会計入門 貸倒引当金とは|貸借対照表の資産である理由や要件、計上ルールを解説

更新日:2020年3月4日
作成日:2012年4月26日

前回、「会計入門その11~固定資産と減損会計」では、固定資産について現状制度を説明しました。

今回は貸倒引当金について説明します。

冒頭に引当金について説明し、貸倒引当金へと解説を移行します。

適用対象となる資産の範囲や資産計上する理由、貸倒引当金の要件や貸倒懸念債権、破産更生債権等といった3つの計上区分と会計手続きについても併せて解説していきます。

引当金とは

引当金(ひきあてきん)について、企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)は次の通り定義しています。

企業会計原則 注解
注18 引当金について
(貸借対照表原則四の(一)のDの一項、(二)のAの三項及びBの二項)
「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。

以上から引当金であるための要件は次の4つです。全てに該当する場合に引当金として計上します。

  • (1)将来の特定の費用又は損失
  • (2)発生が当期以前の事象に起因
  • (3)発生の可能性が高い
  • (4)金額を合理的に見積ることができる

貸倒引当金とは

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、引当金のうち、文字通り将来の貸倒に備えて計上するもので売掛金や受取手形といった資産である債権をマイナス評価する資産の控除科目をいいます。

例えば、モノやサービスを販売して受取手形や売掛金といった債権を資産に計上しても回収できるまでは本当にお金が入るかどうか分かりません。

これまでに解説した通り、資産とは将来、入ってきそうなお金ですから、入らないお金は資産ではないため資産として計上しないようにします。

しかし、いくら貸し倒れるのか貸借対照表の作成時点で分かるといいのですが、将来のことなので確定金額は分かりません。

かといって受取手形や売掛金をそのまま全額計上するというのも健全な会計処理とはいえません。

そこで、貸し倒れるお金を一定の方法で計算して貸倒引当金として計上し、資産のマイナス勘定(控除科目)とすることで、将来、入ってくるお金を妥当な金額として貸借対照表に表示させようとするのです。

このように貸し倒れを見積もりお金の回収可能額を評価する性格から、貸倒引当金を「評価性引当金(ひょうかせいひきあてきん)」ということがあります。

貸倒引当金として計上するための要件

上述の「引当金とは」にて、引当金の要件を挙げました。

この要件に照らし合わせて貸倒引当金として計上するための要件を考えると次の通りです。

  • (1)将来の特定の費用又は損失
    →将来、貸し倒れた場合には費用又は損失となる
  • (2)発生が当期以前の事象に起因
    →貸し倒れという事実の発生は、販売による売掛金の計上や貸し付けといった過去の事実が原因
  • (3)発生の可能性が高い
    →貸し倒れの高い債権に対して計上
  • (4)金額を合理的に見積ることができる
    →過去の貸し倒れ実績率などに基づいて見積もる

以上の条件に全て当てはまる場合にのみ、当期(売掛金や貸付金を計上した期)に貸倒引当金として計上します。

貸倒引当金の計上根拠

損益計算の立場と貸借対照表の立場という2つの側面から計上根拠を説明します。

損益計算の立場からは「適正な期間損益計算を行うため」が貸倒引当金の計上根拠となります。

費用計上は発生主義に基づくことが原則です。しかし、貸倒引当金は貸し倒れが発生していないにも関わらず、販売や貸し付けによる売掛金などの債権が発生した期に計上します。

なぜならば、貸し倒れの可能性が高く金額も合理的に見積もれるのであれば、債権が発生した期に費用計上することが「費用収益対応の原則」の観点から望ましいからです。

また、予め将来に備えて費用や損失を計上するという「保守主義の原則」の考えからも貸倒引当金の計上は求められます。

次に貸借対照表の立場からは、資産とは将来入ってくるお金、すなわち回収可能額を表すべきという考えによります。

しかし、売掛金や貸付金といった債権が発生した段階では貸し倒れしたわけではないため、これらの科目の金額を直接減額はできません。

そこで貸倒引当金という評価勘定を用いて貸倒見積額を貸借対照表の資産にマイナス計上することで、債権の回収可能額を表現します。

貸倒引当金の区分と計上ルール

貸倒引当金の計上時点では、貸し倒れが発生したわけではないため、確定した貸し倒れ額を費用または損失として計上できません。

それでは、どうやって計上するのかというと、それは、固定資産の減価償却(げんかしょうきゃく)と同じように、一定のルールで貸し倒れの金額を計算して資産の減少として貸借対照表に貸倒引当金として表示させます(金融商品に関する会計基準)。

具体的な会計処理の手続き(貸倒引当金の区分と計上)は次の通りです。

1.貸倒引当金の対象となる資産を確認する

金銭債権(きんせんさいけん)」が該当します。要するに取引先との間で、お金をもらう約束をしている取引で発生したものです。

例えば、「受取手形」「売掛金」「未収入金」「長期貸付金」などが該当します。

一方で棚卸資産や建物などは金銭債権に該当しません。

なぜならば販売・売却の前であるため、まだ取引先との間でお金をもらう約束をしていないからです。

棚卸資産は販売する時にお金をもらう約束が交わされ、棚卸資産を出荷や納品を行い、請求して初めて受取手形や売掛金になります。

建物は通常は最後まで売上利益の貢献のために使用するので金銭債権の対象になるようなものではありません。

なんらかの理由で建物を売却することになった場合には、未収入金になるのでその場合は金銭債権です。

2.金銭債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権当の3種類に区分する

金銭債権を次の「一般債権」「貸倒懸念債権」「破産更生債権等」という3種類に区分します。

  • 1)一般債権(いっぱんさいけん):経営状態に重大な問題が生じていない債権者に対する債権
  • 2)貸倒懸念債権(かしだおれけねんさいけん):経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権
  • 3)破産更生債権等(はさんこうせいさいけんとう):経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権

3.貸倒見積高の算定

上述の3区分毎に貸倒見積高を算定します。

具体的には一般債権については過去の貸倒実績の状況に基づいて算定し、残り2つの区分については取引先の経営状況や担保額などを考慮して個別に算定します。

貸倒懸念債権は担保の処分額や保証による回収見込額を控除した残額に対して、債務者(得意先や貸付先など)の財政状態や経営成績を直近のB/SやP/Lを入手して考慮することで貸倒見積高を算定する方法などによって算定します。

上記の定義からお分かりだと思いますが、破産更生債権等は最も厳しく貸倒を見積もることになります。

4.貸倒引当金の計上

上記の貸借対照表では、流動資産と固定資産それぞれに貸倒引当金を表示しています。

このように貸倒の対象となっている流動資産と固定資産それぞれの区分毎に貸倒引当金を計上します。

例えば、売掛金100のうち、5を貸倒引当金として見積もった場合には流動資産の貸倒引当金として表示します。

長期貸付金の貸倒引当金であれば、固定資産の貸倒引当金として表示します。

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