会計入門 資産計上と評価のまとめ(上場企業の会計基準)、減損

更新日:2020年3月4日
作成日:2012年4月24日

前回、「会計入門その10~ 固定資産と時価主義」では、固定資産の評価と時価主義について解説しました。

今回は固定資産を含めた資産計上と評価について、現在の会計制度(上場企業の会計基準)について、減損会計も含めて解説します。

資産の計上根拠と会計基準

前回と前々回の2回に分けて、2つの視点から固定資産資産計上(評価)について解説しました。

2つの視点を再確認すると次の通りです。

どちらの考え方を適用するかによって、資産の計上額や評価額は異なります。

この2つの考え方は固定資産に限らず、流動資産についても同様に当てはめて考えることができます。

そこで各資産科目について、上場企業に適用される現在の我が国の会計制度(会計基準)について、この2つの考え方に当てはめながら解説します。

※資産評価:決算時に資産の計上額を評価して別の金額に計上しなおすことを「資産評価(しさんひょうか)」といいます。

上場企業に適用される我が国の会計基準(資産計上と評価のまとめ)

上場企業を想定した日本の会計基準について、資産計上(評価)を下の表にまとめました(表をクリックすると大きな画像でご覧になれます)。

※入門サイトであるこのサイトでは説明しない会計用語も含めています。

以下、資産の取得と決算時の評価について、特に決算時の評価は上述の2つの視点に当てはめながら解説していきます。

資産の取得と減少(棚卸資産を除く流動資産、投資有価証券、子会社株式など)

受取手形、売掛金、有価証券、投資有価証券、前払費用、未収入金といった科目は、それぞれ入出金やサービス対価で計上します。

※「入出金」とは現金だけでなく預金を含みます。以下、まとめて「キャッシュ」という言葉を使って解説します。

受取手形や売掛金、未収入金はモノやサービスの販売額(売却額)で計上します。

有価証券や投資有価証券は取得時の株価、前払費用は契約で定められたサービス金額で計上します。

期中に資産を取得した時には、このように取得のために支払ったキャッシュやモノ・サービスの金額に基づいて計上します。

特に支払ったキャッシュに基づいて資産を計上する考え方を「取得原価主義(しゅとくげんかしゅぎ)」といいます。

取得後、これらの資産の計上額は資産の要件を満たさなくなれば減少します。

例えば、受取手形や売掛金、未収入金の代金を回収した時や、有価証券を売却した時、前払費用の対価としてのサービスを享受(きょうじゅ。受け取るという意味)した場合には、決算を待たずして減少します。

なぜならば、これらの資産の計上根拠は、上述の2つの考え方のうち、「①換金価値があるから」に基づいているからです。

前払費用についても先にキャッシュを支払っている点が他の科目と異なっているだけであり、サービス価値を受け取った時点で、他の科目と同様、換金価値がなくなったため前払費用は減少すると考えることができます。

棚卸資産の取得と製造、販売と資産計上

棚卸資産も、取得時(仕入れ時)は取得原価主義に基づいて支払ったキャッシュで計上します。

モノ・サービスを製造するメーカーは、棚卸資産は取得後に製造の過程を経ることになります。

そこで、次に製造段階での棚卸資産の計上額について、現在の会計制度(会計基準)を解説します。

モノやサービスの製造から完成に至る過程で、棚卸資産は「原材料及び貯蔵品⇒仕掛品⇒商品及び製品」と加工されます。

このように、加工される段階に応じて科目が変化していきます。

モノ・サービスを製造するために消費される原材料・貯蔵品などの資産計上額や作業員などの給料(労務費)などは、基本的には支払対価、すなわち取得原価主義に基づいて計上した金額を基礎として計算し、製造中であれば仕掛品勘定、完成後は製品勘定に集計します。

