||
| 金利調整 | 額面 < 取得原価 | 有価証券利息 | ××× | 満期保有目的債券 | ××× | |
| 額面 > 取得原価 | 満期保有目的債券 | ××× | 有価証券利息 | ××× | ||
<例題>
- 決算(3/31)に際し、社債(満期保有目的 額面価額100 取得原価90 当期10/1に取得 償還期限は翌々期の3/31)について償却原価法を適用する。
- (仕訳)
- 満期保有目的債券 2 / 有価証券利息 2 ※
- 当期経過月数 = 6ヶ月(10/1 - 3/31)
- 取得日から償還期限までの総月数 = 当期6ヶ月 + 来期12ヶ月 + 翌々期12ヶ月 = 30ヶ月
- ※(100 - 90) × 6ヶ月 / 30ヶ月 = 2
仕訳(まとめ)
まとめると次の通り。
| 取引 | ケース | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 債券取得 | 満期保有目的債券 | ××× | 現金預金など | ××× | |
| 有価証券利息 | ××× | ||||
| 利息 | 現金 | ××× | 有価証券利息 | ××× | |
| 決算評価 | 原則 | 仕訳なし | |||
| 金利調整 ※1 | 満期保有目的債券 | ××× | 有価証券利息 | ××× | |
※1:「額面価額 > 取得価額」の場合の仕訳
仕訳問題
- 以下は、A社の×3年(決算日12月31日)の取引である。
- 1. 7月1日 社債券1枚(額面¥1,000,000、利率:年1.825%、利払日:6月と12月の末日、償還期限:×5年12月31日)を満期保有目的で額面¥100につき¥94で購入し、当座預金より支払った。端数利息は発生しないものとする。
- 2. 12月31日 決算日を迎え利息が当座預金に振り込まれた。額面金額と購入額の差額は金利の調整と認められる。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 満期保有目的債券 | 940,000 | 当座預金 | 940,000 |
| 2 | 当座預金 | 9,200 | 有価証券利息 | 9,200 |
| 満期保有目的債券 | 12,000 | 有価証券利息 | 12,000 |
解説
問題1.
・取得原価 = 額面¥1,000,000 × (¥94 / ¥100) × 社債1枚 = ¥940,000
問題2.
・有価証券利息 = 額面¥1,000,000 × 利率1.825% × {経過日数日184日(7/1~12/31) / 365日} × 社債1枚 = ¥9,200
・金利調整(償却原価法)= (額面¥1,000,000 - 取得原価¥940,000) × 経過月数6ヶ月(×3年7月~12月) ÷ 償還期限までの月数30ヶ月(×3年7月~×5年12月) = ¥12,000
