総記法とは|仕訳方法や計算方法を解説(数式で証明)
執筆日:2023年8月19日
「総記法」は「三分法」「分記法」「売上原価対立法」と同じく、商品売買の仕訳方法の1つです。
仕訳方法は比較的簡単に理解できますが、決算整理仕訳の金額の計算方法について苦手とする人が多いと思います。
そこで、本記事では、「総記法」の仕訳方法について解説するとともに、決算整理仕訳の金額の計算式について、数式を解いて証明します。
総記法とは|仕訳方法や計算方法を解説(数式で証明)
目次
総記法の仕訳一覧(まとめ)
はじめに仕訳の一覧を示します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の購入 | 商品 | xxx | 買掛金など | xxx |
商品の販売 | 売掛金など | xxx | 商品 | xxx |
返品・値引き | 商品 | xxx | 売掛金など | xxx |
決算整理仕訳 | 商品 | xxx | 商品販売益 | xxx(※1) |
(※1)商品販売益額の計算方法
- ・前T/B商品残高が「借方残」の場合
- → 商品販売益額 = 期末商品残高 - 前T/B商品残高
- ・前T/B商品残高が「貸方残」の場合
- → 商品販売益額 = 期末商品残高 + 前T/B商品残高
総記法とは
「総記法」とは、商品売買の仕訳方法の1つをいい、「商品」「商品販売益」を使用して仕訳します。
仕訳の特徴
仕訳方法は「分記法」と似ていますが、期中には「商品販売益」は使用せず、「商品」で仕訳し、決算整理仕訳で「商品販売益」を計上する点が異なります。
期中には、仕入も売上もどちらも「商品」のみで仕訳することから、「分記法」のように、いつでも手許商品残高や商品販売益(粗利)が把握できるわけではなく、「総記法」による期中の「商品残高」は、なんの意味も持ちません。
一方で、「総記法」によれば、期中には販売の都度、販売商品の原価(つまり売上原価)を計算することなく記帳することができることから、「分記法」よりも迅速に記帳できます。
「総記法」では、期末時において、「決算整理仕訳」として「商品販売益」を計上します(計算方法は後述「商品販売益の計算方法」を参照)。
活動別の仕訳方法
「総記法」の仕訳方法を活動別に解説します。
商品購入時の仕訳
商品が増加するため、借方に「商品」を記入し、貸方には「買掛金」などの支払手段を記入します(分記法と同じ)。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の購入 | 商品 | xxx | 買掛金など | xxx |
商品販売時の仕訳
商品が減少することから、貸方に「商品」を記入します。
計上額は販売原価(売上原価)ではなく、「販売額(売上額)」になります(分記法との違い)。
総記法では「商品販売益」も含めて「商品」で仕訳します。
借方には、「売掛金」などの回収手段を記入します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の販売 | 売掛金など | xxx | 商品 | xxx |
返品・値引きの仕訳
販売時の仕訳とは貸借反対の仕訳を記帳します。分記法と異なり、返品と値引きとで仕訳に違いはありません。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
返品・値引き | 商品 | xxx | 売掛金など | xxx |
決算整理仕訳
前T/Bの「商品残高」が帳簿上の期末商品残高になるように、金額を調整する仕訳を記帳します。
この調整金額は「商品販売益」です。
上記「商品販売時の仕訳」で解説した通り、期中の商品販売時において、「商品勘定」の貸方は「売上額(つまり、売上原価 + 商品販売益)」で処理しています。
しかし、本来、商品勘定は原価(仕入額)で評価すべきです。
そこで、「商品勘定」の貸方に含まれる「商品販売益」を控除するとともに、同額を「商品販売益勘定」に記帳するために、「決算整理仕訳」では、借方に「商品」を記入し、貸方に「商品販売益」を記入して仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
決算整理仕訳 | 商品 | xxx | 商品販売益 | xxx(※1) |
(※1)商品販売益額の計算方法
- ・前T/B商品残高が「借方残」の場合
- → 商品販売益額 = 期末商品残高 - 前T/B商品残高
- ・前T/B商品残高が「貸方残」の場合
- → 商品販売益額 = 期末商品残高 + 前T/B商品残高
商品販売益の計算方法
上記「(※1)商品販売益額の計算方法」に記載した通り、商品販売益の計算方法は、商品の前T/B残高が「借方残」の場合と「貸方残」の場合とに分けることができます。
上記に示した計算式を数学的に証明することで解説すると、次の通り。
商品の前T/B残高が「借方残」の場合
借方残を正(プラス)、貸方残を負(マイナス)で表すとします。
「商品勘定」を計算式に表すと、次の通り。
前T/B商品残高 = 期首商品残高 + 当期商品仕入高 - (当期商品売上原価 + 商品販売益)
上記式を移項すると、
商品販売益 = (期首商品残高 + 当期商品仕入高 - 当期商品売上原価) - 前T/B商品残高
「期末商品残高 = 期首商品残高 + 当期商品仕入高 - 当期商品売上原価」より
∴商品販売益 = 期末商品残高 - 前T/B商品残高
商品の前T/B残高が「貸方残」の場合
「借方残を正(プラス)、貸方残を負(マイナス)で表わす」という仮定、及び上記式の「∴商品販売益 = 期末商品残高 - 前T/B商品残高」のうち、前T/B商品残高は借方残のため、
前T/B商品残高 = (- 前T/B商品残高 )
を代入すると、
商品販売益 = 期末商品残高 - (- 前T/B商品残高 )
∴商品販売益 = 期末商品残高 + 前T/B商品残高
まとめ
以上、「総記法」の仕訳方法を解説しました。
決算整理仕訳の「商品販売益額」の計算方法は2通りで説明していますが、上述の通り、数式で考えれば1つで表せます。