製造中では棚卸資産の金額の合計額が増加することはありません。

すなわち、「製造中の仕掛品や完成後の製品は、モノ・サービスを作るのに消費した材料や労務費などの金額を、そのまま引き継ぐ」ということです。

つまり、モノ・サービスが完成品に近づくにつれて付加価値が少しずつプラスアルファされるわけではありません。

例えば、モノ・サービスを1つ、製造するのに材料や作業員への給料など合計1,000円。完成した製品を1,500円で販売するとしても、製品が完成した時点では材料の取得額や支払った給料の合計である1,000円で製品を計上する、ということです。

最後に棚卸資産の販売について説明します。

製品は販売時に減少します。

なぜ減少するかというと、「棚卸資産の取得の目的は売上利益の稼得に貢献するためであり、販売時にその目的を果たしたから」です。

販売(売上という収益)に対応した製品を減少させて、売上原価という費用に計上することを「費用収益対応の原則(ひようしゅうえきたいおうのげんそく)」といいます。

製品を販売した時に対価として受取手形や売掛金が増加します。

モノ・サービスの製造(または仕入)を販売した成果として受け取るものであり、受取手形や売掛金は将来のキャッシュを増やすので資産計上されます。

資産の取得と使用(投資有価証券や子会社株式などを除く固定資産)

固定資産についても取得時には取得原価主義に基づいて支払ったキャッシュで計上します。

有形固定資産及び無形固定資産の各科目は取得した後に減価償却手続きを経て、その使用に応じて段階的に資産が減少していきます。

棚卸資産との違いは、どれだけ売上利益の稼得に貢献したのか把握することが難しいということです。

棚卸資産は例えば製品が1つ販売されれば、その製品1つを作るのにかかったお金が売上利益に貢献したということで、製品から減少させる金額を簡単に把握できます。

売上とその売上に貢献する棚卸資産が1:1で対応しているということで、会計用語で「個別対応(こべつたいおう)」または「直接的対応(ちょくせつてきたいおう)」といいます。

有形固定資産や無形固定資産の場合には売上1つに対して1つではなく、使用する期間に渡る売上全体に対して1個の固定資産が売上に貢献します。

期間対応(きかんたいおう)」または「間接的対応(かんせつてきたいおう)」といいます。

固定資産のこのような性質から、時の経過に応じて一定のルールで売上利益の稼得に貢献する金額を仮定的に算定するという「減価償却」で減少額を計算します。

ただし土地などは時の経過に応じて使用分を算定するという減価償却の考えにそぐわないため、減価償却は行いません。

決算時の資産評価

主に決算時の資産計上を「評価(ひょうか)」といいます。

決算時の資産評価についても、「①換金価値があるから」「②売上利益の稼得に貢献するから」という2つの理由で多くの科目は説明できます。

【「①換金価値がある」を根拠とした資産の評価】

受取手形」「売掛金」「有価証券」「投資有価証券のうち、債券(1年超満期)」などが該当します。

これらの科目の特徴は、「キャッシュとほとんど同じ」ということです。

売買マーケットが存在する「有価証券」や「債券」はイメージできると思います。

また、取引先と契約締結した上でモノ・サービスを販売した対価である「受取手形」や「売掛金」も貸し倒れの可能性はありますがキャッシュになる可能性は高いといえます。

取得の目的も、「事業活動の成果として販売代金を回収する」や「資産運用のため(=有価証券の売買目的、債券の満期保有目的)」など、換金することに直結した目的になっています。

以上から現金に近い科目であるため、「換金価値がある」の考え方で資産評価します。

決算時の評価ですが、これまでに解説した資産の説明の通り、「将来現金として入金される金額」で評価します(前払費用は既に支払った対価に対応する、将来享受するサービスで評価します)。

