15-9 商品仕入と販売(アップストリーム)
次に商品仕入と販売取引(アップストリーム)と連結修正仕訳を解説します。
アップストリームとは
「アップストリーム」とは、子会社が親会社に販売する取引の流れをいいます。
取引例
次の商品販売と仕入取引を例とします。
<アップストリーム-商品仕入と販売>
- (1)子会社が、当期に外部から100円で仕入れた商品を、120円で親会社に掛け販売
- (2)当期に、親会社はこの代金(買掛金)を子会社に支払わない(次期に支払い)
- (3)商品は、親会社の手元にある(外部販売しない)
- (4)親会社は、子会社株式の80%を保有(非支配株主20%)
- (5)貸倒引当金の計上は考慮しない。
前回のダウンストリームとは、親会社と子会社の立場が入れ替わりました。ただし、説明を分かりやすくするため、期首商品はない設定にしています。
取引の確認
子会社から親会社へ、モノを販売しているので、内部取引であり、かつアップストリームに該当します。
子会社には20の利益が発生しました。親会社は外部に販売せず保有しているため、この利益20円は未実現利益です。
個別の仕訳
以下、財務諸表(決算書)上の表示科目で考えます。
個別の仕訳は次の通り。
<1.子会社の仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-1 | 当期商品仕入高(※) | 100 | 買掛金 | 100 |
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
<2.親会社の仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
| 2-2 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
連結修正仕訳
次に、連結修正仕訳を1つずつ解説します。(1)から(3)まではダウンストリームと同じ仕組みです。
(1)仕入高と売上高の消去
親会社と子会社の内部取引に該当するため、連結修正仕訳を行って消去します。
<個別の仕訳(内部取引)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
<連結修正仕訳-売上高と仕入高の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 売上高 | 120 | 当期商品仕入高(※) | 120 |
(2)売掛金と買掛金の消去
内部取引のうち、売上高と仕入高(当期商品仕入高または売上原価)は消去できましたが、売掛金と買掛金がそのままです。
この勘定科目の金額も、内部取引から発生したため、連結修正仕訳で消去します。
<個別の仕訳(内部取引)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
<連結修正仕訳-売掛金と買掛金の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-2 | 買掛金 | 120 | 売掛金 | 120 |
(3)期末商品の未実現利益の消去
親会社が保有する商品のうち、20円は未実現利益です。従って、連結修正仕訳で消去します。
<個別の仕訳(期末商品)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-2 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
<連結修正仕訳-未実現利益の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-3 | 期末商品棚卸高(※) | 20 | 商品 | 20 |
(4)非支配株主への利益配分の消去
この論点が、アップストリーム特有の論点です。
子会社で利益を計上した場合、「15-4 支配獲得後の利益配分」で解説した通り、次の連結修正仕訳を記帳します。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-4 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | ××× | 非支配株主持分 | ××× |
しかし、子会社の未実現利益20は、3-3で消去しました。すなわち、3-4では、消去した未実現利益20の影響が含まれてしまっていることから、 この影響を消去しなければなりません。
すなわち、次の連結修正仕訳を記帳します。
<連結修正仕訳-非支配株主への利益配分の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-5 | 非支配株主持分 | 4 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 4 |
計算:子会社の未実現利益20 × 非支配株主持分20% = 4円
<考え方-非支配株主への利益配分(未実現利益)の影響消去>
- 3-3の仕訳で期末商品から未実現利益20を消去
- →期末商品棚卸高(売上原価=費用)を借方に20計上
- →子会社の利益が減少
- →子会社の純資産が減少
- →非支配株主持分を減少させる必要がある(親会社にだけ負担させるのは不平等)
- →3-5の仕訳になる
- →親会社の負担が4だけ軽くなった
連結修正仕訳のまとめ
以上をまとめると、次の通り。
<1.子会社の個別仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-1 | 当期商品仕入高(※) | 100 | 買掛金 | 100 |
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
<2.親会社の個別仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
| 2-2 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
<3.連結修正仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 売上高 | 120 | 当期商品仕入高(※) | 120 |
| 3-2 | 買掛金 | 120 | 売掛金 | 120 |
| 3-3 | 期末商品棚卸高(※) | 20 | 商品 | 20 |
| 3-5 | 非支配株主持分 | 4 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 4 |
(※)は売上原価の内訳科目。売上原価でも可
3-4の仕訳はアップストリームだけの仕訳ではないため、掲載せず。
<例題>
- P社は×0年度にS社の発行済み株式数の80%を保有しており子会社としている。
- ×1年度にS社はP社への商品販売を開始した。この取引に関するP社データは次の通り。
- P社仕入総額 500、期末商品 100(うち未実現利益20)、買掛金 100
- (×1年度の連結修正仕訳)
- 売上高 500 / 売上原価 500
- 買掛金 100 / 売掛金 100
- 売上原価 20 / 商品 20
- 非支配株主持分 4 / 非支配株主に帰属する当期純利益 4
- ※売上原価勘定による解答
<応用>期首商品が存在する場合
ダウンストリームの解説と同じように、期首商品50(未実現利益10)を親会社が保有していた場合、追加の仕訳は次の通り。
<2.親会社の個別仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-3 | 期首商品棚卸高(※) | 50 | 商品 | 50 |
<3.連結修正仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-6 | 商品 | 10 | 期首商品棚卸高(※) | 10 |
| 3-7 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 2 | 非支配株主持分 | 2 |
(※)は売上原価の内訳科目。売上原価でも可
未実現利益10 × 非支配株主比率20% = 2
<考え方-非支配株主への利益配分(未実現利益)の影響消去>
- 3-6の仕訳で期末商品から未実現利益を消去
- →期首商品棚卸高(売上原価=費用)を貸方に計上
- →子会社の利益が増加
- →子会社の純資産が増加
- →非支配株主持分が増加
- →3-7の仕訳になる
<例題>
- P社は×0年度にS社の発行済み株式数の80%を保有しており子会社としている。
- ×1年度にS社はP社への商品販売を開始した。この取引に関するP社データは次の通り。
- (×1年度)P社仕入総額 500、期末商品 100(うち未実現利益20)、買掛金 100
- (×2年度)P社仕入総額 700、期末商品 150(うち未実現利益30)、買掛金 200
- (×1年度の開始仕訳)
- 利益剰余金 20 / 商品 20
- 非支配株主持分 4 / 利益剰余金 4
- (×2年度の連結修正仕訳)
- 売上高 700 / 売上原価 700
- 買掛金 200 / 売掛金 200
- 商品 20 / 売上原価 20
- 非支配株主に帰属する当期純利益 4 / 非支配株主持分 4
- 売上原価 30 / 商品 30
- 非支配株主持分 6 / 非支配株主に帰属する当期純利益 6
- ※売上原価勘定による解答
- ×1年度の期末商品は×2年度の期首商品
