15-8 商品仕入と販売(ダウンストリーム)
ここから、連結会社間取引の連結修正仕訳について、解説していきます。
今回は、商品仕入・販売取引(ダウンストリーム)と連結修正仕訳を解説します。
取引例
次の商品販売・仕入取引を例とします。
<ダウンストリーム-商品仕入と販売>
- (1)親会社が、当期に外部から100円で仕入れた商品を、120円で子会社に掛け販売
- (2)当期に、子会社はこの代金(買掛金)を親会社に支払わない(次期に支払い)
- (3)商品は子会社の手元にある(外部販売しない)
- (4)親会社から仕入れた商品を、子会社は期首に50(未実現利益10)保有している
- (5)親会社は、子会社株式の80%を保有(非支配株主20%)
- (6)貸倒引当金の計上は考慮しない。
取引の確認
親会社から子会社へモノを販売しているので、内部取引であり、かつダウンストリームに該当します。
次に、親会社には20の当期利益が発生しました。子会社は外部に販売せず保有しているため、この利益20円は未実現利益です。
さらに、子会社が保有する期首商品にも10の未実現利益が含まれています。
個別の仕訳
以下、財務諸表(決算書)上の表示科目で考えます。
個別財務諸表上の仕訳は、次の通り。
<1.親会社の個別F/S上の仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-1 | 当期商品仕入高(※) | 100 | 買掛金 | 100 |
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
※1-1は「仕入 ×××/買掛金 ×××」をB/S・P/L科目にしたもの
<2.子会社の個別F/S上の仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
| 2-2 | 期首商品棚卸高(※) | 50 | 商品 | 50 |
| 2-3 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
※2-1は当期の仕入。「仕入 ×××/買掛金 ×××」をB/S・P/L科目にしたもの
※2-2は期首商品。「仕入 ×××/繰越商品 ×××」をB/S・P/L科目にしたもの
※2-3は期末商品。「繰越商品 ×××/仕入 ×××」をB/S・P/L科目にしたもの
(※)簿記2級の試験では売上原価で仕訳します(以降の(※)も同様の意味)。
<補足>売上原価と連結修正仕訳
解説上、仕訳の意味を理解できるように「期首商品棚卸高」「当期商品仕入高」「期末商品棚卸高」で記載していますが、簿記2級では3科目とも売上原価で仕訳すれば解答できる問題が出題されます。
連結修正仕訳
次に、連結修正仕訳を1つずつ解説します。
(1)仕入高と売上高の消去
親会社と子会社の内部取引に該当するため、連結修正仕訳を行って消去します。
対象となる個別の仕訳と連結修正仕訳を、それぞれ掲載します(以降も同様)。
<個別の仕訳(内部取引)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
<連結修正仕訳-売上高と仕入高の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 売上高 | 120 | 当期商品仕入高(※) | 120 |
(2)売掛金と買掛金の消去
内部取引のうち、売上高と売上原価は消去できましたが、売掛金と買掛金がそのままです。
この勘定科目の金額も内部取引から発生したため、連結修正仕訳で消去します。
<個別の仕訳(内部取引)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
<連結修正仕訳-売掛金と買掛金の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-2 | 買掛金 | 120 | 売掛金 | 120 |
(3)期首商品の未実現利益の消去
この例では、子会社は親会社から仕入れた商品を、期首に50(未実現利益10)だけ保有しています。この未実現利益の影響も連結会計では消去する必要があります。
<個別の仕訳(期首商品)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-2 | 期首商品棚卸高(※) | 50 | 商品 | 50 |
<連結修正仕訳-未実現利益の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-3 | 商品 | 10 | 期首商品棚卸高(※) | 10 |
(4)期末商品の未実現利益の消去
子会社が保有する期末商品のうち、20円は未実現利益です。従って、連結修正仕訳で消去します。
<個別の仕訳(期末商品)>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-3 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
<連結修正仕訳-未実現利益の消去>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-4 | 期末商品棚卸高(※) | 20 | 商品 | 20 |
連結修正仕訳のまとめ
以上をまとめると、次の通り。
<1.親会社の個別仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1-1 | 当期商品仕入高(※) | 100 | 買掛金 | 100 |
| 1-2 | 売掛金 | 120 | 売上高 | 120 |
<2.子会社の個別仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2-1 | 当期商品仕入高(※) | 120 | 買掛金 | 120 |
| 2-2 | 期首商品棚卸高(※) | 50 | 商品 | 50 |
| 2-3 | 商品 | 120 | 期末商品棚卸高(※) | 120 |
<3.連結修正仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 売上高 | 120 | 当期商品仕入高(※) | 120 |
| 3-2 | 買掛金 | 120 | 売掛金 | 120 |
| 3-3 | 商品 | 10 | 期首商品棚卸高(※) | 10 |
| 3-4 | 期末商品棚卸高(※) | 20 | 商品 | 20 |
(※)は売上原価の内訳科目。売上原価でも可
<例題>
- P社は×0年度にS社の発行済み株式数の80%を保有しており、子会社としている。
- ×1年度にP社はS社への商品販売を開始した。この取引に関するS社データは次の通り。
- S社仕入総額 1,000、期末商品 200(うち未実現利益40)、買掛金 100
- (×1年度の連結修正仕訳)
- 売上高 1,000 / 売上原価 1,000
- 買掛金 100 / 売掛金 100
- 売上原価 40 / 商品 40
- ※売上原価勘定による解答
- ×1年度から販売開始のため期首商品はない。上記3-3に該当する仕訳は必要なし
開始仕訳の場合
上記連結修正仕訳では、仕訳は4種類ですが、開始仕訳では3-3と3-4のみを仕訳します。損益の科目である期首商品棚卸高と期末商品棚卸高を、 利益剰余金に書き換えて、次の通りになります。
<開始仕訳>
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3-3 | 商品 | 10 | 利益剰余金 | 10 |
| 3-4 | 利益剰余金 | 20 | 商品 | 20 |
3-1は、借方も貸方も利益剰余金になります。仕訳する意味がないため、開始仕訳は行いません。
3-2は、売掛金も買掛金もB/Sの仕訳であるため、当年度の売掛金と買掛金の残高を相殺する必要があります。 開始仕訳では、前年度の残高を相殺することになるため、3-2は開始仕訳を行いません。
<例題>
- P社は×0年度にS社の発行済み株式数の80%を保有しており、子会社としている。
- ×1年度にP社はS社への商品販売を開始した。この取引に関するS社データは次の通り。
- (×1年度)S社仕入総額 1,000、期末商品 200(うち未実現利益40)、買掛金 100
- (×2年度)S社仕入総額 1,200、期末商品 250(うち未実現利益50)、買掛金 200
- (×1年度の開始仕訳)
- 利益剰余金 40 / 商品 40
- (×2年度の連結修正仕訳)
- 売上高 1,200 / 売上原価 1,200
- 買掛金 200 / 売掛金 200
- 商品 40 / 売上原価 40
- 売上原価 50 / 商品 50
- ※売上原価勘定による解答
- ×1年度の期末商品は×2年度の期首商品