有価証券や投資有価証券(売買目的の有価証券と満期保有目的の債券)であれば、前回に説明した通り、決算時の時価で評価します。

受取手形や売掛金は、貸し倒れの可能性があるので、その可能性を考慮した貸倒の見積額を債権金額(販売金額)から控除します。

この貸倒の見積額を貸倒引当金といいます。

【「②売上利益の稼得に貢献する」を根拠とした資産の評価】

「棚卸資産」「有形固定資産」「無形固定資産」が該当します。

【棚卸資産】

棚卸資産のうち製品は、販売してお金として回収されるまで時間がかかりますので、お金として回収できるかどうか分かりません。

すぐに現金化できるわけではないため、「キャッシュとほとんど同じ」とは言えません。

従って、「換金価値があるから」を根拠として決算時に資産評価を行うことは、ふさわしくありません。

例えば、1本作るのに4千円かかったズボンの在庫が10本あります。1本5千円で販売する予定とします。

しかし現時点では販売できたわけではないので必ず売れるかどうかは分かりません。

従って、決算時点で「換金価値があるから」を根拠として、「製品 5万円(5千円×10本)」と、販売額で計算して製品を評価するわけにはいきません。

お客に販売することができた瞬間、時価が5千円になり、製品勘定を4千円減少させ、売掛金や受取手形(レジで直接販売であれば現金預金)を5千円計上する、といったイメージです。

製品以外の棚卸資産は、直接販売することは目的としておらず、製品を作りだすために取得します。

従って、製品と同様に「換金価値があるから」といった根拠で決算時の時価で資産評価を行うにはふさわしくありません。

以上から、棚卸資産については決算時に時価で評価しません。

棚卸資産は原則として、取得原価で評価します。

【有形固定資産、無形固定資産】

有形固定資産、無形固定資産を取得する目的は、間接的に売上利益の稼得に貢献するためです。

例えば本社ビルを購入する目的は会社の事業に役立てるためです。売却することが目的ではありません。

従って「換金価値があるから」といった根拠で決算時の時価で資産計上を行うにはふさわしくありません。

有形固定資産や無形固定資産は取得原価に基づいて評価します。

売上利益の稼得に貢献するように有形固定資産、無形固定資産を使用するのであれば、売上利益の稼得に貢献した部分は資産から減少させて費用(=売上原価や販売費及び一般管理費)に計上していく必要があります。

しかし、有形固定資産や無形固定資産は間接的に売上利益の稼得に貢献する性質であるため、製品のように1つ1つで、どれだけ資産が減少したか(費用として計上するか)を把握できません。

そこで、これまでの説明の通り、減価償却によって費用計上し、同額を有形固定資産、無形固定資産から減少します。

以上から、有形固定資産や無形固定資産は決算時に、取得原価から減価償却の累計額を控除して評価します。

減損会計

棚卸資産や有形固定資産、無形固定資産の決算時の評価は、「原則として」以上の説明の通りです。

ただし、減損(げんそん)という考えに基づいて、追加して資産を減少(=費用計上)する場合があります。

例えば、先ほどのズボンの例で、ズボンが1本5千円ではなく、3千円でしか販売できなくなった、という場合にはどうなると思いますか?

結論から述べると、この場合には、決算時には1本3千円で評価しなければなりません。

会社側からすると不公平な処理にも考えられます。

しかし、企業会計原則という会計基準には「保守主義の原則(ほしゅしゅぎのげんそく)」という考え方が存在します。

保守主義の原則によれば、会社は予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないのです。

すなわち、1本3千円でしか販売できないとなったらば、将来の危険に備えて「1本4千円×10本=4万円」と取得原価で評価するのではなく、販売価格をもって「1本3千円×10本=3万円」を製品の決算時の評価額として貸借対照表上の表示額にすべき、ということです。

この場合の資産を減少させる会計処理を、「簿価の切り下げ」といいます。

同様に有形固定資産と無形固定資産でも、「減損処理(げんそんしょり)」という資産を減少させる会計処理があります。

減損処理するかどうか検討するための手続を「減損会計(げんそんかいけい)」といいます。

これまでの説明の通り、有形固定資産や無形固定資産は売上と期間対応であり1:1では対応しません。

建物など何十年も使用する場合があるため、減損会計では、将来の数十年分の売上から生じるキャッシュを合計したものと、有形固定資産や無形固定資産の取得購入額など会社が支出したキャッシュとを比較して検討する、という手続を行います(単純化して説明していますが、実際には詳細なルールが規定されています)。

まとめ

以上、固定資産を含めた資産計上と評価について、現在の会計制度(上場企業の会計基準)について、減損会計も含めて解説してきました。

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