資産計上と評価の考え方をまとめて解説(入門)
記事最終更新日:2023年12月20日
記事公開日:2012年4月24日
前回、「固定資産の換金価値について分かりやすく解説(入門)」では、固定資産の評価と換金価値について解説しました。
本記事では、固定資産以外の資産も含めて、資産計上と評価について、会計の考え方に焦点を当てて解説します。
資産計上・評価に関する2つの考え方
前回と前々回の2回に分けて、次の2つの視点から固定資産の資産計上・評価を解説しました。
<資産計上・評価の考え方>
- ①換金価値があるから:資産自体を売却することができるので、将来現金(キャッシュ)として入金される可能性が高い。
- ②使用価値があるから:売上・利益の稼得に貢献した結果、将来、入金されるであろうキャッシュの獲得に貢献している。
この2つの考え方は、固定資産に限らず、流動資産にも当てはめることができます。
資産計上と評価の一覧表
次の通り。
以下、資産の計上と評価について、2つの視点に当てはめながら解説します。
売掛金・受取手形
売掛金及び受取手形は、「①換金価値があるから」の考え方に基づいて、商品・製品の販売額で資産計上します。
なぜならば、売掛金や受取手形は将来、販売額でキャッシュを回収するからです。
ただし、得意先の倒産等によって貸し倒れの可能性があるため、決算時に「貸倒引当金」を見積り計上します。
つまり、貸借対照表には、売掛金と受取手形は販売額で資産に計上し、貸倒引当金は負債に計上します。
従って、売掛金や受取手形の評価額は、実質的には「販売額から貸倒引当金の額を控除した金額」になります。
有価証券(株式・債券)
株式や債券(社債・国債など)などの「有価証券」は、取得に要した支出額(取得原価)で資産に計上します。
<参考>取得原価主義
- ・取得原価に基づき資産を計上する考え方を「取得原価主義」といいます。
次に決算時の評価は、有価証券の保有目的によって考え方が異なります。
例えば、「売買目的で取得した有価証券」は、近い将来に売却する予定であるため、「①換金価値があるから」の考え方によって、決算時の時価で評価し、貸借対照表に表示します。
これに対して、「子会社株式」は、一般的には近い将来に売却しないため、時価で評価してもあまり意味がなく、従って、子会社株式は原則として取得原価で評価します。
<補足>子会社の評価
- 「子会社の評価」は、「連結会計」によって、連結財務諸表上に子会社の財政状態・経営成績等を反映させることで行います。
棚卸資産
棚卸資産も取得時には取得原価で貸借対照表に計上します。
棚卸資産は、販売して売上・利益を稼得するために保有します。従って、期末時点で時価評価し、評価益を計上すると、販売前に収益・利益が発生することになり、棚卸資産の保有目的と合致しません。
従って、期末時点では原則として「取得原価」のままとし、時価評価は行いません。
<補足>棚卸資産の評価損の計上
- ただし、期末時価が取得原価を下回る場合には、棚卸資産の収益性が低下していると考え、評価損を計上します。
そして、販売した時には「②使用価値があるから」の考え方に基づき、この時点で棚卸資産が売上・利益の稼得に貢献することから、販売した結果、使用価値が無くなった棚卸資産(つまり販売した棚卸資産)に対応する金額を資産から減少させるとともに、売上の成果としてキャッシュや「売掛金・受取手形」を計上します。
有形固定資産・無形固定資産
棚卸資産と同様に、取得時には取得原価で資産計上します。
有形固定資産・無形固定資産は、長期的に保有して、会社の事業のために使用します。すなわち棚卸資産と同じく、「②使用価値があるから」の考え方に基づき資産計上・評価します。
そこで期末日には、時価評価は行わず、会社の事業に使用した部分だけ資産を減少させ、その期の費用にします。
ただし、棚卸資産と異なり、使用した部分を直接的には把握できないことから、「減価償却」という一定の仮定に基づいて計算した額を「使用した部分(売上・利益の稼得に貢献した部分)」として費用計上します。
<補足>費用収益対応の原則
- 棚卸資産や有形固定資産・無形固定資産のように、売上に対応して費用を計上する会計上の考え方を「費用収益対応の原則」といいます。
<補足>固定資産の減損会計
- 期末時に固定資産の使用価値が目減りしていると判断された場合には、減価償却費以外の費用として「減損損失」を費用計上し、同額を有形固定資産・無形固定資産の計上金額から減少させます。この会計手続を「固定資産の減損会計」といいます。
まとめ
以上、資産計上と評価について、2つの考え方に焦点を当てて解説しました。
資産の計上や評価(同時に費用の計上)に関する会計基準の背景には、「①換金価値があるから」「②使用価値があるから」の視点による考え方が存在します。会計学を学ぶ際にも言葉を替えて登場する重要な考え方といえます。