未収入金と経過勘定の資産性
記事最終更新日:2021年8月24日
記事公開日:2012年4月18日
未収入金と経過勘定(前払費用)の資産性を解説します。特に前払費用の定義は難しいので、例を使って一つ一つ説明していきます。
未収入金
未収入金(みしゅうにゅうきん)とは、その名の通り未だ現金を回収していない場合に使用する科目です。
これまでに習った科目で同じような科目がありましたが、何だったか覚えていますか?
答えは売掛金と受取手形です。どちらも将来、現金を回収する約束をした時に使用する科目です。
ただし売掛金や受取手形は、営業取引、すなわち会社が行っている事業でモノやサービスを販売した時に使用する科目です。
それに対して未収入金は、営業取引以外の取引でモノやサービスを売却した時に使用します。
代表的な取引は、会社が保有している固定資産(建物、土地、自家用車など)や株式などの売却取引です。
これらの取引は会社が事業として行っている取引ではありません。
建築会社や不動産会社、中古車販売事業などを営む会社などは、会社の事業で建物や土地、自動車を販売しているので、この場合は売掛金や受取手形を使用します。
ただし、例えば建築会社であったとしても、その会社が所有する本社ビルを売却する、といった場合には未収入金を使用します。
同様に中古車販売会社の経営者が、仕事で使用している自動車を売却する、という場合も未収入金を使用します。
流動資産となる条件
未収入金は、上記の通り、会社が事業として行う取引には使用しません。
すなわち、正常営業循環基準では、流動資産には該当しません。
そこで一年基準で考え、貸借対照表日(3月決算であれば、3月31日)の翌日(4月1日)から数えて回収までに1年以内であれば、流動資産、1年超を要する場合には固定資産として表示します(例えば、長期未収入金として表示します)。
経過勘定
次に「経過勘定(けいかかんじょう)」について説明します。
経過勘定と呼ばれる科目は4種類あり、次の通りです。
- ・前払費用(まえばらいひよう)
- ・前受収益(まえうけしゅうえき)
- ・未払費用(みばらいひよう)
- ・未収収益(みしゅうしゅうえき)
前払費用と未収収益は流動資産、前受収益と未払費用は流動負債です。
さらに固定資産、固定負債としての表示科目として、長期前払費用、長期前受収益、長期未収収益、長期未払費用という科目も存在します。
前払費用】
経過勘定のうち、実務上よく登場する科目として、前払費用を解説します。
前払費用には、「企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)」という会計基準の中に次の定義があります。
前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。
代表的な取引として例えば、賃貸借契約があります。
イメージしやすいのは、マンションやアパートを借りる契約です。
賃貸借契約は、家賃1ヶ月分を前払いする契約が多いのですが、本社ビルの賃貸借契約を例として上述の定義に照らし合わせてみると、次の通り当てはめることができます。
- ・「一定の契約に従い」⇒会社の本社ビルを借りる賃貸借契約を家主さん(不動産会社)と締結する。
- ・「サービスの提供を継続的に受け」⇒本社ビルを移転しない限りは継続的に借りる。建物を使用する、というサービスを継続して受ける。
- ・「いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価」⇒家賃は1ヶ月分を前払いする。
以上から定義を満たすため、前払費用になります。
例えば、家賃が月10万円で4月分の家賃を3月に支払った場合、3月31日時点の貸借対照表では、前払費用10万円となります。
前払費用が資産である理由
これまでのページの解説では、資産を次の通り説明しました。
資産:お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノ・サービスがどれだけあるのか。
前払費用は、将来、現金は入ってきません。それなのに、なぜ資産の科目になるのでしょうか?
それは、現金は入ってきませんが、現金を前払いしているため、将来、現金を支払わずにサービスを受けることができるからです。
会計用語で「経済的価値(けいざいてきかち)」があるから、といいます。
上述の資産の説明でいえば、「将来・・・提供を受ける・・・モノ・サービス」という部分に該当します。
先ほどの例で説明すると、「3月31日時点では、4月分の家賃はもう払わなくていい⇒お金を払わないで10万円分のサービスを受けることができる。」ということです。
以上から、前払費用は資産の科目として取り扱います。
【補足】過去の入金や支出と資産の説明
前払費用を説明しました。
資産を説明したページでも補足として少し記述しましたが、将来やある時点(現在)の入金だけでなく、前払費用のように「過去の出金」も資産になるのは、上記のように「過去の出金 = 将来のサービスの受け取り」になるからです。
流動資産となる条件
前払費用として扱う取引は通常は営業取引ではなく、従って正常営業循環基準には該当しません。
そこで一年基準で考えます。すなわち次の通りです。
- 貸借対照表日の翌日から数えて、
- 1年以内に受けるサービス⇒流動資産
- 1年を超えて受けるサービス⇒固定資産
先ほどの例でいえば、4月分の支払家賃は3月31日時点では、翌月分のサービスに該当し1年以内に受けるサービスであることから、流動資産の区分として前払費用で10万円を計上します。
しかし例えば、16ヶ月分を前払いする場合には、12ヶ月分の120万円を流動資産の区分として前払費用で計上し、残りの4ヶ月分である40万円を固定資産の区分として長期前払費用で計上します。